今しか書けないやつ

追記にアンデラから今しか書けないなあと思って書いたシェンの一人称独白です。
統一言語ってそれはひどい。というそんなシェンとムイちゃんの話。
ジャンプ本誌最新号のネタバレを含みます(昨日発売のやつ)。それから単行本2巻のおまけというかキャラ設定からも少しネタバレがありますので、気になる方はお気を付けください。
ネタバレと直接関係はないんですけど、今2巻を買うと本誌2冊分くらいで最新話に追いつけますよ!!(ダイマ)
これについての詳しい感想は一つ前の今週のアンデラ感想の記事で触れています。
シェンがあまりにも楽しくなさそうだったので書いたのですが、何がどうなっているのか分からないから今しか書けないなと思って、部屋の模様替えをしていたら、思いがけず渾沌の話の本(神話の本ですね)すみません、一緒にできた山海経と勘違いしました。こっちは荘子ですね。とにかく渾沌の話が出てきたので「あああああ」となって書きました。昔のひとはいいこと言ったぜ(バトー)(それは孔子、これは荘子)。おもいっきり勢いだけなので短いです。

追記:ピクシブさんにも上げておきました。鉄は熱いうちに打て、肉は熱いうちに食えって言ってそうで言ってないんだよね、政宗先輩(放関)。肉にはむしろ愛ちゃんがいい思い出ない。

そんな話を追記に

 

If

この世界は、もともとのカオスにカミサマがルールを足して足して足して作り上げた美しい世界だと、誰かが言っていた。

「は、嘘でしょ」

カオス、混沌、渾沌。

「渾沌七竅に死す」

そうだ。カオスは、ルールを足されて死んだ。
少なくとも、ボクの故郷じゃそう言われていた。

「シェン様?何か?」
「なんでもないよ?」

ボクが中国語で言った故事を、だけれどボクのムイちゃんは理解できなかった。だけれど、例えばこれを英語に直して説明しようか、なんてボクにはとても思えなかった。

そうだ。渾沌に七孔を開けることがどれだけ愚かなことか、昔の顕学が説いたことを、ボクとムイちゃんはバックグラウンドとして知っている。知っていた。知っているはずだった。

例えば風子ちゃんがこれを知らなくたってボクは驚かない。日本にも似たようなことがあるかもしれないし、ないかもしれないし、それは多分知っていても知らなくてもいいことなんだと思う。

「嘘だ、こんなの」

不真実。
自らが司る否定、真実の否定を、だけれどボクはボクたちが手に入れたそれに対して思う。

統一言語?
馬鹿にしているのか?

バベルの塔が天に、神に近づきすぎたから、神はこれ以上ヒトが団結できないように、言葉を乱した。それ以前のヒトはみんな同じ言葉を使っていた。だから、統一言語の獲得は原初への回帰、ルールの回避だと黙示録は言いたいのだろう。

そんなこと、あるはずない。そんなの嘘に決まってる。

これは獲得じゃない。喪失だ。

もしカミサマがいるのなら、それは一つの国の一つの言語で、あのバベルの塔の時のように、また言葉を乱した。

世界はむしろ、乱雑になった。
世界にはむしろ、孔が開いた。

「シェン様?大丈夫ですか?お疲れなのでは……」

ぼんやりそんなことを考えていたボクに、彼女はとても流暢な「英語」でそう言った。

「だいじょーぶ」

ボクもやっぱり英語でそう言っていつものように笑ったら、ムイちゃんは安心したように笑ってくれた。

「何か冷たいものを取ってきますね」
「うん、ありがとう」

安心した彼女がドリンクか何かを取りに行ったそこで、ボクは思い切り歯を食いしばった。

「嘘だ、こんなの」

否定者じゃない彼女は、突然に自らのバックグラウンドを、国を、言語を奪われて、訳の分からない「何か」に新しい言葉を与えられた、なんてことを知らない。
それがはじめからそうだったように、それが自然のことのように、彼女の世界は乱された。

「カオス」

小さくつぶやく。

カオス、混沌、渾沌七孔。

「世界が乱れていて、それの何が悪い」

なぜそれを憐れむ?
なぜ理路整然としていないことを憐れんで、混沌を正して、渾沌を殺した?

そんな神、ボクはいらない。

ボクたちから、帰るべき故郷を奪った神なんて、ボクはいらない。
彼女に返すべき、帰るべき場所を奪った神なんて、世界なんて。

そんなもの、真実じゃない。
ボクはそれを否定する。

「お待たせしました、シェン様。それから、今晩は何を召し上がりますか?」
「ありがと、ムイちゃん。今日はこの後仕事もないし、久しぶりに一緒に小籠包でも作ろうか」
「はい!」

ボクの提案に、少女は笑った。
せめてこの笑顔は、真実であればいいとボクの狭隘な思考が言った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です