🐰誘拐編(永斎🐰)

永斎🐰です。前から書こう書こうと思っていて書いたらなんかちょっとだけシリアスになったWコヤンスカヤさんによる誘拐事件です。……ちょっとシリアスとか言ってますけども、全編ギャグなのでご安心ください。
あとちゃんと永斎です!エロじゃないのでここに置いておきますね。

忘れがちですけども、うちの永斎って前世から体の関係だけはあったけど何だかんだあって別れているし、一回は甲斐で愛した相手に選ばれなかった男が永倉新八なので、いくら明治に再会してもそれは変わらない事実として供養塔などで悔しいというか悲しいというか寂しい思いばっかりしているため、我武新としては今度こそ絶対に逃がさない、というのが強いです。

なんかウサギシリーズは独立した体を装っていますが、「亡羊」や「首を絞めて息を止めて」と根幹の設定は同じなんですよこれ、なにこれコワイ。

もちろん斎藤さんは知る由もないのではなくて「逃げたのは僕の方」と思っているからこの認識の齟齬で新選組メンバーから徹底的にからかわれてほしいなァァァァ!

 

ウサギ保護プログラム

「……あからさまだ」

 僕は廊下に出て一言呟いていた。流石に、流石に僕はそこまで馬鹿じゃない。馬鹿だと思われているとして、それを仕掛けたのはたぶんマスターちゃんやダ・ヴィンチちゃんだと思うし、そうだとしてもそこまで馬鹿じゃない。

「だって、なんで部屋から出て曲がり角一つで干し草ボールが落ちてるワケ?」

 おかしいだろ、どう考えても。いくらなんでもこれは罠だろ。いくらなんでも、いくら耳と尻尾がウサギになっててもこれは分かる。分かるからこそ、それでちょっと触った時点で『今晩は兎鍋だ!』という恐ろしい声が聞こえるようだ。
 こんなことをカルデア内でやっていること自体がおかしいとどうして気が付かないんだ……。いや、半獣化バグ自体がおかしいと言われればそうかもしれないのだけども、兎に角ネモさんと新所長さんにこんなバカげたことにリソース割いてますよって報告して、それから副長と山南さんにも言っておこう。なんか沖田ちゃんに言うと思いっきりからかわれそうだし……。

「僕ってそんなに馬鹿に見える……?」
「はい」
「ミッ!?」
「そもそも飼い主のナガクラ様がいらっしゃらないうちに散歩を繰り返す時点で相当なお馬鹿さんに見えております」
「干し草ボールの罠に掛かる以前の問題です。コロッケ蕎麦が食べたかったのでしょう?」

 な、な、なに!?

「コヤンスカヤさん!?」
「「はい」」

 揃った二人の声に反応する前に、光と闇のウサギとキツネに僕は気が付いたら捕まっていた。

「あ、の……」
「とりあえず毛並みを整えましょうね」

 そう言ってブラッシングされ、スーツはもうなんか違うものが用意されていて、いつも着ているのより上等なものに着替えるように言われて、着替えさせられそうになったから自分で泣きながら着替えた。

「僕が何をしたって言うんですか……」
「ええ、斎藤様は何もしていらっしゃいませんが、そこに商材があれば無駄にしないのが私たちですので」
「商材!? 駄目です、売りません! もうちょっとウサギにしていく計画でしょう!! 私のウサギにするのです!」
「えええ……確かにウサギの才能には溢れていますが、ですがウサギは私と被ってますし……」
「駄目です、これはきちんとウサギにしまして我が家で飼うのです! 紅閻魔様が飼えないからその補填で連れて来たんですよ!」
「そうだったんですか……私てっきりサーカスか競売に掛けるのかと……」

 話を聞いている限り、主に闇のコヤンスカヤさんの計略で誘拐されたらしい。売っぱらわれるのか、ここで愛玩動物になるのか、どちらにしても明るい未来は望めない……。というか光の方のコヤンスカヤさんはなんかよく分かんないままに僕のこと誘拐したの? ひどくない?

「みう……」
「あら? やっぱり少し人間っぽくても鳴き声が可愛いですね、鳴き声」
「それは同意します。でももう少しうさぎっぽい方が好みですね」

 自分の境遇が悲しくなってきて思わず呟いたらうさぎ声になってしまい、余計に二人を刺激してしまった。ひどい、なんでなんだ。そもそも今更だけど半獣化バグってなに、怖い。

「あの、部屋に返してください。いろいろ、あるので……」
「それは駄目です。だってせっかく愛玩用に隙を見て連れてきたのに、どうしてあんな人間に返さなきゃならないんですか。斎藤様はここで保護して、もっと可愛いウサギにします。もっともっとウサギになるんです」
「意味不明だし、ひどい……もっとウサギってなんですか、あんな人間って新八は馬鹿だけど悪い奴じゃないです……」

 そう言ったら闇のコヤンスカヤさんにキッと睨まれた。なんで……怖い……。

「まだ人間がまともな生き物だと思っているのはウサギに成りきれていない証拠です! これは保護なんですよ! まるで太公望のようなことを言う……!」
「だって……」
「もっとウサギというのはそのままの意味です。ここにいればもっと野生を取り戻せます。野生を取り戻してウサギになっていきましょうね」
「ウサギになるってなんですか、僕元々人間で、サーヴァントの霊基も人属性のセイバーだし、普通の人斬りなんです、ウサギじゃないです……」

 そう言ったはいいけれど、神霊クラスのサーヴァントに勝てる訳ないし、そもそもここがカルデアの中でもどこらへんの部屋なのかも分からない。新八がいないからって鬼神丸もないのにコロッケ蕎麦を食べにふらふら出歩いたのが間違いだったんだ、と思ったらやっぱり僕が悪いんだろうか? ウサギなのに勝手なことしたから捕まってしまったのだろうか? 普通の人斬りって言ったけど、そもそも今の僕はセイバーでもないただのウサギかもしれない。そうしたらコヤンスカヤさんの言う通りにウサギなんだろうか?

「まあ、耳が折れてしまいました。しょんぼりして可哀想に、何かありましたか?」
「疲れてしまったのかもしれませんね。ウサギは新しい環境には敏感ですから」

 ……そうなんだろうか。僕は根本的にウサギだからもう役立たずで、ここで保護されるしかなくて、だから新八からも捨てられるんだろうか。

「新八に、捨てられた……?」
「……残念ながら人間はそういう生き物です。後先考えずに動物をいいように手懐けて、最後には……」
「ぜんぶ、うそ?」
「そうですねえ、ナガクラ様もウサギが可愛かった時期はすでに……だから一人で留守番させるし……」
「捨てられ、て……新八は、も、ぼくのこといらない」

「そうは言ってねえっていうか洗脳工作だろ、これ!?」

 そこまで考えたところで、部屋の入り口から聞き馴染んだ声がして、僕は顔を上げた。

「あ、新八……」
「チッ、もう少しでしたのに」
「あのな、アンタらも頼むから……カルデアってのは安全な場所ほとんどないのか?」
「ハハ、タマモヴィッチ・コヤンスカヤはちょっと例外ですよ! ていうか斎藤殿に目をつけるって何があったんです? ウサギ? 節操なさすぎません? 猫の蘆屋サン飼うくらいにしておきなさいな」
「太公望……貴様の差し金か……」
「いや、なんかシリアスな雰囲気出してますけども今回は僕悪くないですからね。誘拐犯は二人の方じゃないですか。しかも人間を誘拐したうえちょっとなにやってるんですかこれ、ウサギ度合が高くなってるって変な術掛けましたね? 怒りますよ?」
「貴様に言われる筋合いはない! 我らの愛玩動物だ!」
「いや、カルデアの風紀を乱さないでくださいっていうか、カルデアのサーヴァントの霊基を乱さないでください……」
「え、乱れてるのか?」
「この斎藤さん、ウサギ化が進んでますね。捨てウサギ思考が強まっているのはそのせいかと思います。まだ洗脳度合いが飼いウサギ段階で良かったですよ。野生化していたらもうコヤンスカヤの思うがままになってたでしょうから」
「だまれ! 半獣化の中でも特に御しやすかった青ウサギを誘拐して何が悪い!」
「いや、普通に考えて悪いだろ」
「うるさい! ナガクラシンパチが甘やかすから半獣化の中で一番御しやすいウサギになっていたから攫ったというのに!」
「……え、俺のせいなの?」

 部屋のベッドの上でずっとくっついて離れない斎藤を抱えたまま、とりあえず横になる。ウサギは縄張り意識が強いから、安心できる範囲が狭い、というのは知っていたが、震えながら必死にこちらにしがみつくだけでなく、帰って来るなり布団に留まらず俺の着物にジャンパーに羽織にと柔らかいものを山積みにして巣を作り、中に俺まで格納してずっとぐずっているのだから仕方がない。

「こわかった……」
「大丈夫だから、そんな泣くな」
「ん」

 巣の中で震える斎藤を撫でつつ、あれから……。

 あれからコヤンスカヤの姐さん二人はニキチッチの旦那に居場所を特定されて捕まってしまい、ペット洗脳用の部屋は太公望さんと玉藻の前さんによって解体されることになったらしい。けっこう大掛かりな布陣だった、と後から疲れ切った目の孔明さんに聞いたのは少し手伝ったから、と本人が言っていたからだが、斎藤の洗脳が上手くいったらほかの半獣化バグに遭っている連中も試す予定だったとかなんとか……。

「怖いわ、なんでそうなる……」
「なにが?」
「なんでもないから気にすんな」

 震える斎藤に言われてそう答えたら、不安げな斎藤が確かめるようにてしてしとこちらを叩いてくる。二人で入れる広さがある訳で、狭くはないが少しいつものベッドとは違うそこで必死になって居場所を確かめるような斎藤はなんだか可哀想というか……ウサギ化が進んでいると太公望さんは言っていたが、そもそも寂しがり屋なのは昔からだしなあ。

「新八は、僕のこともういらない?」
「だから、そんなことない」
「ほんとに? 捨てない?」
「前から言ってるだろ。おまえがウサギでもウサギじゃなくても、なんで俺が斎藤のこと捨てるんだよ」

 そう言ったらぺしょんと折れた耳が悲しい。だが、不安が顕在化するだけでもウサギになった価値があるのかもしれない。

「信じられないのは分かるけども」
「そうじゃ、ないけど……」
「そうだよなあ……前だって俺が無理やり付き合わせたところはあるけど、俺は斎藤が好きで愛してるからこうやってるんだって分かってもらえねえと、むしろ俺が寂しい」
「さみしい?」
「寂しいよ」

 素直に言ったのは久しぶりかもしれない。カルデアで再会してから何度となく伝えたつもりだったが、それでも何度言っても足りないことには違いがないのだから。
 寂しい。ずっと、体だけで繋ぎ止められると思っていた。支えになると思っていた。そんな感情だけで何になるんだろうと考えたくせに、結局それじゃあなんにもならないとやっと分かったのに、遅かった。だから、今度は逃がさないと思っていたのに、思っているのに。

「逃がさないっていうよりは、寂しいだけだ。おまえがいないとほんとに寂しい」

 そう言って青い毛並みを撫でてみる。ウサギかあ。寂しいと死ぬのはこいつと俺のどっちなんだか。俺だって寂しいと死ぬぞ。斎藤のこと取り上げられて死にそうだったし。

「ウサギじゃなくても?」
「そりゃ、斎藤だから好きなんだし」
「……」

 そう言ったら無言でしがみついてきた斎藤は、そうしてそのままぎゅっと抱き着いてくる。なんかこのくらいの温度が安心するっていうか。

「新八が寂しがり屋だから、一緒にいてやる」
「そうしてくれ」

 もうどこにも行かないでくれ、頼むから。

「……次はあのウサギをオークションに掛けましょう」
「もう怒りました、人間に飼われているウサギなら奪い取って売りさばけばいいのです! マスター様あたりならば高値で落札してくださるでしょう」
「駄目だぞ、お前たち……」

「🐰誘拐編(永斎🐰)」への2件のフィードバック

  1. まさかの……!Wコヤンさんたちに誘拐される斎🐰の図……!相変わらず筆にジェット機つけてるんですか!?という筆の速さですね緋雨先生……同じ字書きとして憧れます✨たくさん永斎を生んでくれてありがとうございます😭🙏😇

    まんまと誘拐されて「もう要らない?」「また捨てる?」と不安に駆られて耳が折れてペショペショになってしまう斎🐰……でもちゃんとお迎えが来てくれたよ!!後方彼氏面というか彼氏という真打ち登場に胸が熱くなりましたね❤️
    斎🐰の巣ー!!またの名を産室(偽妊娠の話めっちゃ好きです)巣の中で永さんにくっついてめそめそ泣いてしまう斎🐰ちゃ……。そして、生前の「選ばれなかった」ことがずっと心の傷になっている永さんの「信じられないのはわかるけども」の重さ。一見すると「信じろ!」とか言いそうな永さんですが、緋雨さん家のあの過去を持ってる永さんは「信じろ!」と押し切れない。なぜなら一度選ばれなかったから。く〜っ……!良すぎる……!!でも、だからこそ「二度目」が叶うカルデアで「一度目」のときと同じ轍は踏むまいと懸命に言葉を尽くそうとする永さんの誠実さが心を打ちます。「さみしい?」「寂しいよ」のところが大好きです。一度目の別離があるから大手を振って「信じろ」なんて言えないけど、「信じてくれないのは寂しい」と、今言える中で懸命に言葉を選ぶ永さん……。はぁ……、緋雨さん家の永斎に毎話流されています😭可愛くて切なくて

    こんなに連日素晴らしい永斎が読めちゃっていいのか……!?ありがとうございます😭お礼を言うことしかできない……!
    (日付変わっちゃいましたが💦)本日8/21は奇しくもバニーの日だそうで!!
    🐰💦<ミッ⁉︎

    1. ありがとうございます!思いついたのでささっと誘拐されてもらいました! 🐰<ひどい!
      誘拐されるし捨てウサギ思考になるしなんですが、やっぱり過去のことがあるので強く出られないというか、互いに「捨てられる」「信じてもらえない」というのがあるのかな、ウサギなんていうトンチキなことになっていても互いに互いのことを考えると不安で仕方ない二人なのかなと思っているのでそう言っていただけて嬉しいです💕
      巣……不安になったりパニックになると産室を作っちゃう🐰斎いいですよね……🐰今回は永倉さん本人も格納したから寂しくないね!
      「選ばれなかった」「選べなかった」「信じてほしい」「寂しい」二人をこれからもいろいろ書いていきたいので、お付き合いいただければ嬉しいです💕
      そして、全然気づいていなかったのですが821、バニーの日!?そうだったんですね!?
      おのれ🐰斎、バニーの日に的確にNFFサービスに誘拐されるとは策士……あざとい策士のウサギめ……!
      🐰💦<!?

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