あまりにショックすぎて書きました。追記から式姫。
いろいろのことはまたまとめられたらいいなと思います。草子終了を前提に閻魔さんと陰陽師くんがしゃべっています。いろいろ捏造もしてますが最後だからまあ。閻魔さんがしゃべって、陰陽師くんが地の文で返す感じなのであんまり小説らしさはないです。漫画描けたらなあって思います。
アムリタ
「ご主人様、私地獄に帰るわ」
さみしくなるな。
「うっそー!ぐーたらしかしてなかっただろとか言われると思ってたのに」
いや、最近みんな帰るからさ。邸どうするかなあ。
「そういや伊邪那岐様のリフォームと安長姫のおかげでこの邸すごく広いし居心地いいわよね」
なんか、まあ仕方ないけどみんな帰るんだなーと思うとまたさくらと二人になっちゃうな。
「いろいろあったけど、京は平和になったものね」
まあそうだな。そういえばこないだの月見の恰好、似合ってたぞ。
「ありがと。でも仕事入っちゃったからお団子食べそびれたのよねー」
月を見ろ、月を。それも今年で終わりだったんだな。
「今年で終わりといえば、ねえ、ご主人様って何人いるの?」
うわー核心ついてくるなあ、その話今するか?
「今しかできないから、かな。司録の書類ざっと見ただけだけど」
さすがは閻魔大王、じゃあ分かっているんだな。
「ある時は京。ある時は庭師。ある時は…。全部役職は違うけど、全部ご主人様なんでしょ?」
うーん、厳密に言うと違うけど、まあそんな感じ。
「あらゆる時代に介入して、あらゆる時代の妖怪やあやかしと戦って、あらゆる神を召喚して、使役した伝説にして謎の陰陽師、それがあなた」
伝説っていうけど、邸は魔改造されるし、壊されるし、毒か薬か不明なもの飲まされるし、数えだしたらきりがないくらいダメダメだけどな。
「あなたは変若の水を飲んでしまったのね。人ではない」
……そーだな。忘れてたよ。八百比丘尼が来た時に気付きそうなもんなのに、やっぱり抜けてるな。
「それって裁きに結構影響するけど、ご主人様って死ぬのかしら?」
どうだろう。自分でも自分が何をして、どこにいて、どうやって式姫たちを呼んでいたのかもう昔のこと過ぎて忘れたよ。自分が死ねるかどうかも含めてさ。
「でもその生活も終わる」
そうだな。
「ねえ、予言してあげる。京の邸にさくらと二人になっちゃったら、ご主人様はまた別の時空に行くよ、きっと」
そんな気はするなー。閻魔と夜摩天のところ行くのは当分先になりそうだ。
「ご主人様の司録の書類さ、まだちゃんと見てないっていうか、ここから地獄に帰ったら読もうと思ってて。だからこれはまだちゃんと確認してないから言っちゃうね」
なに?
「さくらを作ったのって、ご主人様でしょ?」
……それかあ。
「さくらって、式姫だけど召喚の儀はなくて、しかもご主人様がいろんな時空に行くときずっと一緒にいる。ここまでは司録の記録を読んだ。それで考えたんだけど、さくらって、天探女よりも複雑。一人の人間を生みだすように、かといって永遠に死なないように作られているのよね」
バレたか。
「あなたは変若水を飲んで永遠の命を得たから、永遠にそばにいる式姫を作った。それがさくらね。伊邪那岐様が奇妙に思うのも分かるわ」
あー、そこまでバレてるかー。そう、さくらは変若水の残りで作った式姫だよ。
「じゃあ、そこからいろいろな世界の神や付喪神、霊獣やら妖獣やらをあなたは呼び出すすべを考えた?」
そうなるな。
「天才陰陽師は結局何がしたかったの」
それは地獄に行ったら改めて話すよ。
「えーでも、そうやって神や霊獣を使役するのは罪になるわよ。っていうかさくら作成自体が罪よ、ツミ」
ノーカンで頼みたいなー、京救ったしトントンで。
「ノーカンとかどこで覚えた言葉よ。今の言葉じゃないじゃない」
笑うなよ。平成って年号に行った時だったかな。
「やっぱいろいろ行ってるじゃない。じゃあさ、冥途の土産にあそこの店のせんべい買ってきてよ、いつものやつ。ぬれせんは濡女子帰っちゃったからまあいいや。とにかくそしたらノーカンにしてあげる」
分かった。京を離れる前に買い占めとくよ。
「うわっ、太っ腹っていうかご主人様が私のわがまま聞いてくれるとかすごく新鮮」
酷い言いざまだ!というよりもお前がずっとぐーたらしてたからだろ。
「ま、地獄に帰ったら今度はまじめに働くよ。この邸では戦いとかけっこうきびきび出来てたし、地獄でもちゃんとやれって夜摩天がうるさいからさ」
そうか。じゃあ地獄で真面目に王様やってる閻魔に会うのを楽しみにしてるよ。
「いつになるんだか。ま、私はずっとそこにいるから、いつだっていいよ。こう見えて私はご主人様と同じくらい長生きだし、死んだりは絶対しないから」
一回死んで閻魔になったんだもんな。
「ご名答。だから待つのは得意よ。地獄でご主人様を待ってるわ」
よろしく。いつになるかは分からないけど、待っててくれ。
いやー閻魔も帰ると邸がもう伽藍洞だなー。こうなるの分かってたら改築しなきゃよかった。ま、こっちにやる気がなくても勝手にやっちゃうのがいたから仕方ないか。
「ねえ、ご主人様。あなたがいろんな所に行って、さくらは死ななくて、もちろんあなたも死ななくて、そんな永い日々を過ごすのが怖くなったら、私を呼んでもいいわよ」
遠慮しとく。ぐーたらするだけだろうし。
「ひっどい言い様ね。ま、いいや。夜摩天との約束半日もすっぽかしちゃったからそろそろ行くわ」
相変わらずだなあ。夜摩天に迷惑かけるなよ。
「はいはい」
はいは一回!
「ほんっと、最後までご主人様は真面目ね」
じゃあ、閻魔も元気でな。仕事はマジメにしろよ。そのうち行くから、待っててくれ。
「別れの挨拶なんて柄じゃないんだけど」
まあこういう時だし。六年もいてくれて、ありがとな。
「湿っぽいの嫌いだから、私からは一つだけにしとくわ」
「じゃあね 」
あ、今までで初めて名前呼ばれた。
最高の別れの挨拶だな、と心の中でつぶやいて、振り返らずに邸を後にする彼女に、次に会うのはいつだろうと、その広すぎる邸の中でぼんやり考えていた。
「せんべい買いに行かないとなあ」
明日にはここからさくらと一緒に消えるんだからさ。