館側から見た花京院の話

追記から小話3つ。少し血が出るのと相変わらず花京院が死にます。

長い前置き
スタクルメンバーからの話は二種類書いたけれどもこっちも書かないと平等じゃない気がしたのと、以前ちらっと書きましたがンドゥールの在り方が一番花京院には近いと思っているのもあって書いていました。
まあヴァニラ・アイスについては以前に書いたようなもんなんですけども、ンドゥールの視点はもうちょっと書きたいのと、ヴァニラ以上に狂っているのがンドゥールだと思っているので……という。DIOの一番の狂信者としてヴァニラが挙げられやすいけれど、私としては正直一番理解できなかったのがンドゥールに敬意を表した承太郎でした。敬意ってか理解ってかね。ンドゥール自体は理解できるけれどもンドゥールの自害に敬意を表する承太郎は理解したくない、というか。敬意というよりも「そこまで無垢に人を信奉させるDIOという存在」を感じたのだろうし、そうして結局彼以上にDIOを敬っている者には承太郎は最後まで出会っていないからあの時点でもその後でも正しいと言えば正しいのですが。ヴァニラは違うんだよね、狂信者であって信奉者ではないから、おそらく承太郎の目にはンドゥールのようには映らなかったろうから、たぶん最後まで出会わなかった。……一応初手で出会ってるけども(花京院とかいうアホの子)。そうしてンドゥールの在り方は理解できるしいいと思うけれども、それは何か違うような、とずっと思っていましたが、その違和感はたぶん花京院に感じているものと同じなんだろうなあーという。ンドゥールの在り方が悪いという訳ではなくて、それは本当に単純な恐怖でしかないから、と。ンドゥールと花京院のDIOに対する感情は実際理解していいものではないんじゃないかなー、人間だからある感情だけども。3部の中でこういう人間だからこその非人間的な(ジョジョにおける人間賛歌に相当するけれども良くない)歪みを持っているのはこの二人だけな気がする。

深い意味はないけど(大嘘)、アニメ版の「花京院くぅん?」の放送事故みたいなアレの時のことを思い出したので薔薇の写真置いておきますね。私が庭で育てている薔薇なんだ、花京院君、恐れることはないんだよ、友達になろう? ……花京院に対して愉悦と悪意を感じる編集だったと思うし、2014年かーごちうさとかやってたころかーって思うと本当に「大丈夫じゃない、大問題だ」と思いますね。可哀想だよォ!愉悦しか感じないよォ!

あと昨日ちらっと書いた話も書いたのですが「肉体の傷」と「精神の傷」よりももっと原始的というか太古からある傷として「生身の傷」というものを措定して書いた話もあります。太古とかいうと大袈裟ですが、生物が存在してしまうとやってしまう傷、というやつですねー、と何かに書いてあった。ダンマパダにもタナハにも書いてあるからそうなんじゃないですか(実際にそれらしきこと書いてあるので嘘はついていませんが適当なことは言っています)。
追記:誤解を招きそうなので昨日と同じことを繰り返し書いておくのですが、「肉体」「精神」「生身の身体」を別個のものとしてそれぞれ傷つけられるとして(これはフロイトとかラカンの考え方)、という前提で書いていますが、外傷はどれも痛いしストレスになるので駄目だというのは分かっているのと、比較衡量しがたいものなので、怪我も精神的外傷も、もちろん生身の傷も全部だめですからね。なんか話の中で花京院が変なこと言ってるけども。

とにかくあんまりにもインドアだったからって海外旅行した結果、変な友達が出来ちゃった花京院典明君の話です。感想ください(冗談ですすみませんすみませんすみません、ジョジョのいろいろに飢えています、早くページ作ってサーチに登録します)。

 

見えない世界の大地の神(ンドゥール)

「ああ、花京院か」

 この足音、このどうにも神経質そうな動き。妙に懐かしい。館の中でも、外に出ても、隠しているつもりだったのだろうが、いつもいつも苛立っているように見せて、見捨てられるのに怯えているだけだったその音。

「『法皇の緑』は出していないのか。そうか、舐められたものだな……」

 それもどうにも煩わしい。それなら早いところ潰してしまおう。隣は……ポルナレフと言ったか。あまり関わったことはないな。
 そう思って指先を操り、花京院の顔面、その両の目をしっかりと縦断するように切込を入れる。

「わたしのように目を喪ってくれ。ここで殺すのは少し癪だ。君は……お前はわたしと同じがいい。自分で死ぬかそうでなければあの方に殺されて、絶望の中で逝ってほしい」

 裏切りへの憎しみ? その行いへの償い?

――違う。

「あの方に見捨てられ、殺されることだけは怖い。そう思っていたんじゃあないのか、花京院典明?」

 君はわたしと同じだと思っていたんだが、さて、どこまでいけるか見ものだな。

「恐怖を、乗り越える?」

 見えない世界の中でぼんやりと考える。
 ンドゥールに僕を殺す気はなかった。そうだ、あの時彼に気が付いてなかったのではない。気付いていなかったとしても、多分どこかで分かっていた。それでも僕は彼のスタンドも能力も知らなかった。だが、彼のことは知っていた。

『恐怖? そんなものはわたしにはなかったな。他人を殺す恐怖も、それで誰かに咎められることも怖くはなかった』

 そもそも、と目が見えない筈なのにこちらを見据えた彼は言った。

『自分自身の力に特段恐怖したことがなかったんだ。DIO様に出会うまで。だが出会ってしまってからは違った。この力を失うことが怖いというのも副次的なものだ。この力がなくなれば、あの方に必要とされなくなる。今はただそれが怖い。それがたぶん、わたしがこの世で初めて感じた恐怖かな』
『意味が、分かりません』
『意味か。君はDIO様が怖いという。だがわたしは自分自身になんの価値も見出していなかったのに、それを見つけてくださった、必要としてくださったDIO様に見捨てられること……いや、必要とされなくなることだけは怖いんだ。それを恐怖と呼ぶのだと知った』

 静かな彼の言葉に吐き気がした。胃液がせり上がる感覚と、背中が粟立つ冷たさ。だがそれは嫌悪から来る吐き気ではない。むしろそれは、純粋な恐怖から来る、純粋な怖気から来る吐き気だ。

『同じだろう? もしも初めてスタンドという能力を認められ、初めて友達と認められ、初めて安心というものを手に入れたなら、君はあの方に見捨てられることをただ恐怖している』

 男は笑った。静かに、だがどこか悲しむように。

「ああ、そうか。だからか」

 あの時、僕の目を裂いたのはンドゥールだったと後になって聞いた。9栄神のことと自分の名、その情報だけを言い、それ以上は『DIOの不利益になる』と自害したンドゥールに、あの承太郎でさえ感嘆した、と聞いたが、それを些かも不思議に思わない自分自身がどうにも薄情に思えて、まだ包帯に覆われ、外界から隔絶された目に手をやる。

「ンドゥール、あなたは恐怖を乗り越えた訳じゃあない」

 あなたは恐怖のあまり死を選んだ。

「あの方を喪う恐怖のあまり、死を選んだ。それならば僕にも選べと言うのだろうね、あの時語ったように」

 だからこの目に刻み付けたのが、致命傷ではなくてこれなのか。
 あなたのように見えない世界で、僕は僕自身の恐怖の源泉に向き合うしかないのだろうか。
 僕は僕の孤独が怖い。僕は僕自身が怖い。僕は僕の『友達』が怖かった訳ではない。だから。

「DIO、お前は……あなたは……僕の……私の――」

だから、恐怖を乗り越えるなんて、きっと違う。

「だってあなたは、私の恐怖の源泉なんかじゃあないですよ、別に」

無垢な魂(テレンス・T・ダービー)

「『無垢な人の誠実は、その人を導き、裏切り者の邪は彼自身の暴力に滅ぼされる。
 貴重な品も憤怒の日には益がなく、義こそが人を死から救う。
 無垢な人の誠実は、その正しさによって彼の道を平らにし、悪者はその悪事によって倒される』」
「はい?」

 そう言ってみれば、ぽかんとしたように問いかけてきた花京院という青年の前に紅茶を置く。

「箴言の十一章あたりでしたかねぇ。ああ、聖書です。あなたはブッティストでしょうから分からないですよね。ま、私も詳しくはないですけど確かキリスト教です。あれ? キリスト教? でもこれ旧約聖書では? まあなんでもいいですけど、昔のガールフレンドが熱心に教えてくれたもので、あなたを見ていて思い出したんですよ」

 そう言ったら彼は可笑しそうに笑った。DIO様は鉄面皮だの面白みがないだのと言うが、こうやって笑うところを見ると案外年相応のガキに見えるからこそ、先程のようなことを思い出すのだろう、と思うのも気のせいではないだろうし、まあDIO様が酷すぎるから笑わないのでは? としか思えないんですけどね。

「ダービーはキリスト教徒ではないのですか?」
「私ですか? 生まれは英語圏ですからね、まあ文化的キリスト教徒といったところでしょうが、あまり熱心に何かを信仰したことはなかったな」
「DIO様以外は、ということ?」
「あなた、ほんっとうに面白いくらいあの方のこと信奉してますよね」

 そう言ったらまた笑ったが、嬉しそうなのもそれはそれでどうなのだろう、と思いつつもまあ嘘ではないし、と私も紅茶を飲めばティーカップの縁をなぞって彼は言う。

「でも、そのガールフレンドも人形にしてしまったのかな……ああいや、人形にしたのなら今も大好きなのだろうから、今はもう別れた人ですか?」
「……私が言うのもなんですけども、あなたって下衆野郎とかクズ野郎って女の子に言われたことあるでしょう?」
「……彼女いたことない」
「うわぁ……」

 慰めの言葉も出てこないし、アトゥム神がいなくても嘘をついていないことはすぐに分かるくらいには正直に言われて、何だコイツ、と思ったがまあ分かってはいたことだし、と思い直してもう一口紅茶を飲む。

「ま、あなたの言う通り今はいませんよ。一晩だけで後腐れなく別れた程度、というか人形にしようと思うほどの魂の相手でもなかった……んでしょうかねぇ?」
「分からないんですか?」
「んー、まあ。今になってから考えると言われたこととか覚えてるんで、印象には残っている相手だったんだろうなあと思った、というだけです。後になってから「あー、あの時寝たコそういやあんなだったなー」とかふと思い出す、みたいなのありません?」
「……本当にそういう経験がないので」
「チェリー……」
「はい!?」
「こんな話題で目を輝かせないでください、気持ちが悪い」

 比喩が好物だったからか急に喰いついてきた顔をとりあえず手で払って、それからまた考える。
 ……彼女は確かに、私に熱心にあの言葉を伝えようとした。それは信仰ではなく、本当にまるで歌や詩を聴かせるように。
 そのソロモン王が作ったという歌の通りに世界が回ればいいと、メルヘンな世界を唄うように。

「どうしてですかねぇ……ファンタジーやメルヘン、とは言いません。そういう人間や生き方も少なからずあるだろう。私は確かにそういう魂が好きだ。それは私自身がそうではないからでしょう」

 不思議そうに首を傾げたその青年……いや、少年は、確かにその詩の通りの存在のようだと思った。

「ま、ファンタジーじゃあないんですから、そう上手く運びはしないでしょうけれども」

「最初の対戦相手には花京院を希望します」

 笑って言ってやった。この少年は『絶対に』断らないのを知っていたからだ。
 私の提案に騒ぎ出すジョースター家のジョセフと承太郎を余所に、サングラスの下の目は見えないが、彼が私の仕掛けたこの賭けを断るはずがない、とあの日に唄った詩を小さく口ずさむ。

「『無垢な人の誠実は、その人を導き、裏切り者の邪は彼自身の暴力に滅ぼされる。
 貴重な品も憤怒の日には益がなく、義こそが人を死から救う。
 無垢な人の誠実は、その正しさによって彼の道を平らにし、悪者はその悪事によって倒される』」

 

 無垢な誠実があるように、無垢な悪がある。
 無垢な愛があるように、無垢な憎悪がある。
 貴様が邪に怒るのならば、私は裏切りに憤怒しよう。
 正邪など、正義も邪悪も、立場によって入れ替わる。

 絶対的なものを持たないからこそ、私は『信仰』というものを持たなかった。
 だが、貴様は絶対的なものを感じたからあの方を信奉したのに、その道を正しくないと倒そうとするのなら、せめてその道と魂くらいは示してみせたらいい。

 

「魂を賭けよう」
「グッド!」

 そうでなくては。

「私は以前から、あなたの魂をコレクションしておきたいと思っていたんです」

 あの一晩限りのガールフレンドよりはずっと、ね。

(注釈:『』内の文章はタナハ・カトビームの1・箴言第11章の3節から5節、訳者:管理人)

痛い(DIO)

「なあ、花京院」
「はい?」

 動きの少ない表情で、壁一面の高い書棚から本を選んでいた青年に、鉄面皮、とふと思った。17歳の東洋人。こちらを見ただけで恐怖してゲロを吐くくらいには繊細なくせに、それを隠すのは単純明快に『トモダチにそんな態度は良くないから』なんていう。それにしたって主従関係とか友達とかよく分からなくなっているのはもう馬鹿としか言いようがないんだが。

「真実から暴力的な振る舞いとは何だと思う?」
「はあ……?」

 不思議そうに首をかしげてから彼はふと床を見る。そこにあったのは『食糧』の死体だが、それを見ても特段心が動かないのは、これが『暴力的』と感じないからだろう。

「少なくとも、食事は暴力的な振る舞いではありませんね。殺人は良くないとは思いますが」

 淡々と言った男のこれは、肉の芽云々ではなく本心だろう。そう思うとコイツは案外『暴力』の意味を履き違えていないのかもしれない。

「肉体の傷はどうせ癒えます。死んだとしたらまあ、やりすぎたということでしょうが外傷は癒えるものです。そうして精神の傷は相手を特定しなければ与えることが出来ません。少なくとも特定の相手を意識しなければ傷つけられない」

 そう青年は静かに言う。その目を見て、顎を掬って、彼が言うようにまずは肉体に当たる首に軽く爪で傷をつけてみたが、やはり痛みでも彼は顔を崩しはしない。

「そうですね、この傷は癒えます。DIO様が私の血を必要となさるなら差し上げますし、それで死ぬとしても構いません」
「では、精神は?」
「そちらもだいたい変わりません。DIO様にお前なんて友達じゃないとか、失せろとか言われたら私は傷つきますが、少なくともそれで傷つくのは私がDIO様に認識されているからで、私がDIO様を大切に思っているから、という前段がなければ成立しない傷ですので、その事実だけで充分です」
「欲のない男だ」
「そうでしょうか? かなり欲深いと思いますよ」

 そこで今日初めて、その表情の少ない花京院の顔に薄く笑みが生まれた。
 ……ああ、そうだな。欲深すぎる。ありもしない、ないものねだりが深すぎる。

「だから、真実暴力的な振る舞いというのは何の脈絡もなく相手を傷つけることなんだよ、花京院」

 時の止まった『世界』。聞こえてはいないと知っていながら呟いた相手に私は興味がないのだから。

「アットランダムに、特段意味もなく、脈絡なく与えられる傷というのは肉体よりも精神よりももっと深くに作用する。誰も何も認識しないままに、意味もなく振るわれるそれこそが真実から暴力的な振る舞いだと私は考える」

 そうして。

「それをお前に与えることに、私は特段何も思わないワケだ」

 その『友人』だったらしい何かの腹を貫いて、鮮血と内臓が飛び散ったそこに、だが何も思わないどころか、むしろ以前「差し上げる」とか言われたその血は不味そうだと思った。

 エメラルド・スプラッシュで時計を貫いて、時を止めて、きっとそれがジョースターさんに伝わったと思って、それから。

 本気で初めて思った。今から死ぬという時になって、本当に初めて感じた。
 ……僕は正真正銘の馬鹿なんだろうな。今までの旅でも怪我なんていくらでもしたし、死にかけたこともあるのに一度も感じなかったそれを、今初めて感じた。

「痛い」

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