挽歌・ノイトラ・ジルガ(BLEACH)

ノイトラの話。
いろいろあって8月から体調不良で自宅待機なんですけども、本堂の方にも長いこと入っていなくて、長期休暇だー! ということでプレイヤーのいろんな曲を聴いていたら懐かしくなったのでノイトラとネリエルの話。ブリコンの「乱舞のメロディ」聴いていたら変な声出た。神奈さんカッコよくて怖い。

BLEACHの破面編の話ですが、破面の中ではやっぱりこの二人の話が一番好きだなあと思います。なんかね、アレって一見するとノイトラがストレートに嫌な男、女のくせに強いからってネリエルに嫉妬していたっていう話なんだけど、実際にはネリエルがノイトラのことが心配すぎてついて回っていたんですよね。ずっと格上のネリエルに心配されるし、面倒みられるし、かといって格上すぎて勝てる訳もないから、こっちがなんか言っても聞いてもらえないしっていうノイトラの屈折も分かるわーってなりますね。悔しいとかそういうレベル超えるよこんなん。

しかもそれがネリエルの『犠牲』から来るものであったとしたら、それがノイトラの『絶望』を刺激するものであったら、というか死への絶望という諦観から抜け出した結果がノイトラであるなら、それは残酷すぎるというか……。
ノイトラ・ジルガという男にとってのネリエルは実際に自分自身のって考えてしまうなあと思います。
『祈れ』と『謳え』なところにもすごく。そうして聖堂というのだから、望んだものは死への絶望と諦観への救いであって、それを祈ると言うのなら、そこで謳うのは挽歌でしかないように思えてしまうのがこの二人の歪な在り方だと感じます。

という話。

 

その絶望に花を

「ノイトラ、駄目よ」

 駄目、とネリエルは言った。何が駄目なんだ、と言おうとしてそれからその身体に触れようとして自分の手が血に濡れていることに気が付いて躊躇った俺は、だから駄目なのかもしれない、とふと考えた。

「駄目だと言っているの、聞こえない?」

 だが、そう怒ったように言ったネリエルはだがその血のことも気にせずに俺の手に触れる。流れてしまえばもう温度を失った血よりも、彼女の手の温度の方がずっと温かかった。

「怪我をしているわ。もうやめなさい」

 諭すようにネリエルは言う。何をしていたのか思い出せない、とそう考えてから、何かを殺していたような、彼女に挑んだのとは違う何かをしていたのだと思い出す。そうして自分の中では、彼女に挑んで勝とうとすること以外の全てのことがどうでもいいことになっていたことを思い出した。

 ああそうか。もう俺はお前に負けること以外、お前から奪えないこと以外、お前を失わないこと以外に。

「怪我をしたら痛いでしょう? それにもしも死んでしまったらどうするの? 私はあなたが傷つくところは見たくない」

 そうネリエルは言って、当たり前のことのようにその傷を手当てした。

 ああ、そうか。もう俺は俺自身にすら『絶望』できない。

 もう俺は、お前に負けることにしか絶望しない、お前から奪えないことにしか絶望しない、お前を失うことにしか絶望しない。

 それは俺が俺であることの、俺が体現する、俺を構成する『死』の形が『絶望』ならば、俺はいつもお前に絶望し続けている。お前のためにしか俺はもう死ねない。

「もう駄目よ。無理をしてはいけない。だから」

 その言葉が頭のどこかに残っていた。だから、俺は。

 ネリエルさえいなければ、或いは俺は死なないのかもしれないと思った。
 そうじゃない。俺はネリエルさえいれば生きていることが出来て、ネリエルのためだけにその死と絶望を齎せる。

「もしその絶望が死に繋がるのなら」

 更木の刀を受けた時に思った。それさえも、痛みはなくただその刃が触れた感覚だけが残ったのは、あの時からずっと俺が俺自身の死にすら絶望で出来ないからだ。
 それなのに俺は今確かに絶望している。お前から奪ったことに、お前からもう奪えないことに、お前を――永遠に失うことに。
 それが俺に死を齎す絶望なら、俺を殺すのは目の前で体を貫いたこの刃ではないと分かっていた。
 その絶望は、美しいままに自身の中に刻まれて、そうして終わりのない祈りを与え続けた。

「ネリエル、せめて」

 せめてその絶望に、祈ろう。

 その祈りに意味がないとしても、俺が信じることが出来た女神が一人きりならば、お前に祈ろう。
 お前が生きていることを、お前の幸せを。
 もしも許されるのなら、お前の愛を。

「祈れ」

 言葉は続かなかった。血だまりの中で思い出した笑顔に手を伸ばす。

 俺は祈る。絶望と憧憬を齎す貴女へ。

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