四畳半(BSR・政家)

何やってんだという話ですが、突然ですが戦国BASARA3の政家です。(政宗と家康)
pixivでマイピクをやってくださっている七里さんという方がいるんですがその人からリクエストされたから書いた(唐突な理由)。
政家とか形海(青春鉄道)とか庄伊とかなんかこう、突然リクエストが飛んでくるのでとりあえず書いて送るんだけども、今回の話は内容的にpixivに上げる気がないのでここに置いておきます。リクエストしてきた七里さんも別に構わないよとのことだったので。上げるつもりがないのでわりと雑です。雑というか内容がすごく大雑把かつ登場人物全員何がしか言動か行動に難があるので気を付けてください。

御題『お試し期間とかいらない政家』。正確には「『お試し期間とか馬鹿みてぇだな』みたいなことを言う筆頭が見たい」というリクエストだったと思います。ふわっふわしてるし、あやふやすぎて困ったのはありました。
政家転生で大学生です。転生前は3の徳川or伊達赤後です。伊達さんの方が年上で記憶有伊達と記憶無徳川のあれやこれや。ハッピーエンドだと思っている。一章だけちらっと名前のない教授と伊達さんがしゃべってます。多分この世界の史実とBASARA世界に互換性はないです。
糖度は低め……? 低……め? 糖度……? みたいな話です。両思いです(とってつけたように)
あ、根本的に二人とも狂ってます。ていうかこの二人ゲームの時点でいつも狂ってるでしょ(偏見)。
家康が記憶ないために伊達さんのことを名前で呼んでいます。書いていても感じたよく分からない違和感。

私もなんかリクエストしていいとのことだったので「片倉さんと孫市姐さんの話」「三成君と鶴ちゃんの話」って言っておきましたがディストピアだなあ。
御題を投げておけば錬成されるということでなんか無茶苦茶な話なんですけども、これでいいですかね!(私に頼むからこうなるんだよ、という典型的な小説です。ロクでもないので気を付けてくださいね)

 

 

『お試し期間ってことで!』

 笑ったアイツは馬鹿面に拍車がかかった。
 悪かないと思った。
 相当に参っているなと正直に言えば思った。
 だから多分、そんな期間いらないと言えばよかったと思っている。
 試す必要なんてなかった。
 今でもそう思っている。

 ……四百年は前の話である。

 

四畳半の空言

 

 カチカチカチときっかり三回分シャープペンシルの芯を繰り出す。教授の顔を見たままそれをやったから、教授はかなりビビっていた。

「たぶん大丈夫! 今回は修士くらいまでなら残ってくれると思う! 学科でも驚きの常識人だと……!」
「それ逆にすぐいなくなるpatternじゃねえかアンタ少しは考えろよ!!」

 もっと抜本的な! この研究室の方針を変えるとか! と続けたが、それは出来ないと返された。

「だいたい伊達君が優秀過ぎるんだよ! 君が国際会議で表彰されなきゃさすがに方針転換してたよ」

 奇特なこの教授の、今すぐ研究室を畳んで地方の大学かどこかで研究三昧の日々を送りたいが、それなりの実績を上げないと大学から出られないという二律背反によって創設されたこの研究室は、後者の条件だけを満たして今日も教授様とオレのたった二人で成立していたのである。

学科は元々生命工学だった気がする。……気がする。
オレの専門にしている研究はもう生命工学の域を脱している気がしたが、そういうことで世界的に評価を受けているらしい。
 ただ、その内容を説明して、実験の手伝いをさせると大概の学生はカルト教団か何かと勘違いしてこの研究室を見限る傾向にある。つまりここで閑古鳥が鳴いているのはだいたいオレのせいか。

「まあ、とりあえず修士まではお試し期間ってことで我慢してもらおう!」
「……試すtimingなんてないんだぜ」

 世界には、と続けたら、教授は困ったように笑った。

「相変わらずだね」
「まあな」

 世界には、物事を試すtimingやchanceが与えられていない。
 期間も、機会も、オレたちは与えられていない。

「研究内容は記憶の保持と脳の関係」

 え、と男は驚いたような顔をした。まるで普通の研究だと思ったのだろう。

「オレの場合は、四百年くらい前のテメエの記憶が脳のどの部分にあるのか、くらい探させてくれれば満足だ」
「あの……?」
「Are you ready?」

 カチカチカチときっかり三回分繰り出したシャープペンシルの芯はその男の額に突き付けられている。

 今回ばかりは、この研究室にやってきた憐れなカモに期間も機会も与えてやれそうにない。

「待ってたぜ」
「は?」
「テメエにお試し期間なんてふざけた時間はやらない。永遠にだ、トクガワイエヤス」

『お試し期間ってことで!』

 その時ワシは笑っていた気がする。
 天下に決着がついて、平穏な世が来て、だけれど彼に言えたのはそんなふざけた言葉だった。いや、平穏な世が来たからこそ言えたことかもしれなかった。
 試す、とはどういう事だろう。今になってはそう思う。
 互いに憎からず思っていたことは間違いないのだ。
 だが、あの言葉の後にワシも彼も忙殺されて、今に至る。

「助かりはすまいよ」

 死の床で、ふとあの笑みをかけた時に不敵に笑んだ隻眼の竜を、僅か思い出した。

 

 

(あれー!?)

 正直バカみたいな感嘆符が出てきても許されると思う。
 狂った研究室だと知ったのは入るのを決めてから。周りに「豪胆すぎる」と言われてやっと調べたが、それまでは研究室にいるその先輩が世界的に高評価を得ていることしか知らなかった。
 何故か、今ワシはその先輩と大学からすぐのスーパーにいる。

「苦手なもんは?天ぷら以外で」
「えっと、天ぷら以外は、何でも食べられますが」

 どうしてこの人はワシが天ぷらを食べられないことを知っているのだろうとぼんやり思う。それとも、彼の嫌いなものが天ぷらなのだろうか。いや、まず何で夕飯の買い物を一緒にしているのか考えた方が建設的だ。

「Ha! やっぱり天ぷら食えねえのかよ」

 忌々しげに、そうでありながらひどく楽しげに、彼はほうれん草を買い物かごに入れる。ほうれん草、ニンジン、豆腐、油揚げ、卵……家庭的だ。実に家庭的だ。カッターシャツにジーンズというラフな格好でも大学の女子が一様に振り返るような容姿をしている彼は、その容姿に似ずに和食の材料ばかりをかごに入れていく。

「洋食も作れないことはないんだぜ」
「へ!? あ、の?」
「馬鹿面に書いてある」
「すみません」

 読心術でも使えるのだろうか、と先ほどから思っていたが、その謝罪はお気に召さなかったようだった。

「敬語やめろ」
「はい?」
「その馬鹿みたいに薄っぺらい敬語やめろ」
「……驚いたな」
「何が」
「初対面の人間に薄っぺらいと見抜かれたのは初めてだよ」

 何故か、この男の前だと悪態がするする出てくる。
 良くない傾向だと思った。

 

 

「もっと奇抜な研究対象にされるのかと」
「あ?」

 棚にバインダーを戻しながら、家康は苦笑交じりにこちらを振り返った。

「政宗はいつもこんな感じなのか?さすがにこれではこの研究室から人が出ていく意味が分からない」

 拘束時間は確かに長いが、とそいつは続けた。

「三食宿付。珍しいくらいの好物件な研究室じゃないか。あ、それともアパートを無理やり解約させられるからか?」
「いや、解約させたのはテメエが初めてだから安心しろ」

 そう言ったら家康は今度こそ困ったようにオレの前に座る。

「分からないな」
「なにが」
「これじゃあまるで、政宗がワシに執着しているみたいだ」
「そうだと言ったら」

 彼はぼんやりとこちらを見返した。
 そう、オレが執着しているのはお前。
 四百年前のお前に執着できるほどオレは優しくないし可愛くない。

 今ここにそれがあるのに、それを手に入れないで満足できるほど、四百年前の記憶で満足できるほど、俺はお優しくはない。

「四百年は長すぎたんだよ」

 それを試す時間には。

 

 四百年、というのが彼にとっての一つの指針になっている年数なのだということ。
 それがワシの知り得る全てだった。
 研究室で過ごし、何故か夜まで彼の次の会議に向けた資料整理を手伝わされることになって一ヵ月。アパートを解約させられた、と先ほど言ったが、正直どちらだって良かったらしい。四畳半の部屋は研究室の付属品で、彼の隣の部屋はワシが来るまでずっと埋まらないままだった。
 正直言って、アパートの部屋代をやりくりするためにアルバイトを組むくらいなら、こういう類の部屋があった方が良いとずっと思っていた。寮とかそういうもの。

『好きにしたらいい』

 ひょいっと鍵を投げ寄越された時に感じたのは、よく分からない感覚だった。束縛なのに放任、というか。彼がワシをどうしたいのか、よく分からなかった。
 だが少なくとも、この研究室に入る前に聞かされていた「マッドサイエンティスト」はそこにはいなかった。
 だいたい初日から可笑しかったのだ。
 買い物に行けば好き嫌いを言い当てられるし、敬語は薄っぺらいと言われる。

 敬語を使わないこと。
 互いに名前で呼ぶこと。

 この二点を念押しするように約束させられられたこと以外、だけれど可笑しかった初日以来別になにも起こってはいない。……そういえば、自分がやっている研究の内容にも政宗どころか担当教官からも何も言われないっていうのもどうかと思うんだが。

「政宗は、四百年は長すぎたと言うが、それが人間の脳や意識が耐えうる限界点だと考えているのか」
「ふーん。後輩の知的欲求にこたえるのも先輩の役目かね」
「ワシはふざけてないぞ」
「ハイハイ。続けてみな」
「政宗は、何かにつけて四百年と言うだろう? それが集合的無意識や潜在的かつ古態的な意識や記憶の限界だと考えているのか? だとしたらフロイトやユングへの反証でも出すつもりか?」

 口にしてから彼の研究はそういった哲学的な臨床ではなく、もっと化学的な脳細胞やそういった記憶の、と思ったのに何故か詳しい内容が思い出せない。集合的無意識機? なぜそんな不確かなことを口走った? フロイト? 違う。もっと実際の、精神ではなく解剖学としての何かがあった筈なのに。だがもし、その仮定を前提に政宗が研究を進めているとすればほとんど嫌味に聞こえる内容だろう。だけれど、彼は言葉を飾りたてることや、心にもないことを口にするのを嫌ったから、どうしても言葉はきつくなる。

(いや)

 もっと上手い言葉の使い方を知っていた。
 そうだというのに、どうしてかこの男の前では子供のようにどうでもいい言葉すら強くなる。

「違うな」
「へえ」
「オレが求めている四百年前の記憶はそういう不定形のモノじゃない」
「じゃあそれは定形の記憶?」
「Yes! 共有できる人間以外にとって全く理解できない、だが定形の記憶だ」

 それにどんな意味がある?
 彼の研究に?
 それとも彼の求めるものに?

「意味、あるのか?」

 その研究、と思わず口をついて言ってしまったところでワシはバッと口許に手をやった。いくらなんでもこれはひどい。

「今のはなかったことにしてくれ!」

 なんと弁明しようか、どんなふうに怒り狂うのか、と冷や汗をかきながら言ったら、政宗はその隻眼を緩めて大笑した。

「あー、クソ! 面白すぎる! やっぱりお試し期間なんてふざけた時間はいらねえんだよ。こんなこと、分かってた」
「政宗?」
「特別に、教えてやるよ」

 一頻り笑って、ワシには分からないことを言ってから、彼はその一つきりの目でワシを捉えた。

「オレの今までの研究成果はただの副産物だ。確かに、お前の言う通り、この研究には何の意味もない。この世で」

 そこで彼は言葉を切った。酷く楽しそうだった。

「この世で、たった二人の人間以外にとっては、何の意味もない」

隻眼の男が笑った。

 

 

「政宗は彼女とかいないのか」
「それ、そっくりそのままお前に返していいか」

 夏。台所と呼ぶのもはばかられるただのガス台でナスを焼いていたら後ろから家康に訳の分からんことを言われた。そんな上等なものがいたらこんなところでお前と二人で飯なんぞ食わんわ。

「政宗は料理上手いからなあ」
「どういう意味だ」
「いや、相手の子も気が引けるかもなあって」
「便利か不便かって考えたことあるか」
「独り身の鉄則? それとも四百年?」
「両方」

 四月からの四ヶ月ほどを共に過ごして、記憶のない家康というものにも慣れた。
 出来上がった夕飯をちゃぶ台に並べていく。オレはコイツの嫁か何かか。

「両方?」
「そう」

 ことん、と茶碗が音を立てる。

「どういう意味だ」
「自分から聞いておきながら御大層なことで」

 嫌味でもって返せば家康は困ったように笑った。四百年、という問い掛けは、彼の中で定型句になりつつある。
 笑う彼に、少しだけ意地の悪い気分になった。そう、ほんの少しだけ。
 ほんの少しだけ、その過去について話したら、彼はどうなるだろうと思った。

 それは純粋な興味。

 ほとんど学術的な興味と大差がない興味。
 それがオレ達を動かす全てだとしても。

「飯作れると便利なんだよ。戦でいちいち飯のこと考えんのは面倒くせえ。それくらいならオレは自分でやるね」

 そう。
 だからオレはこの結果を知っていた。
 だからオレはこの結果を知らなかった。
 どちらに振り切れたとしても、この結果をオレは知っていた。

 

 

『飯作れると便利なんだよ。戦でいちいち飯のこと考えんのは面倒くせえ。それくらいならオレは自分でやるね』

 眼前の男が言った言葉なのか、記憶の中の男が言った言葉なのか、瞬時には分からなかった。
 記憶の中の男はずいぶん政宗に似ているな、と思った。

「これ、何かの実験か?」
「Why?」
「お前と同じ顔をした男が、同じことを言っていたような記憶があるんだが」

 思ったことをそのまま言ってしまうと、ずきりと頭が痛んだ。
 記憶。政宗の専門分野だ。
 政宗?
 それは誰だ?
 眼前の男は、透徹しきった視線でこちらを見ている。微塵も疑念の混じらぬ視線がこちらを見ていた。

「そうだな」
「……え?」
「四百年くらい前に、同じようなことをお前に言った記憶がある」

 バチン、と‘記憶’が火花を散らした。

 

 

 

「気分はどうだ、公方様」
「最悪に近い」
「正直で結構」
「こんなものか」
「思い出した時はオレもぶっ倒れたからまあ、そんなもんじゃねえの?」
「独眼竜が倒れるなら仕方ないな」

 夏の風がそよいで部屋に入る。結局家康が目を覚ましたのは夜中の二時だった。そうだと言うのにまだ暑い。

「確かにお試し期間と言ったのはワシだが」
「あの馬鹿面は今思い出しても忌々しいな」

 くっと喉で笑ったら、家康は困ったように頬を掻いた。

「これでは結局、今度は独眼竜がお試し期間を準備したことにならないか?」

 あんなに嫌っていたくせに、と家康はきまり悪そうに言った。

「分かっただろ。試す期間も、機会もいらないってな」
「本当に、相変わらず凶暴な男だ」

 よく考えてもみろ。この四ヶ月テメエに真っ当な時間があったものかどうか。

「やっぱりこの研究室狂ってるなあ」

 いっそ長閑に、その狂った研究室に付属している四畳半の部屋で家康は言った。

「こんな記憶一つに、執着する男が二人とは」

 それにオレは低く笑った。

「今更過ぎて可笑しくもない」

 

 

 

 

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多分伊達さんはどのタイミングでも記憶を思い出させることは出来ただろうなというあれ。
最後に「こんな記憶一つに執着する」と家康が言っている通りなので、思い出したら互いにどうでも良くなるかもしれませんね。実体よりも記憶の話をしている狂った伊達さんの話でした。

BGM:東京事変「復讐」

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