今更過ぎて自分でもびっくりしたんですけども、永斎と会津での土方さんの関係についてちょこちょこ書いてはいるけども決定的な部分を特段書いていなかったのですが、それもどうなんだろうと思って書きました。考えてはいたけども、まとめて書いていなかったっていう自分の中だけでアウトプットしてない一番駄目なパターン。
そうしたらほとんどカップリング的な要素がなくなってしまったんですが、そのわりにちょっとだけ長いです。
土方さんって優しいよねっていう話です。この色男優しすぎて怖い。
この話は南壽あさ子さんの「回遊魚の原風景」という曲を聴きながら書いていました。とても優しい歌ですが、FGOの新選組メンバーもそれぞれに優しすぎてどうしようもないところある気がするんだよね。
コイツ毎日書いてんな、みたいになっていますが、お盆の後、身内のお葬式あったんですよ(言い訳タイム)。寺基準で偉い人だったので、親戚なんですけど身分上私が参列できる方じゃなかったのですが、かといって山門から出歩くこともあんまりよくはないので、母屋の掃除をしたりゲームをしたり小説を書いたりしていました。だから病院に急いでいったりしていたんだね。被ると行けなくなるから。
積みゲーやりたい。ライズオブローニン、十三機兵、アトリエ。アトリエやりたい、エスロジのアトリエもう20回くらいやりたい!!
……いろいろ考えてきましたが、彼岸と此岸と会津と板橋、カルデア含めてうちの永斎といろいろあった副長さんはこういう関係だと思います。斎藤さんはなんか、ウサギとか子猫とかハムスター感あるよね。こう、なんだろう、飼い主がすごく心配になるけど振り回される感じ(※感覚だけのイメージです)。
おやすみ
「ふくちょー、みーかーんー」
「俺は蜜柑じゃねえ」
そう言って土方がポイっと蜜柑ではなくグレープフルーツを切ったものを投げたそれをキャッチした斎藤は、それでも不満顔でその推定屯所の机を囲みながら言った。
「そういう古典的というか、小学校の先生みたいなこと言わなくていいんですよ、小学校とか知りませんけども。そういう余計なこと言わないでもいいんです」
「うわ、面倒くさい」
沖田がその言動にケチをつけたが、斎藤はどこ吹く風という様にそのグレープフルーツを食べた。……時期的に、まだ蜜柑は出回っていないのである、夏だし。
「ていうかね、アンタ僕には特に詳しい命令もせずに二言三言で、間諜でも暗殺でもなんでもかんでもやらせてたくせに、自分だけそういうのってどうかと思いますよ? 蜜柑って言ったら黙って蜜柑取ってください、部下のこういうワガママ聞いてくれないならまた会津で見捨ててやりますからね!」
「斎藤君、その言い方は……」
「山南、いい。相手にするだけ無駄だ」
大きく溜息をついて土方は茶を啜った。それからもぐもぐと果物を食べている斎藤を見る。珍しく三臨……長髪でいるくせに、隊服ではなくそれも夏だからか適当なTシャツを着ているのはどうしたことか、と思うが、その髪をひとくくりにして、恰好までそうしているとただの擦れたガキというか、少し粋がっている未成年だな、と現代風の知識で土方は考えた。
「ていうか斎藤さん、その恰好なんですか? 今更ですけども」
隊服は? スーツとかコートは? とやはり柑橘をもぐもぐと食べながら訊いた沖田に、斎藤は億劫そうに答えた。
「これね、再臨戻したり霊体化して編み直す余裕ないの。そんでマンドリカルド君に夏のTシャツ余ってるの借りた」
「え?」
「それは……けっこう重大事のように思えるのだけれど……」
あまりにも日常的なふうに口にするが、既に屯所と土方が呼ばわる新選組の面々がが日中押し込まれている部屋に入り浸っている訳で、と考えたが山南はもう一度確認してしまった。
「斎藤君、それは魔力リソースが足りずに霊体化も霊基の復元も出来ないということですね?」
「えー、そんな重大なことじゃないですよ。ちょっと切ったみたいな。で、着替えるの面倒なんで」
「斎藤君」
ふざけたようにはぐらかそうとしたが、山南に冷たく、しかし真剣に重ねて問われ、斎藤は溜息をついた。
「……出来ますけど」
「じゃあどうして?」
「……したくないから」
「うわぁ……」
「クソガキすぎて言葉もねえな……」
「言葉はあるじゃん! 今副長クソガキって言った!」
そう土方の揚げ足を取って喚いた斎藤に、今度は山南が無言で溜息をついた。そうしたら土方が淡々と言う。
「確かこの間の特異点、微小だってんで藤丸と盾の女の同行者はおまえと永倉だったな」
「この間っていうか、さっき帰ってきたんですけどね!」
そう土方の言葉に続けた沖田に、斎藤は顔の色を失った。それを横目で見ていたが、どうにも変わらないものだ、と山南は思っていた。変わらない、というのが良いことか悪いことかは別として、だが。
「それで、永倉は霊基損傷で意識もねえから現在治療というか修復中だとかなんとか。おまえがのこのこここに帰ってきたんで、永倉の方も大したことないと思ってたんだが」
「土方君、やめなさい」
山南が咎めたが、土方はそちらを一瞥しただけでそのまま昏い色をした緋色の目で斎藤を見た。
「……あの」
「どうなんだ」
重ねて問われて、斎藤は耐えかねたように、堰を切ったように叫んだ。
「みんな馬鹿だから! 僕の言うこと聞けばいいのに!」
「斎藤君……」
「勝手に脱走して、勝手に病気になって、勝手に置いていって、勝手に進んで!」
叫んでも、誰も戻ってこないのに、と思った言葉が幾らもあったのに、と。
「勝手に死にやがって!」
だから嫌いなんだ、と泣き叫んだ子供のようなそれは、空疎な戯言でしかなかったのにその狭い部屋にひどく冷たく落ちた。
*
「っ、やべ」
心眼のスキル効果が分かりやすく回避だとして、回避できるということは見えている訳だ、と斎藤は岩場を走りながらそのスキルで稼いだ時間で短く考えた。相手がなんだか分かりはしないが、その蹴爪の迫る瞬間が見えていたのは僥倖だ、とそれを避けた瞬間に、避けたにも関わらず、なぜだかそのまま大きな岩に叩きつけられた。
「蹴爪は避けたな」
「は?」
「そこで動くな、寝てろ」
「はあああ!?」
それは自分と同じタイミングでマスターが同じ効果の心眼を使ったはずの永倉の声だった。そうしてそれから、一拍遅れて大型の攻撃の範囲外の巨石に永倉から叩きつけられたのだと気が付いた。
「ちょっと待て、何やってんだ! 単独行動すんな、マスターの指示!」
「だから寝てろ」
あくまでも冷静に永倉が言った時には斎藤の目の前にマシュの宝具が展開していて、そのままマスターの声がした。
「マシュ、ごめん、それ簡易の治療術式起動したからはじめちゃんよろしく!」
「斎藤さん、私の宝具が展開している範囲内は安全を保障できますので動かないでください!」
「待って、ここの範囲外って!?」
そう言った時にはマスターがマシュの展開する大型の防御障壁から飛び出していた。そこでやっと血に濡れた自分の目がほとんど役に立っていないことに斎藤は気が付いた。
*
「……で?」
「馬鹿っ八のガッツとマスターちゃんの令呪のブーストでなんとかなりました。足りなかったから霊基削ったみたいですけども。バカってバーサーカーの略なんですか?」
じゅうぶん泣き喚いた後に、報告しろと土方に言われて、不貞腐れたように言った斎藤に、土方も山南も沖田も呆れたように溜息をついた。
だいたいの事情はマスターからもマシュからも聞いていたから斎藤から改めて聞いたことは分かっていたことだったし、永倉の治療も霊基の損傷だから時間はかかるが、一命は取り留めたという。むしろ、その状態でマスターとそのファーストサーヴァントを守ったのだから上々だと土方が言ってマスターとマシュの二人からは驚かれたくらいだった。
……マスターが心眼を二人に発動させた時点で、その理由が違っていたことに永倉は気が付いていた。
――見えていなかったのだ。血糊と汗が入れば、油脂で目はかすみ、見えなくなる。そんなことにも気が付かずに刀を振るっていた斎藤は、既に目が見えていなかった。心眼で行ったのは回避ではあっても、本来の『何かを見る』ということを魔術的なスキルで行わせることが精いっぱいだったし、それに気が付かせる一瞬が必要だった。
だからその一瞬で、永倉は斎藤を退避させてそのままエネミーに切り込んだ。後のことを全く考えていなかったのは彼の欠点かもしれないが、一撃ならば仕損じることがないだろうという考えと、スキルのガッツとマスターの援護があればなんとかなるだろうという楽観は、あの状態では正しかったのだろう。
――『その結果が霊基の損傷だとしても、マスターが帰還できたのだから正しいのですよ』と言った山南に歪んだ顔をしたマスターとマシュに、沖田が殊更に明るく声をかけていたのが思い出されて、それを言ってしまった当人である山南はもう一度溜息をついた。その後からマスターとマシュ以外にも取り乱している若人がいたのだと思ったら、だけれどこちらにも溜息しか出ない、と思いながら。
「なんで、みんなそういうことばっかりするの?」
「なんでって言われてもな」
「勝手なことばっかり、逃げたらよかったのに! 一旦カルデア戻って、立て直して、応援呼んで!」
「だからそういう状態じゃなかったってことでしょう? それに永倉さんが倒したエネミーで解決しましたし」
「逃げればいいのに、なんで、怪我してまで、死んでまで! そこまですることないのに!」
「斎藤君、それはね」
それぞれに諭されるように言われても、泣き喚くように、永倉が元に戻るまで戻らないと子供が駄々をこねる様に霊基を編み直すこともしないままの子供は叫んだ。
「なんでみんな勝手に死ぬんだよ! じゃあ勝手に死ねよ! 僕の、俺の知らないところで、勝手に、そうやって、みんな……」
そう言われて、各々に心当たりがあるから何も言えないわけではないが、何を言ってもきっと通じはしないのだろう、と分かっていた。分かっていたから口をつぐんだ山南と沖田に比して、言葉を投げかけたのは土方だった。
「ほう」
「……なんすか」
薄く笑った男は、なにも知らなければ確かにただの美男子だ、と嫌味のように山南は思う。あんなに周りからも恐れられていたというのに、京の花街どころか、町娘でさえ誰もが振り向くような色男だった。だが、壬生狼などと恐れているにもかかわらずその男が実際にどれほど残忍が過ぎたかは、皆知らないのだ、と。
「じゃあアレは本気だったってことでいいんだな」
「……は?」
「勝手にやって勝手に死ね、か。ずいぶんな言われようだったもんだ」
「それは! ていうかそこまで言いましたっけ」
そう会津で土方と、新選組と別れた時のことを持ち出されて、どこか誤魔化すように目を泳がせた斎藤に土方は容赦なく続ける。
「あ? 大枠はそういうこったろ?」
「だから、それは副長がそれで止まってくれるんじゃないかって、思って……!」
言い募った斎藤が本気だったことも分かっているし、その気持ちが分からないなどということもない。土方自身にもないし、山南や沖田にもそれは分かる。分かるが、実際に土方はそれでも止まらなかったし、今も止まってはいない。そうして斎藤は確かに会津までの道程、彼が北限に行くその間際まで共にいたのだから。
「ほーう。死ねとまで言われて引き留められるってのは男冥利に尽きるな。おまえはどこぞの御息所か」
「からかわんでくれますか、なんかいろんな意味で心が痛いので」
「精神的にいたぶってんだから当たり前だろ」
「うわあ、あっさり言うね」
さらりと言った土方のそれを当たり前のように受け止めて茶を飲んだ山南に比して、思い出すことが多いのか、打撃を受け過ぎている斎藤は沈み込んだような顔が段々と暗くなるどころか、隊服の頃の髪のはずだった三臨のそれが短くなり、借り物らしいTシャツは隊服を通り越してYシャツになりつつあるから沖田も思わず溜息をついた。
「ああ、なんでしたっけ? 洋装とか髪が短くなったりとか。昔の武田さんの所で……甲陽……? 沖田さんは置いてかれましたし詳しくないのですが、そのへんです? その恰好?」
「違わ、ないけど、違うっていうか、そうじゃ、なくて」
「そんなに頑張って引き留めても土方さんあっさり行っちゃったのに、自分のことマスターに遊びが好きとか、まるで京でモテてたみたいに言ってますからね、この人」
「それ、いま関係ある?」
沖田に散々言われて、そうして今はすっかりコートにスーツに戻ってしまい、霊体化もしていないのにいつの間にか霊基の編み直された斎藤に、土方は容赦なく続ける。
「そんで、その甲斐の辺りでおまえは永倉になんて言って俺のところに逃げてきたんだったか」
「あ、の……」
「なあ、永倉? 何だったか覚えてるか?」
「……相変わらず悪趣味だな、土方」
「え……」
その小さな屯所という名の小部屋の戸口で、土方に声を掛けられた永倉は、ぼそりと言ってその面々を見回した。
*
「しんぱち?」
「おう」
短く答えた永倉に、山南が座布団を持ってきて座らせる。
「あ、わりぃな先生」
「いや。もう大丈夫なのかい?」
「ああ。令呪って言ったか? あれ使っての宝具だったのもあって俺自体に損傷もあったが最小限だったとかなんとかですぐ治ったぜ!」
「いや、そんなすぐ治るもんでもないと思うんですけどねぇ……」
「沖田は体弱ぇからなあ。無理すんなよ」
「そういうことではないと思う沖田さんなのでした」
そうやって、今までの話を置き去りにした会話をしていれば、放心したような斎藤がその珍しく隊服姿でも現代のジャンパーでもなく、若い霊基に着流しといういつか京にいた時のような姿の永倉の袖を引けば、やっと気が付いたように振り向いた彼が青く柔らかな髪を撫でた。
「どうした」
「いきて、る?」
「そりゃあ、そう簡単に死にはしねえよ」
泣き出しそうな声で問いかけた斎藤に笑って言ってやれば、本当にぼろぼろと泣き出した彼と、笑ったままでそれを眺めて撫でている永倉に、土方は面倒そうに言う。
「そういうのは部屋でやれ、部屋で」
「おまえに言われると腹立つのはなんでだろうな」
「一回フラれたからじゃねえのか? 見ものだったぜ、今まで散々寝てるうえ、いっつもべったりだった男にフラれて俺に取られたんだ。自分の色男具合がおまえに申し訳ねぇったらなくてな」
「言ってろ。おまえが女以外にも興味あるのは知ってたけども露骨なんだよ」
「あ? おまえの趣味と一緒にすんな。俺は抱くなら女の方が好きなんだよ」
「別に趣味じぇねえわ。たまたまだよ」
「たまたま斎藤だったってか? たまたまだとよ、良かったなあ、斎藤? この馬鹿のたまたまの趣味に当て嵌まって」
「……教育上というよりも、道徳的によろしくないのでそういう話は余所でやってほしいのです」
「というかそういう喧嘩をしないでくれるかい、どうかと思いますよ」
そう言われたが相変わらず双方嫌味の応酬が止まりそうもない土方と永倉に、その会話のせいで永倉の袖にしがみついて震えている斎藤という姿に、山南と沖田も諦めたように息をついてしまう。
「だがなぁ、永倉? そこの色男に捨てられた同士仲良くしようじゃねえか。どうせ俺もおまえも斎藤に捨てられてんだ。気にせずにやっていこうぜ?」
「だまれ」
「いいだろうがよ。別に俺もおまえから寝取ったワケじゃねえんだから。斎藤が『勝手に』来たんだし、『勝手に』俺のとこからも出ていったんだよ。薄情な男だ、まったく」
その一言にピクリと永倉は動きを止めて、それから縋りついていた斎藤を担いで立ち上がってしまった。
「っ!?」
「飯食ってんのか、おまえ」
上背は自分よりもあるのに、昔と変わらず体重が軽すぎる、と思いながら持ち上げた斎藤を運んで部屋から出ることにした永倉に土方は言う。
「前から一応言おうと思ってたんだがな」
「なんだ」
「いい機会だから言っとくが、俺はいくら言い寄られても他人のもんに手を出すほど相手に困っちゃいなかったぞ」
「へーへー、そりゃそうでしょうね、色男は違いますね」
「そういうこった。ついでに言えば、俺は遊び慣れてるからか、それなりに女も男も寄って来るのもあって相手が『憐れで抱く』なんざ、経験がなくてな。そういう危ねえ火遊びが面白いならご教示願おうかと思ってるんだが?」
その言葉に腕の中で斎藤が怯えたように震えたが、その反応に反して永倉は笑った。それはもう可笑しそうに。ひどく面白そうに。
「いくらおまえでもやめとけ。後悔するぞ」
「ほう?」
「少なくとも俺は後悔してるし、もうやめた」
そう言って軽く腕の中の斎藤を見遣り、困惑したように見上げる彼に笑ってみせれば、そのやりとりを見ていた土方が満足げに笑った。
「さっきも言ったが、そういうふうにべたべたしたいなら部屋でやれ」
*
「あの……新八……」
「おまえなあ……」
部屋に戻って、それからも離れなくなった斎藤を抱き留めたままベッドに乗って、そうしてその着流しのまま一緒に横になれば、ぴったりと寄り添う彼は永倉の存在を必死に確かめるように、輪郭をなぞるように手を這わせて足を絡めて抱き着いてくるから、永倉は動くのをあきらめた。
そこに色事めいた艶はなく、本当に単純に『生きている』ことを確かめたいのだ、と思ったら、児戯のようにさえ思えて、可愛いを通り越して心配にさえなる、と思ってから実際に心配をかけたのだ、と思い至る。
だが、謝らなければならないこともあったし、それであっても戦術面など言っておかなければならないこともあったし、と考えても今は好きにさせておくかと思ってしまうのが甘いのかもしれないと永倉はすり寄って来る斎藤に思った。
「分かっては、いたけども」
何だかんだと捨てられて、何だかんだと着いていった先が土方でも、そこが戦場だなんだということを勘定から外したところで、いや、そんなものを外さなくても、かもしれないが。
「土方がそういう意味でコイツに手を出してないのは分かってはいたけども」
だってここでヤっても体とか全部、と口に出しそうになって誰も聞いてはいないが流石に問題がある、と口をつぐんだが、それでも。
「フラれた自覚はあるし、おまえに取られた自覚はあるんだよ、嫌味なんだよあの野郎は」
だけれど、と思う。そもそもその自覚さえ、選ばれなかったその喪失の自覚さえもが遅すぎたのだから。
自分が生きていることを必死に確かめて、喪うことを恐れて、そうして、永倉だけでなく、沖田でも山南でも土方でも、その誰かのためにいつだって泣いて、いつだって笑うことが出来たのがコイツなんだ、と永倉は思ってその柔らかい藍色の髪を撫でた。
「独占はできないけども、俺のもんだとは言っとくぞ」
「痛くないか? 何か食べる? 飲む?」
一通り検分が終わったのか、納得したのか、それでも泣きそうな顔で更に何か提案しようとする斎藤を抱きかかえて、そのまま永倉は目を閉じた。
「眠い」
「?」
「もう寝るからそこいろ。どっか行くな」
「分かった。ここにいるから、ちゃんと寝て」
見張るように、必死なように腕の中で言った斎藤の、その仲間が傷つくことへの恐怖や悲嘆を見る度に、自分は何を思っていたのだろう。
それは憐みだったかもしれない。
だけれど今はもうただ愛おしいとしか思えない。
そうだとすれば、変われたのだと思っているから。
「土方の優しさは分かり難すぎる……」
「土方さんは優しいよ?」
「褥でほかの男の名前を出すな」
「んっ」
その言葉を口付けで塞いで、そのまま寝てしまおうと永倉はもう一度彼を抱き込んだ。
「新八、あの」
「明日な」
「……うん」
謝りたいことも、話したいことも、やりたいことも、ぶつけたいことも、明日やればいい。
明日また、会える。目覚めても、まだそこにいる。
そう思えば互いに何もかにもに安心できた。不確かなものに怯えなくて済むように。眠りの淵に落ちるのに、怯えなくて済むように。
「おやすみ」
=========
「回遊魚の原風景」南壽あさ子
うふふ、緋雨さん家の土方さんと永倉さんの舌戦大好きなんですよね……拝読しました!!
やはり、身体の関係があってから、それでも別れて他の男(土方さん)と人生を共にして、それを死ぬほど気にしている永倉さんが良い、良すぎる!!善性に溢れる人間の明確な嫉妬は良すぎる、愛を感じる。
「明日な」と、明日またそこにいる現実を信じられる永倉さんに泣いちゃいましたね……永倉さん生きててベッタリになってる斎藤も可愛かったです!!ペタペタ生存確認してるところが特に!!
ありがとうございます!!いっぱい読んでいただけていた…💕🐰💕
やっぱりあの二人は口喧嘩させたいと、そうして土方さんに少し負けてほしいといつも思っているので嬉しいです(ひどい趣味)
そうなんですよ、善性の男が嫉妬して後悔して、それを分かっているから余裕でチクチクと言ってくる色男、土方さんでした。
そしてー!ぺたぺた生存確認の斎藤はめっちゃ意識していたので良かったです💕永倉さん限定で子供っぽくなってほしいなって♥