の台の半座を分つ


 適当に吐き出した液体は、鉄錆の味をしていた。

「沖田ァ、そっちは」
「片付きましたけど」

 平然と言った女も、適当に口許を拭って言った。

「蕎麦食って帰ろうぜ、疲れた」

 なんで今日に限って俺たち二人だけなんだよ、と思って言ったら、彼女は軽く笑った。

「お蕎麦、不味くなりますよ。そんなに口の中に血があるんじゃ」

 そう言ってふと目元を拭われる。ああ、視界も血が滲んでいたのか、とその段になって気が付いた。

「そーね、店に入れる格好じゃないわ」
「そういうことです」

 そう言って、その女性はすたすたと帰路に着いた。





「前から思っていたんだが」
「なんだ」
「あの二人は―――」

 山南の言葉に俺はため息をつく。仕方のないことだろうと言うように。それは間違っていたかもしれないが、もう変えることはできないのだと。

「いや、別段、君を責めるつもりはない」
「そりゃどーも」
「ただ、思うだけだよ」
「悪鬼羅刹か、あのガキどもが」
「芹沢さんが言っていただろう、子供だと。それもそうだと少し思っただけでね」
「今更、引き返せねぇだろ」

 そう言えば、山南は笑った。

「蓮の台の半座を分つ」
「あ?」
「良くも悪くも、ね」





 結局のところ、自分が子供だったとして、自分たちが子供だったとして、と僕はぼんやりと考えた。

「沖田ちゃん、蕎麦食べない」
「なんです、急に。今日は日替わり定食が唐揚げなので沖田さんはそちらにしますよ!」

 きっぱりと言われて、僕はこのカルデアという奇妙極まりない場所で、この一番隊隊長と並んでいる自分を思った。

「結局さ」
「はい?」

 お前の剣に、或いは俺の剣に、合わせられる相手が互いしかいなかったとして。
 それが狭隘な世界の出来事だったとして。
 それが子供の遊びだったとして。

「それでも結局、僕は三番隊隊長なんだね」
「その心は?」
「いろいろあるじゃん、名前とか、役職とか」

 自分でも何を言いたいのか分からなかったけれど、それでももしサーヴァントがその全盛期で召喚されるというのが事実ならば、自分の全盛期がその子供の頃だというのなら。

「……昔、山南さんに言われたんですよ」
「え?」
「蓮の台の半座を分かつって」
「珍しく難しいこと言うのね」
「からかわなくて結構ですよ」

 そう言って彼女は唐揚げを一つ摘まんで食べた。

「きっと、そんなに綺麗な意味ではないでしょうから」

 どこか可笑しそうに笑って、沖田ちゃんは言った。

「人斬りの座る台はどんなもんですかねぇ」
「しかも子供が座るのですから」

 思わず僕も笑う。それも、そうだ。
 所詮僕らは、良くも悪くも、一蓮托生、背中を預けてここまで来た。
 それが人理に刻まれたというのなら。

「別にそれでもいいけどさ」

 せいぜい働きますよ、都の守護が「御役目」ですから。
 とっとと飯でも食いますか。

「ああ、蕎麦がのびる」

 ああ、傍が延びる。