遊ぼうか


「んっ、あっ」
「こーら」

 斎藤のそれに触れようとした沖田の手を、空いている手で止めて彼はさらに深く口づけた。呼吸を奪われて、だらりと手は落ちてしまう。いや、呼吸だけではない。
 ずぷ、と男のもう片方の骨ばった指がぬかるみに挿し入れられていて、浅く挿入を繰り返すそれが意識をぼうっとさせた。

「今日は本番ナシって言ったでしょ」
「やっ、だぁ」
「たまにはいいじゃない」

 部屋の狭いベッドで先程から始まった遊びのようなそれ。

『今日は本番ナシで何回イけるか試す?』
『え?』
『キスと指だけ』

 へらっと男はいつも通りに笑った。沖田はゾクゾクと背中に何かが走るのを感じる。この目に逆らえない。ぎらついた目。
 互いに非番で、昔と違って電子ロックのカルデアで彼が試したがる様々なセックスの中でも、これは相当にマニアックな内容だった。

「いいよね?」

 男は笑った。





 正面に座らされて、ぐち、と秘所に指が入れられる。本物よりもずっと細いのに、それはキスで融けた思考回路に直接快楽を叩きこんだ。

「ひあっ、うぁっ」
「あ、これも追加ね。イったらちゃんと言うんだよ?いつもみたいに。あとで何回イけたか確認するから」
「むり、ですっうあっ!」
「あれ、イっちゃった?早いなぁ、もう一回目?」
「ちがっ、だって、ゆび、へん」

 そう言ったら斎藤はべろりと沖田の唇を舐めて無理やりそこをこじ開ける。

「んっ」
「ちゃんと言いな」

 唇を離せばつうと唾液が伝って、それにとろんとした顔で彼女は言った。

「や、いっちゃい、ました」
「一回目ね」
 くすっと男は笑う。キスと指だけで、なんて言ったけれど、いつも彼女が前戯だけで何度も達しているのを知っているから試したくなった、というのが本音だ。だけれど今日は本当に口づけと指を入れるだけで彼女はもうすでにとろとろとした目をしていて、それが余計に欲を煽る。

「指好き?」
「んぁっ、す、き」
「そう、正直でいいね」

 そう言って彼はもう一度軽く口づける。リップ音を殊更にさせて羞恥を煽ると、ぐちゅ、とまた指を挿し入れる。

「ひあっ!だめっ、です!」
「なんで?ここ好きでしょ?」

 彼女の感じる場所なんてもう十分知っているから、クイっと指を曲げてそこを押してはなぶる。それに彼女は、いつもと違うゆっくりとした快楽にびくびくと震えた。

「やぁ、んっ、だめ、だめ」
「二回目、かな?」
「にかいめ、だから、いじわる、しないで」

 くたり、と彼に寄りかかって、彼女は達したことを告げる。正直に言わないと何もしないのも教え込んだ甲斐があったな、なんて意地悪く彼は思った。

「じゃあ三回目行ってみようか」
「や、もうやだぁ」

 泣き出しそうな声で言って、ぐりぐりと彼女は彼の肩口に額を押し当てる。

「なんで?気持ちいいでしょ?」

 笑って言った男のそれに、はしたないと知りながらスラックスの上から自身のそこを当てようとしたら、今度は乱暴にぐちゃ、と指を入れられて止められる。

「はうっ、ひゃっ」
「こらこら、今日はやらないってば。指で気持ちよくなんの」

 そう言って彼は骨ばった指でぐり、と彼女の感じる場所に緩い快楽を与える。

「うぁっ、も、やだ、ほんとに、だめですっ」
「ダメってわりに、さ」
「きゃうっ」

 びくっとまた彼女の体が跳ねる。何度も執拗になぶられたそこは軽いそれにすらもう強い快楽を得てしまう。

「はい三回目。どんだけ感度いいの?あ、僕が言っちゃった。ダメダメ。ほら」

 子供に言い聞かせるように言って、口付ける。そうしたら、とろりとした顔で沖田は言った。

「さんかい、め」
「えらいえらい」

 ぽすぽすと頭を撫でて、斎藤が笑ったら、彼女はもう自分が何をやっているのか分からなくなってきて、だけれど熱が欲しくて彼のそこに手を伸ばそうとする。

「んっ、あっ」
「こーら」

 斎藤のそれに触れようとした沖田の手を、空いている手で止めて彼はさらに深く口づけた。呼吸を奪われて、だらりと手は落ちてしまう。いや、呼吸だけではない。ずぶ、とまた指が挿し入れられて、今度は余った指が陰核をなぞった。

「ひゃうっ、だめ、だめぇ」
「ここ好きでしょ?ご褒美」
「やだ、そんな、いじわる」
「なんで?ご褒美好きでしょ?」

 そう言って指をぐちゅぐちゅと淫らに動かしながら陰核をなぶる。そうしたらあっけなく彼女はくたりとまた彼にもたれかかった。

「はい、それで?」
「よん、かい、め、です」
「うーん、よく頑張りました。あと何回行けるかな?」
「も、やだぁ」

 まだ中に指が入った状態で、沖田はいやいやと頭を振る。

「どうして、こんな、いじわるするんですかぁ」
「意地悪っていうか楽しいことしよって言ってるだけなんだけどなぁ?沖田ちゃんは気持ちいいし、僕は楽しいし」

 へらり、と男は笑ってまた指を動かそうとするから、彼女は逃げるように腰を引いた。

「ひゃうっ」
「自分から抜いて気持ちくなるとか、エロいね?」

 ずるっと抜けた指と、あえて止めなかった腰に一気に引き抜かれる形になったそれに沖田はまた体が弛緩するのを感じた。

「はい、言うことは?」
「ご、かいめ」

 はあと、上気した顔と声で言ったそれは、もう言わなくてもいいようなそれなのに、素直に言ったのは彼に教え込まれているからか。そうして、だけれどもう耐えられなくて、彼女は彼の肩に手を付いて、顔を覗き込むようにして口づけた。

「どうしたの」

 それに笑った男に、彼女は何を言えばいいのか分からなくて、泣き出しそうに言う。

「だって、いじわる、こんな、ことばっかり」
「そうだな、じゃあね、可愛くおねだりできたらしてあげる」

 それに沖田は今度こそ本当にぽろぽろと泣きだした。

「むり、です」
「なんで?いつもみたいに、ちゃーんとできたらしてあげるんだよ?それとも指の方が好き?」

 もう指の緩い快楽は嫌で、だけれど彼に教え込まれたねだり方なんて恥ずかしくて、とぐるぐる思考は回る。でももう耐えられない、と思って、彼女は膝立ちになって緩く足を開いた。

「も、我慢できないから、挿れて?」
「もっと」
「……え?」
「もっと可愛く。いや、可愛いけどさ。可愛くってかエロく?」

 それに沖田はうぁと声にならない悲鳴を上げる。どうやったらいいかなんて分からない。いつも彼にされるがままにされていて、今日だって、と思いながらも、思考はどんどん融けていく。だってその濡れていやらしく愛液をこぼす秘所を彼がじっと見ているから。それから隠すように、だけれど自分でも熱を煽っていて、何をやっているのか分からないような状態で、彼女はそこを軽く広げるように自分の指で触れた。その刺激さえ、熱い。

「ここが、熱くて、ゆびじゃ、も、やだから、さいとうさんの、ほしい、です」
「えっろ。好きだよ、そういうの」

 猟奇的に笑って、後から彼女の痴態で自分でやろうと思っていた怒張を彼はスラックスから取り出す。

「じゃあ、可愛くおねだりできた沖田ちゃんにはご褒美あげる」
「ひゃうっ!」

 一気に彼女のそこを貫いて、奥までそれをねじ込む。指だけでとろとろになったそこは、いやらしく彼のそれに絡みついた。

「欲しかったんだ。すっげー食いついてくる」
「ちがっあっ、だめっ」
「だめ、じゃないでしょ?ちゃんと言えって」
「きもち、い」
「可愛い」

 そう言って、彼は口づける。呼吸を奪うようなそれではなく、軽い口づけ。それすら欲を煽った。

「奥、出していい?」
「やあっ、も、さいとうさん、の、好きに、して」

 こつん、と硬くなったそれで最奥を軽くたたくと、下がってきたそれに沖田はいやいやとかぶりを振る。自分の体がどんどん作り変えられていくのいつも感じていたから。

「じゃあお言葉に甘えて」
「やっ、だめ、やぁぁ!」

 白濁を注ぎ入れられて、散々なぶられた彼女は悲鳴に似た嬌声を上げて意識を失った。





「お目覚めですか?」
「……変態」
「どっちがよ?指で五回、本番一発でイっちゃう淫乱さん?」

 にこりと男は笑った。敵わないと思って、彼女は彼の胸板に顔を埋めて赤らんだそれを隠した。