雨の日（🐰永斎🐰）番外編・ジビエ

🐰＜しんぱち、おまえ、食べたのか？　僕以外のウサギを……？

永斎のウサギ現パロシリーズの番外編ですね。この時点で意味不明に思われる方も多いかと思うのですが、サイトの方に「雨の日」というこのシリーズの一話目が入っているので気になる方は読んでみてくださいね（丸投げ）。本もまだ多分在庫があるのですが、書下ろしは別として本編ははよ上げなさいよと思っている。
現パロで遺伝子操作によって半分ウサギの斎藤君が永倉さんに拾われるハートフルストーリー……ハートフル？　全体的に🐰に侵食されているだけでは？　という内容です。🐰。

この「雨の日」を出したあとに私生活が忙しすぎて死にかけていたんですね
そん時にWaveboxで

もらったのですね。これもうね、可哀想で可愛くて、愚かわいさがにじみ出ていて、その日のうちに書いた話があったのですが、続きを書いたらなんか全然違う話になったので上げておきます。

最初の動画云々でわちゃわちゃしているところだけXに上げていたのですが、今日になって続き書いたらなんか長くなった。

ジビエ……裏切り……。斎藤はウサギである自分を克服できるのか……。

作中で真面目な振りしてますがだいぶ、というかかなり頭の悪い内容です。
あ、「雨の日」なので約一名、永倉さんのお兄さん二行だけ出てきます。現パロだから生きてます（雑な設定）。

時系列的には永倉さんのお見合い後、斎藤🐰さんと婚約済み、🐰斎はまだ大学生、です。

この時系列が既に意味不明なのはもう気にしないでくださいね。そのうちサイトに上げるから！（本当に早くしてくださいね）

FGO型月永倉さんは、新選組時代もカルデア時代も、現パロも、オメガバも、もちろんウサギ🐰も、一回と言わず二度三度と斎藤さんに逃げられているのがスタンダードみたいに思ってしまうし書いてしまうのは、昨日書いた通りたぶん価値観の相違なんですよ🐰🐰🐰

 

ジビエ

「……」

　昼。休みだし、と動画サイトで以前から見ていたチャンネルは案外面白い料理番組で、シリーズを暇な時に片っ端から見ていたのだが、視線を感じてPCから振り返れば、今起きたらしい斎藤がじっとりとこちらを見ていた。

「どうした？」

　ウサギの斎藤の耳を撫でつけてそう言ったら、何も言わずプイっとそっぽを向いたのに、すりすりと不安げに耳を擦りつけてくるから、動画を止めて撫でていれば、マウスを勝手に弄った斎藤に動画の画面を消された。

「何だよ」
「……ジビエ」

　そう言ったら一言言われて、ああ、そういやこのチャンネルって料理動画ではあるが、ハンターというか兼業猟師がやってるチャンネルで「今日はこれが獲れました～」で既に解体された肉から始まるのは、なんか狩猟や解体の部分から始めると人道的にとか配信サイトの規約で、と言っていたが、今日はクマだったな、と思ったが、斎藤は重ねて言う。

「だから、ウサギも」
「？」
「撃って、食べるようなチャンネル、見てるの、ヤダ」
「……？　ああ、ウサギ肉？」
「～～！　だーかーらー！！」

　タンタンっと足を踏み鳴らすように、と言っても人間体なのだが、と思っていた斎藤を落ち着かせるように軽く抱えてみれば、強く言い募っている割に震えているのが分かる。

「新八そういうの好きなの？　好きだから僕のこと飼ってるの？」
「違うけど？　なに、不安になったのか？　ウサギは寂しいと死んじまうからな」
「ち～が～う～！！　趣味悪いって言ってんだよ！」

＊

「ひどくない！？」
「とか言いながらパフェを食べる斎藤さんなのでした」

　パシャ、と周りが映り込まないように自分の席の季節限定のパフェを写真に撮っておく。少しだけ垂れている斎藤さんの青い耳が入る様にしているのは別に匂わせとかじゃないですよ。周りは映らないようにしていますからね。しかもこれ、SNSにアップロードはしません、保護者兼恋人兼婚約者の永倉さんに送るだけです。

「あ、武雄さんにも送りましょうか……？」
「？　だから、その季節限定のパフェを服部でも伊東でも誰に自慢してもいいけども、これ、僕の奢りなんだから話は聞いて！」

　ぱく、とひと匙その甘いクリームを食べてから、こくんと頷く。垂れていたのに今は怒っているのか興奮しているのか、ぴんと立った青い耳のイケメン……可愛いというよりは大学でもカッコいい分類ですよね、この人。モテるのに彼女作らないヘラヘラ遊び人扱いされてますが実態は婚約済みとか、別に悔しくないんですからね！　いえ、ほんとに。あ、ちなみに大学の同期の斎藤さんに呼び出されて休日に最近できたカフェで季節限定のパフェを奢ってもらっています。

「聞いてる、沖田ちゃん！」
「聞いてますよ、だから永倉さんがジビエ料理の配信チャンネル見てるのが前から気になってたんでしょう？」
「馬鹿っ八は馬鹿だから知らないだろうけどもね、次回がウサギなの、ウーサーギー！」
「チャンネルチェックしてるんじゃないですか……甲斐甲斐しいというか、単純に怯え性というか……斎藤さん、ウサギ回見たんですか？」
「見る訳ないじゃん一緒にしないでこわいやめてクマ肉のソテーはちょっと美味しそうだったけど！」
「ワンブレス……そうして発言に大いなる矛盾を感じる沖田さんなのでした……」

　ていうかよく考えなくてもこの人の好物って昔から蕎麦とコロッケと鰻ですよね？　コロッケもお肉入ってるし、鰻は永倉さんの影響ですし、そもそも半獣でも遺伝子的に人間と同じ食事ですし……。

「薬剤とか、医療の人間と同じ臨床での試験ってそれこそ斎藤さんの研究領域では？」
「そういう問題じゃない～～！」

　タンタンっと床を蹴る仕種は相変わらず可愛いですね。何でしたっけ、ステップとかそういうの、なんか不満がある時にやるやつって永倉さんがざっくり言っていました。そうなんですよ、昔からいくら言っても斎藤さんの細かいところを教えてくれないんです、あの人。独占欲の塊なのでは？　だから土方さんや伊東さんにからかわれるのでは？

「でもそう考えると分かりますよ。こんなやきもち焼でおこちゃまのウサギさんと付き合ってるのに、無防備にジビエチャンネルなんか見たらそれはこうなりますよね」
「僕が悪いみたいな言い方！」
「うーん、どっちも悪いですかね」

　なんか永倉さんのお見合いでひと悶着あったと聞いていたので、なるべくこう、刺激しないようにと思っているうちになんか永倉さんは既に社会人で大学に関係ないにも関わらず分かるくらいには今まで以上にラブラブになっていて、見せつけるようにいちゃいちゃされたので、砂吐きそうになっている同期の私や武雄さんの気持ちにもなってほしいんですが、それはそれとして。

「配慮は必要だと思いますよ。でも、じゃあそのために部屋分けるって言われたらどうします？」
「ていこうする」
「……」
「僕の巣が破壊されるから抵抗する。新八がいない巣は巣じゃないから」

　……お馬鹿さんなのかな。お馬鹿さんでしたね。いや、でもあれかもしれません、永倉さんのことだから、うーん。

「何も考えていないかもしれませんし、何か考えているかもしれませんよ？」
「？　どういうこと？」
「んー、ウサギのジビエ動画以外にも、スプラッタ映画とかも斎藤さんそもそも駄目でしょう？」
「うっ……苦手では、ある……」
「でも永倉さんがこう、無理やり怯えさせよう、脅かしてやろうみたいにそういうの見せてくるとも思えないんですよねぇ？」
「え？」
「前ならちょっとビビらせてやろうみたいなのあの人ありそうですけども、こないだのお見合いのことがあったし、なんかそういうことしない気がして……。単純ミスだったのでは？」

　そう言ったらパクパクとパフェを食べながらもあからさまにしゅんとしてしまった斎藤さんがなんだか可哀想になってしまう。自己肯定感とかそういうものが異常に低いのに、普段はただのクソガキ、とか評して土方さんが斎藤さんの主治医である山南さんに怒られてましたけども、この人……。

「分かってるのにそういうこと言っちゃったのが、すごく、駄目なウサギだから捨てられるんだと思う、たぶん」
「いや、飛躍しすぎでは？　ここに来た時と話が違いすぎません？」

　完全に折れてしまった耳でそう言い出した斎藤さんに、不安定とかそういうことじゃないのは分かるんですけどね、と思いながらもパフェを食べる。これは永倉さんも悪いと思いますよ。

「ほんとは、ウサギのジビエくらいでビビってるから捨てられるかなと思って相談に来ました……」
「ですよね～。お姉さんは分かってましたよ……そうでなかったら斎藤さん、わざわざ私を指定しないでしょう。愚痴を言いたいだけなら藤堂さんとか……」
「そもそも『おまえもウサギのくせに調子に乗るな』みたいに思われてたらどうしよう……」

　泣き出しそうな斎藤さんは本当に怖かったんですね、と思う。ジビエ動画が怖かったというよりも、その後の自分の行動で永倉さんがどう思うか、みたいな。この間のお見合いの話も聞きましたけども、顔色をうかがって生きてきても結局捨てられた、それでも拾ってくれたのが永倉さんだとして、それだからこそ余計に……。うーん……。

「聞いてみては？」
「え？」
「怒ってる？　って。動画見るの邪魔したから怒ってるか、ウサギだからウザいと思ってるか、はっきり聞いてみたらいいじゃないですか」
「……でも……」
「だってちゃんと話し合ったんでしょう？　じゃあこれからもちゃんと話し合わないといけないのでは？」
「だって、怒ってたら？　ウザいとか、いらないって言われたら？」
「その時は謝るとか、それでも折り合いがつかなければ出ていくとか考えれば？　価値観が合わない人と結婚するのは大変良くないと思うのが沖田お姉さんの意見です」
「ミッ！？」

　そんなこと考えてもいなかった、青天の霹靂、みたいな顔してますけども……どうなんでしょうね、いろいろあって、成人して、ひと悶着あってもパートナーで、婚約してもこれでは、価値観のアップデートというよりブラッシュアップというか……なんか横文字使っちゃいましたけども、教育が必要ですよ……。

「あれ、お姉さんお散歩？」
「はい？」

　そんなふうに言ってみたら思い悩んでいる斎藤さんを前にパフェを食べていたら声を掛けられました。ふぅんと思う。少し年上っぽい青年というか、大学生か社会人でしょうねえ。お散歩、ねぇ？　こういうのこそ価値観のアップデートが必要なのでは？　と思いながら向かいの斎藤さんを見てからその人を振り返る。

「何か？」
「このカフェ新しいから、どんなメニューあるのかなって。相席とか」

　いや、このご時世にこれって、アップデート以前に時代から取り残されてませんか。今って西暦何年でしたっけ……？　西暦じゃなくて年号だと平成初期のナンパ方法では？　いや、平成初期とか私も知りませんけども、芹沢さんにでも聞いてください。

「……俺の友達に何か用事？」
「は？　おまえウサギだろ？」
「まあウサギなことは否定しませんけどもね。ウサギだから上手くいくこともあるんだけどもね。沖田ちゃん、会計済んでるしどっか行こうぜ」
「はあい。前払いっていいですよねぇ。あ、お兄さんに二つアドバイスです」

　黙ってしまったその人に笑ってみる。斎藤さんも成長していますねえ、と思いながら。

「一つは、このお店前払いなので席に着く前に注文してお支払いしてくださいね。二つ目ですが、この人の言う通り、私のお友達ですから適当なこと言わない方が身のためですよ」

＊

「……で？」
「というご相談でパフェを食べていたので、映り込み写真を送っていたら斎藤さんがしょんぼりしてしまい、その後ナンパされ、野良ウサギ扱いされて更にしょんぼりしつつも毅然と私を友達だと言い切って守ってくれたのですが、緊張の糸が切れた斎藤さんをお届けに来たというか」
「ハアアアアアア……」

　土曜日の夕方、昼まで寝ていた斎藤がなんか動画消して機嫌悪いと思っていたら、ちょっと遊びに行くとかなんとか言ってたが、そのあとすぐに「浮気された永倉さんへ」というパフェと斎藤の耳が映り込んだ写真を沖田に送られた俺は……。

「わりと本気でやらかしたと思ってた。悪かった……」
「ですよねー！　分かっていましたとも！」

　玄関先でびくんと震える斎藤を受け取って、耳を撫でていたら笑顔の沖田に言われる。

「でもちゃんと、ウサギでもウサギじゃなくても私のことを友達だって言って振り切れたんですよ。成長ですねえ。お姉さんとして嬉しいのです」
「それはそうだな」

　そう頷いたら、えへんと沖田が胸を張る。そうしたら家の中から声がした。

「あれ？　はじめ帰ってきたの？　あ、総司ちゃん、一緒だったん？」
「あ、お兄さん、斎藤さんをお届けに上がりましたよ！」
「また新八が迷惑かけた？　はじめの面倒見てくれたの？　はじめのお姉ちゃんってことは、俺もはじめのお兄ちゃんだし俺たち結婚する？」
「だまれ兄貴！」
「どうしてお兄さんって永倉さんとここまで違う人に成長できたのか、やっぱり不思議で仕方がないのですが……」

＊

「斎藤……じゃなくて、はじめ、おいで」

　そう言われたけれど怖い、やっぱり怖い。
　だってやっぱりウサギだし。いてもいいって、この家に居ていいし、パートナーだって言ってくれたけど、ほんとのことだって分かってるけど、そんなこと分かっていても、だって。

「ごめんなさい」
「いや、謝るの俺の方だろ……」

　そう言って新八が近づいてくる。……新八は怖くないけど、新八にひどいことした自分が怖い。だって、そんなことしちゃいけないのに。

「ごめんな、馬鹿だからあんま考えねえで変なもん見てて」
「ちがっ、だってそんなの好きなの見ていいのに、勝手に怒ったの僕だし……」

　ふかふかに作り直したベッドで新八の服とか握りしめていたらそのまま撫でられた。

「我儘言ってごめんなさい……」
「いや、ワガママではないだろ。普通にこええよ。レーティング的な問題だな」
「レーティング……」
「映画とかであるだろ。レクター博士は映画の中にいてもいいけど、実際の街中歩いてたら困るから映画なんだし、規制があるんだよ。怖いとか影響だけじゃなくて、現実と区別がつけられるように」

　……例え方が猟奇的かつとても新八らしい。映画が好きなのも知っているけれど。

「あの……そのたとえで言ったら、なんだけど」
「ん？」

　だから、だけど、そのたとえなら分かるから、だから。

「あの、実際に僕のこと捌いて食べるとか、罠にかけて売りさばくとか」
「やる訳ねえだろ！？　何言ってんだ！？」
「だから！　そういうんじゃないから、べ、べつにジビエとか、見てても気にしない、し……」
「無理すんな、俺が悪いんだか「ちがう！」

　割り込んで叫んだらびっくりしたように新八が動きを止めた。だって違う。

「実際にそういう狩猟があるのは本当だし、僕だっていろいろ食べるし見るし。それが当たり前だと思う。それでも、ウサギだけど沖田ちゃんは友達だし、半獣が愛玩動物で生活道具だった時代は終わったはずだから。少なくとも、僕の中でそれを終わらせてくれたのは新八なんだから、大丈夫だろ？　そっちが僕にとってのほんとなんだから」

　そうじゃない部分があるとしても、だから、むしろその動画とかそういうこと自体よりもそうやって我儘を言ってしまった自分が嫌で、もらったぶんをちゃんと返せていない気がして。新八からいつももらうばかりのような気がして。

「おまえは強いなあ」
「ミッ！？」

　そう言ったらポスっと柔らかいベッドというか巣に新八から押し倒されてそのまま抱きかかえられた。な、なに？

「この間の見合いの時も、言わなくていいって言ったのに、言わないと、言葉にしないとってさ。避けようとばっかりして、守れてねえのは俺の方じゃねえか」
「そうじゃなく、て」
「言わなきゃ分かんねぇよな、そりゃそうだ」

　納得したようにそう言って、抱き留められてそのままだから、思わず腕の中で丸くなる。だって身動き取れないし、なんか、新八の匂いするし……。

「成長かぁ……」
「？」
「沖田も言ってたが、成長せずに足踏みしてるのは俺の方かもな」

　そんなことないし、なんのことだろう？　と思って開きかけた口を塞がれて、そのままゆっくり口付けられた。

 

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斎藤
元捨てウサギの遺伝子操作で作られた半獣。小さい時に雨の中段ボールに入れて捨てられたところを新八に拾われて、永倉家で生活している。新八と家族公認で付き合っている。

永倉
昔拾ったウサギの斎藤と付き合っている。最近お見合い相手がやべえやつだったから断ったがそれもあって斎藤と正式に婚約した。斎藤可愛い以外特に言わない人。

永倉・兄
現パロだから夭逝していない元気なお兄さん。いろいろアクティブ。頭がとてもいい。

沖田
中学・高校・大学と斎藤さんと一緒の自称斎藤さんのお姉さん。「どきなさい！　私はお姉ちゃんですよ！」とか普通に言うから服部君や藤堂君はわりと困っている。

服部・藤堂・原田
斎藤の大学の同期。「顔がFGOのゲーム本編に出ているの私だけでは？」と服部君が言っていた。ゲームとはなんですか？　永倉さんと斎藤の仲がいいのはいいんだけども、片方は社会人だし、構内じゃないならベタベタイチャイチャしていいと思っているなら勘弁してほしいなと思っている。

山南先生
人間も半獣も診察する親切なクリニックの先生。斎藤君が懐いているから予防接種や血液検査が楽でいいね。

土方さん
人間も半獣も手術する外科医。永倉さんと仲が悪い。山南先生が都合でインフルとかの時期にいないと代わりにクリニックに予防接種しにきたりする人。容赦がない。

伊東さん
生命工学や遺伝子工学を大学で教えていたらなんか土方君と山南君に懐いている子が来たんだけど。
ウサギ？　永倉君と付き合ってる？　別にそれはどうでもいいけど僕の前で土方君の話しないでね！