土用の丑の日とウサギ(永斎🐰)

土用の丑の日でしたね🐰🐰🐰!
ということで今更ですが永斎です。何がどう今更なのか、という訳ですが、今年は二の丑がありますからまだ今更じゃないんだなこれが。土用の丑の日には「う」のつく食べ物を食べればいいんだなこれが、という内容です。
永斎ですが、いつものウサギ斎藤さんです。
カルデア時空ですが、お手軽霊基異常で耳と尻尾と精神がウサギになってしまった斎藤さんですが、まだ治ってなかったんですね、良いことです(🐰<よくない!)

保護者の永倉さんに飼育……もとい、保護されているウサ斎の話はたくさんありますがまだサイトに入れていなくてすみません……本には入っているのですが……「雨の日」といううさぎ尽くしの驚異の本です🐰🐰🐰
それはそれとして、ウサギ斎の永斎も早く再録したいですが、とりあえず土用の丑の日のウサギ鍋の話です。なんの話なんだろう。でもここは日記なので、ウサギ鍋前の前半パートが中心です。カルデア全体に🐰認識されてる🐰可愛いね。

 

「土用の丑の日、ねぇ……」

 重箱を覗き込むようにして、それから藤丸とマシュを見たメディアは、その重箱に収まっている鰻を見た。今日は特別に重箱なのはどうしたことか、経費がかさみそうだ、と思ったが経費も何もないだろう、と思い直して調理場を一瞥する。

「土用の丑の日はもともと『う』のつく食べ物を食べていたのだそうです。瓜だったり、うどんだったりですね。それを江戸時代に平賀源内という方が鰻と広めたのだとか!」
「詳しいな、マシュ」

 そう言って藤丸とマシュの前にも鰻の乗った重箱を置いたエミヤを見て、メディアは彼を振り返る。

「ねえアーチャー、あなたも元々は日本人だからこういう風習には慣れているのでしょう? マスターもですけれど。でも私、最近にもこの料理を食べているのを……というか、この頃これ流行っていないかしら? 今日に限らず、ということですけどね」

 そう言いながらもパクパクと食べ始めれば、成程夏に食べるにはいい魚……魚だろうか? と思いながらも濃い目に味付けされたそれと白米を食べながらメディアが問いかければ、エミヤはふと考えるようにした。

「そうか? ……ああ、あの新選組の」
「え?」
「すみませんねぇ、うちの馬鹿がよく食べてるもんで。巻き込まれて食べる人が増えちゃったみたいで」
「あら、アーツ周回疲労困憊万年隈取セイバーじゃない。ごきげんよう」
「メディアさんって見かけによらずサラサラッとすごい言葉が出てくるタイプですよね……」

 そう言われて苦笑しながら、それでもやはり手に持っているトレーに乗っているのは渦中の鰻重という斎藤一が向かいに座れば、メディアは少しだけ笑って、それから何か気が付いたように眉をひそめて斎藤とエミヤを交互に見た。

「あのね、こんなことは言いたくないのですけれど」
「なんだね」
「彼の飼い主がこの鰻好きだというのはよく考えれば聞いたことがあるけれどもね、ウサギに鰻ってどうなのかしら? 身体に悪いと思うわ。取り上げておいた方がいいと思うの。そうでなくともかなり心配性じゃない、あのなんていったかしら、ナガクラシンパチ、でしたっけ?」

 そうメディアが言えば、斎藤……まだウサギ化が治っていない斎藤は声にならない悲鳴というよりは、ミッ! とか、メゥッ!? のような悲鳴を上げたが、それにエミヤは「そのことか」と頷いた。

「いや、今日は許可が出ている。保護者の永倉君から今日は土用の丑の日だし食べさせてやってくれとのことだった。珍しいというか、普段なら一人でコロッケそばを食べに来るのも怒るのだがね」
「あら、そうなの。良かったわね」
「その幼児を見る目を止めてもらってもいいですかね……」

 恥ずかし気に言った斎藤だったが、ぴくぴくと動く耳と尻尾はどうしてもウサギでしかないし、成人男性なりの上背があってもそのウサギのそれが付いていて、そうしてほとんど過保護なまでに永倉に囲われているのがメディアにまで知れ渡っているという現実に、彼は顔を赤くしてぷるぷる震えながらも必死に言う。

「マスターちゃん、マシュちゃん、今更だけど相席オッケーかな?」
「もちろん、いいよ!」
「もちろんです! 今年は二の丑までありましたから、鰻食べ放題できっと永倉さんも喜んでいらっしゃるかと思いますが、永倉さんは?」

 そう問いかけたが斎藤は首をかしげた。それに応じたのはエミヤだった。

「彼なら先程、鰻重を食べてサポートに出て行ったよ。ああ、そういえば夏の土用は薬草の効力が強くなるとも言われる地域もあるそうだね」
「ああ、副長んとこの薬も確か土用の丑の日に作るとかなんとか……」
「石田散薬ですね! 夏の土用は薬効が高まると民間伝承にありますから、それを踏襲したものでしょうか?」
「さてねぇ……あの人聞いても教えてくれないだろうし」

 マシュのそれにそう言ってウサギの斎藤が鰻重に箸をつければ、興味深げにメディアは言う。

「薬効が……そう。この季節にねぇ。日本は夏ですものね。草が伸びるといえばそうかもしれないわ」
「メディアさん、何を考えているんです?」
「嫌だわマスター、そんな顔しないでよ。私はおば様とは違うんですから」
「違う、とは?」
「ですからね、私はボーダーの中に薬草園を作ったりするほど非常識じゃありません。ただ単に、やっぱりそういうことには興味があるの。昔の魔術というのは薬草なんかもやっぱりね」
「いや待て待て待て、キャスター!」
「何よ、うるさいわね」
「メディアさん……キルケーさんは薬草園作ってるの……?」
「あら? マスター知らなかったの? ちょっとボーダーの一画を空間的に歪ませて、こう。私だって止めはしたのよ? でもまあ魔力リソース的にもおば様の自前のものですし、いいかなと」

 そう言ってほうじ茶を啜ったメディアに、藤丸とマシュは鰻重をかっ込んで立ち上がった。

「エミヤさん、ご馳走様でした!」
「ご馳走様でした! マシュ、急いでダ・ヴィンチちゃんとキャプテンのところに報告に!」
「はい! 所長とシオンさんはいらっしゃるでしょうか!?」

 そう言ってバタバタと駆けていく二人を、エミヤと斎藤は呆然と見送ったが、何があったのか、という風情のメディアは残りの鰻に箸をつける。

「ああ、そうね。これ案外ソース……タレっていうんでしたっけ? それの味も大事な気がするわ」
「いやいやいや!? このクソ狭いボーダーで家庭菜園してたんですか、アンタら!?」
「え? 私じゃないわ」
「常識を身に着けてくれ……頼むから」
「常識? 爆発したりするようなものでもないし、そういう輩と一緒にしないでちょうだい」
「いや、爆発物作る連中も駄目なんですってば! いますけどもね! それはそれ、これはこれ! この狭い、というか乗り物の中に菜園作らんでください!」
「菜園じゃなくて薬草園よ!」
「同じだ、馬鹿者!」

 そうエミヤが叫んでいたところに、食堂に入って来る白い人影があった。

「よーう、なんかあったのか、弓の兄ちゃん」
「あ、新八!」

 今までウサギになる前の常識的な発言をしていたと思っていた斎藤がぴょんと食べかけの鰻のままでそのサポートから帰ってきた永倉に寄って行く。それにエミヤはメディアの爆弾発言も何もかも忘れたようだ、と思い、保護者だし、とか三歩歩くとは鶏では? とかいろいろ考えつつもとりあえず見守っていれば、その寄ってきたウサギを撫でつつ席に戻した永倉に言った。

「サポートお疲れ様。ちょうどマスターとマシュが所用で行ってしまってね。もう一杯くらいうな重でも食べるかい?」
「あら、ナガクラシンパチじゃないの。ウサギの剣士に首輪でもつけておきなさいな。その子、ウサギの割にキャンキャン鳴いて……」
「キャスター……君は少し自分のしたことというか、君の叔母上含めて考え直してくれ……」

 その会話に永倉は首を傾げたが、すり寄って来る斎藤の耳を撫でつつ、テーブルに残っている鰻を示した。

「ほら、残さず食え。駄目だろうが」
「んみ? ん、ちゃんと食べる」
「いい子だ」

 そう言ってパクパクと美味しそうに鰻重を食べ始めた斎藤に目を細めた永倉は、エミヤを振り返って言った。

「あ、わりぃな。行く前に早めの飯で鰻もらったからよ、今日は流石にやめとくわ。俺は土用の丑の日も何も関係なく鰻食ってるからなあ」
「君の好物だそうだからね」
「そういうこった。ああ、そういや、土用ってのは各季節にあるじゃねえか」
「そうなの?」

 美味しそうに、平和そうにもぐもぐと鰻を頬張るウサギの横でそれを見守りながら口にした永倉に、もう食べ終わっていたメディアが興味を示せば、エミヤが答えた。

「ああ、それか。土用というのは季節の変わり目のことでね。夏に「う」の付くものを食べると先程マシュが言っていたが、春の土用は「い」、秋は「た」、冬は「ひ」のつくもの、と古来から言われていた、というのが日本にはあるな」
「季節の変わり目ねぇ。風邪とか引きやすくなるからかしらね」

 至極どこにでもいそうな主婦的な感性で言ったメディアに永倉も頷いた。

「そうかもな。そんでまあ、俺も好物は鰻なんだが、夏の土用は頓に夏バテやら夏風邪やらがあるからなあ。精の付くもん食わなきゃならん」
「それで鰻が流行ったというわけ?」
「いや、そこまでは知らんけども。それもあって、なんだが」
「はい?」

 問いかけたメディアに、永倉はもう一度、まだ必死に、しかし美味しそうに鰻を食べている自分のウサギを見た。

「今日はもう鰻食ったし、だがもう少し「う」のつくもんを食っておきたいもんだとも思う。幸い新鮮なウサギがここにあるから鍋にでもするかと思ってるとこだ」
「……マスターとマシュがいなくて良かったわぁ……教育に悪いもの」
「そうか?」
「んみ?」

 軽く耳を引っ張られて、そろそろ食べ終わる鰻重から顔を上げた斎藤と目を合わせた永倉を見ながら、メディアは彼に言った。

「でもウサギって小骨が多いと聞くし、この季節は脂乗りも悪いでしょう? さっき鰻もソースが大切と言ったけれども、ほら、調理法がね」
「まあ、そこは丁寧に調理するとするかな。幸い味付けには困ってない」
「……悪いが部屋でやってくれないか」

 渋面のエミヤに言われて永倉は声を上げて笑った。困った男だ、と彼が言ったところで、鰻を食べ終わったらしいウサギこと斎藤を永倉は軽々と抱き上げる。

「さて、兎鍋でも作るか」
「!?!?」
「何味がいいかね。どうだ、斎藤」
「わ、わかんな、い……」

 消え入りそうな声で言った抱えあげられているウサギにメディアは遠い目をした。

「あのウサギ、自分の末路が分かっているのね」

「土用の丑の日とウサギ(永斎🐰)」への2件のフィードバック

  1. 緋雨さんの!土用の丑の日永斎🐰だー!!
    8/1、はじぱちの日に素敵な永斎ありがとうございます……赤ちゃんウサギな斎の永斎が大好きです!食う気満々じゃないですか永さん!たんとお食べ……

    1. ありがとうございます🐰
      土用の丑の日に遅れましたが今年は二の丑がありますから!図らずもはじぱちの日でしたね、コメント頂いて気づきました🐰!
      好物の鰻で満腹にさせて、好物のウサギを食べる気満々ですね、美味しく調理して夏ですが鍋で柔らかく食べてもらいたいものです🐰🐰🐰

      久々の永斎ウサ斎……!ありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です