酸化カルシウム(斎沖)

斎藤一✕沖田総司(fgo)(現パロ)

 

酸化カルシウム

「なにやってんだか」

ガランとした部屋には、特段目だったものも残ってはいなかった。
沖田ちゃんと最後に会った日に着ていたスーツくらい、かなぁと思ってから、彼女に最後に会ったのは本当に僕なのか? とか思う。

「お姉さんとか、いないっけ?」

……先日、高校、大学と同じだった知り合いが死んだ。
死因は知らないが、病院で見た死に顔は綺麗なもんで現実感が未だにない。
剣道やってて仲良くなって、社会人になってからもたまに食事したり酒のんだり、という仲だったが、なんというか。

「……家族、いないの?」

今更だが、奨学生なのは知っていたが、なぜ死んだ時の連絡先が僕なのか、法定相続とかそこまでは流石に見てないけど、なんかこう、病院から火葬場までの一連の料金? 代金? は準備してるし、葬式はやらない、知らせる相手は『斎藤一のみ』。

火葬の手続きで会った弁護士さんに言われたが

『ここまで抜かりなく、法の中身を完璧に理解した遺書の作成依頼も珍しいので驚きました』
『た、大変でしたね……』

それ以外に言葉が出てこなかったが、その人は至極真面目な顔で言う。

『故人……沖田さんの思いを引き継いで差し上げてください』
『命懸けのコクハクは似合わないっすね、僕ヘラヘラしてるし』

場を和ませようと言ってみたが、その人はあくまでも真剣だった。

「そういうワケなんだけども」

困ったなー、と思いながら彼女の部屋でぼんやり考える。もう部屋の主が帰って来ない部屋で。

「マジで沖田ちゃんの人生懸けた告白だったら、はじめちゃんこれから一生独り身じゃん」

ポツンと言ったら、彼女の天真爛漫な声が「その通りです!」と言っている気がした。

「ほんっとに、困ったやつだね」

そうだけ言って、陶器の骨壷からちょうど良さそうな骨を一つ取り出してみる。火葬場まで付き合って持って帰ったんだから、一個くらいいいだろ。
口に放り込んでみたが、なんの味もしない。

「まあ、そりゃカルシウムの味とか知らねぇし」

沖田の笑う声がした。

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ベタ打ちです、すみません。酸化カルシウム、石灰のこと。

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