服部君の話。
FGO川中島から服部君の話です。服部君、いとせん、氏真様がカルデアにいる時空ですね。服部君と永倉さんが不毛な会話をしています。
なんだかんだ服部君の話を書いたことがなかったので書きました。
伊東先生のことはいっぱい考えたのですが、服部君のことも一緒に考えていても形にしていなかったので書いてみました。なんだろうね、いろんな方向性でこの人もすごいよなあと思います。
今川陣営のことは少しずつ書いていけたらと思うけれどそもそも未だに伊東先生のことを理解できていないので、咀嚼できるように頑張りたいです。
真面目な話してるように見えるけどもこの後、氏真様と伊東先生とマスター君とお茶する予定だったからくだらないことに構っている暇がなかっただけだと思います(台無しだよ)。
秘密
「よう、服部」
「困った方ですね」
突きつけた刀に、しかし服部は動揺も何もしていなかった。この男のそういうところを俺は買っていたし、そういう男だから沖田も懐いたのだろうし、そういうやつだから、自分の信義を曲げずに伊東に着くのだろうと思うと、羨ましくもあり、そうして悔しくもあった。
例えば、自らが寝ているうちに芹沢の旦那を斬られても近藤さんに着いていくしかなかった俺は、あの日に土方に問えば良かったのだ。或いはそれこそ近藤さんその人に問えば良かったのだ。なぜ芹沢さんを斬ったのか、と。
それが結果としてそうするしかなかったとしても、その理由を確かにしておけば良かったのに、臆病風に吹かれて聞けなかったのは誰かと言えば、確かに俺だろう。
「カルデアでは抜身の刀を振り回していいことになっているのですか? このように無秩序ではあまりにもマスター君が可哀想ですよ」
そう言って帷子の小さな隙間、首筋のギリギリに差し入れた刀の切っ先にも動じずに溜息をついた服部は、どこでもそれを脱ごうとしなかった。常在戦場というのとも違う。ただ単に臆病なのでもない。単に、それがこの男の生き方だと知っていた。
「ちょっとやろうぜ。軽く斬り合いだけだ。運動みてえなもんだろ」
「魔力リソース」
短くそう返されて、引き下がるのが当たり前だろうと思い、それからその冷静さにふと思い出すのは山南先生を沖田が斬った時だった。斎藤の叫び声、蒼白の藤堂、当たり前の顔で腹を切った山南先生。あの時も結局俺は、何故と誰にも問わなかった。
「新選組最強とやらを決めようぜ? 甲斐じゃまた決めかねた。折角おまえが来たんだ」
「馬鹿なことを言わないでください。それ以前にここには全盛期の沖田君がいるでしょう」
そう言ってもう一度溜息をついて、服部は帷子を器用に使って手が傷つかぬように俺の刀を退けると、仕種で仕舞う様に示した。逸っていたのだろう、とその愛刀を鞘に納めれば、彼はやはり溜息をつく。
「どうしたのですか。私もまだカルデアに慣れていないのでなんだかんだありますし、なにより伊東先生が」
「ああ、それだ」
「それ?」
不思議そうに言った服部は、ではなぜ伊東に、或いは自らの理想に、信義に殉じることが出来たのだろうと羨ましかったのかもしれない、と。
「信義に二種有り。秘密を守ると、正直を守ると也」
どちらだ、と問う様に言った俺に、彼は真っ直ぐに目を見返して言った。
「秘密無きは真無し」
「……」
答えは至って簡潔だった。
「そんなに大仰なものではありません。信義も秘密も正直もない。ただ単に、やりたいようにやっただけですから。あの時代、あの頃、誰も彼もそんなものだったでしょう。あなたもです。みんながみんな、そうだっただけですよ」
そう言って服部は懐かし気に目を細める。
「誰も彼も、何もかもが上手くいかなかっただけです」
やり直したいとも思わない、と彼は続けて横を通り過ぎた。
「難儀なものだな」
誰も彼も。