今川氏真様と伊東甲子太郎先生がぐだぐだ話しているだけです。短い。
氏真様の話を書いたことがなかったので改めて書きました。「七星神威」を何度も聞いているのですがPVもそうだけども、アレって、というか肆、伍、陸と邪馬台国からの全部の楽曲がそうなんですが、全部の陣営にとっての歌なんだよなあと思うと泣きそうになるよねっていう。
あの序盤の「愚かしい」で氏真様のカットが入るところが最高に好きなのでそんな話。
あと個人的にあの川中島24時で「ベストオブおまえが言うな」だったのが「偉大な父を持つと苦労するな」と氏真様に言った信玄入道なんですが、オイコラはるのっぶ、おめー氏真サンのマジの叔父さんだよな!? その人おまえさんのお姉さんの子供だよなぁ!? あと「偉大な父を持つと苦労する」ってそれ勝頼君の前で言ってみろよ、なあ、言えるか!? 言ってみろよ!! ってわりと真面目に大笑いしたのでその話もちらっと入っています(笑うところじゃない)。
米沢上杉博物館所蔵の「上杉文書」には信玄パパが多方面にやらかしまくったおかげでいつも死にそうなくらい周りに頭を下げ続けている勝頼君の書状も、今川サンや北条サンにとにかく武田サンもそういうつもりじゃないと思うからっていう書状もあるよ。つらぁ……。
一炊の夢
夢を見ていたのかもしれない。
「お疲れですかー」
甲子太郎の気の抜けた声に、ぼんやりと思う。夢なのかもしれない、と。
「あれ? ほんとにお疲れですか? なんか食べます? これとか」
そう、軽い調子で言った彼は、卓上の今川焼を示す。今川焼……後世の菓子。
夢なのかもしれない。そう思った。
夢を見ていたのかもしれない。夢を見ているのかもしれない。夢を。
「夢を見ていたのかもしれない」
「……」
言葉に甲子太郎は首をかしげて笑った。その何もかもを見通した様な、それでいて柔らかな笑みが好ましく、そうしてどうしようもなく優しいそれが怖かった。
「可笑しな話だ。父の名を騙り、自ら裏切った謙信公を陥れんとし、叔父でもある信玄入道を弑さんとしている、などというのは、あの頃と何も変わらぬ」
そうだ、父の名を騙る以外には、何も変わらない。
謙信公に、上杉に今川は裏切られた。
信玄入道に、武田に今川は見捨てられた。
そうして、全てを失った。
「今川を滅ぼした」
「……そうかもしれませんね」
「だが、それの何が悪い」
なんて、愚かしい。そう思った。戦の声を聴くたびに、そう思った。
軍略を、同盟を、主君を、妻を、縁者を、臣を――民を。
目に、耳にするたびに思った。
「すべてが愚かしい」
「なぜ」
短く甲子太郎に問われて、瞬きもせずに答えることが出来たのは、まだ何かが残っていたのだろうか。
「国のためにあれと生まれた。そう望まれ、育てられた。父に、臣に、主君に、民に。皆が『今川さま』と言うがなぜかは分かっていた。それは頼むということだ。背負うためにあった。それを後悔などせぬ。そのために生まれたのだから。そのためならばなんでもしよう。どんな誹りを受けようと、そのようなものはすべて愚かしい」
甲子太郎は冷たく、そうでありながらどこか悲し気にその菓子を食べた。そうして目を閉じる。
「だから謙信公を裏切ろうとも、信玄入道に見捨てられようとも、武田に国土の全てを奪われようとも、恥を持っても生き延びた。それはいつか」
言葉は続かなかった。いつか、今川を頼むと、今川があればと思った。それが叶わなかったとしても、それでも、ただ、生きた。
「そうであれば、今が夢のように思えるのかもしれない」
「そうですか?」
「ああ。おまえたちがいる。今川をやり直せるかもしれない。もしも仮にどうにもならずとも、おまえがいる。そのあとに――」
「その話はまあ今はまだいいでしょうっていうか、そうならないように僕らがいる訳ですからね」
笑って言った後に、甲子太郎はふと目を細める。
「氏真様は今川の皆さんを愛しておられたんですね」
微笑んだそれに応えることは決まっていた。
「当然だ。もちろん、おまえたちもだ」
甲子太郎は笑った。その笑顔が今はただ嬉しかった。
……夢であっても、構わないのだから。