「まずい、沖田ちゃんが女に見える」
「は?アイツは最初から女だが……」
土方は嫌な予感がしながら茶請けのたくあんを食べた。早く食べ終わらせて午後の仕事があるか知らないが取り掛かろう、と。
「口吸いして、押し倒して、そういうことしてもう僕なしじゃいられないってやりたいです」
机に突っ伏して斎藤が言ったから、土方は嫌な予感の方向性が違っていたことを思い、とりあえず席を立つことはやめた。追い詰められ過ぎである。
「どういう経緯か聞いてもいいか」
「沖田ちゃんが女性日本サーヴァントの会に入ってて」
そんなのあったのか、と思いながらとりあえずうなずく。
「聞いちゃったんですよ、好みの感触はーとかそういう女子トーク」
「……ああ」
「『斎藤さんの髪の毛ってもふもふなんですよ!』って言ってて」
机に突っ伏したままそのもふもふの短い髪を斎藤はかき混ぜた。
「あ、ヤバイこいつ僕が男だって分かってないしその会のその話の趣旨も理解してないって思ったら、急に女に見えてきて」
ぐしゃぐしゃとかき混ぜたその髪を触って、「男の髪」で遊んでいるそこから一歩も進んでいない沖田に女を見る、というのは分からないではないが、こう、なんというかこれがどうしてこうなる、と思いながら土方は聞いていた。悪いのは八割沖田だな、珍しく、と思いながら。
「分からせたい、ぐちゃぐちゃにしておまえが触ってるのは男なんだよって、男は狼なんだよって、教育的指導」
「まあ、それは、な」
珍しく歯切れ悪く、しかし土方は肯定してしまう。まあ、分からなくもないな、と男だから分かることだった。
「ちょっと教育って失礼ですね!斎藤さんが男だってくらい見れば分かりますよ!今日ももふもふさせてください!」
そこに明るい声が掛かる。頼む、やめてくれ、と土方は思ったが、時すでに遅し、というやつだった。
「分かってない」
「え」
「部屋来い。教えてやる」
斎藤が真っ直ぐに沖田を見て言った。土方は本当に珍しくそれを傍観していた。
「やったー!今日は髪もふもふし放題ですね!」
「おまえが悪ぃよ、さすがにここまで来ると」
ぽつんと土方は言った。
教育的指導
「さいとう、さん、なに?」
部屋に入ったとたんベッドに投げ込まれ、それから圧し掛かられる。完全に動きは封じられてそれから首筋に柔らかい髪が当たる。要するに口づけされた。しかもかなり強く、鬱血を残して。
「いたっ」
「当分隊服以外着れなくしてやるよ。水着とかいうアホな格好させるか。ていうかもふもふだろ、おまえの望んだ通り」
「ちがいます、やめて、怖い」
「うるせーよ。口開けとけ」
え?とぽかんとした瞬間に彼は彼女のそこに口づけて思い切り口腔をなぶる。歯列をなぞって、舌を探って、絡めて、吸って。それに沖田はぼんやりしてきて、ぴちゃりという水音を拾っては意識が酸欠で飛びそうになるのを堪えるので必死だった。
「さいとう、さん」
「……ごめん」
「え?」
「あんまり無防備すぎて、おまえね、男ってこういう生き物なの。淡白だった昔とは違うの。このままぐちゃぐちゃのどろどろに犯してやることもできるけどっていうくらいなの」
はあっと斎藤はやっと正気に返って大きく息をつく。
「あ、の。女性サーヴァントの皆さんからも付き合ってないのに髪触るのって言われて分からなくて」
「うん、だろうね」
「だから、その、もふもふしたいっていうのは、その」
その言葉に斎藤は今度こそもう正気に戻れない、と思った。
「これって徹底的な教育的指導必要なやつ?」
べろり、と舌なめずりして。
*
ガバッと彼女の着ていた今日は隊服の前を開ける。沖田は怯えたように、だけれど体格差と自分の発言、それから斎藤のぎらついた目に何も言えずに荒く呼吸を繰り返した。
「指導なんで言うけど、ここが胸ね、女の。男が好きなやつ。ついでに女も感じるとこ」
珍しくさらしではなくブラジャーを付けていた沖田のそれを、乱暴に彼は取り去る。
「今日に限ってこれとか誘ってんのかよ」
「ちがっ!たまたま、です」
「あー、口ごたえはマイナス何点にしようかな」
「ふぁっ、いたっい」
そう言いながら彼はぐちゃぐちゃにその胸を揉みしだく。痛い、という悲鳴が聞こえたが、だんだんとそれが鼻にかかったような甘い声音になるのを斎藤は聞き逃さなかった。
「なに、感じてんの?正直に言わないとまた指導だけど」
「やっ、へん、で。びりって、なにか、きちゃう」
「どこに?」
教育、とか、指導、と言ったからか、斎藤は全く容赦がない。それもまあ仕方ないかもしれないが。今日という今日まで耐えてきたのは彼の忍耐力のなせる業だろう。
どこ、と問われて、沖田は答えられずに身を捩った。ごそ、と太ももが動いて少し開いていた脚が閉じられたのを見て、彼は笑う。
「ここ?」
「やっ、だめ、そこ、じゃない、です!」
「嘘つきは減点ということで、指導ね。どっちの指導がいい?選ばせてあげるけど」
「ふぇ?」
「ここ、触ってあげるか、胸触ってあげるか。正直に言えばラクになると思うけど」
べろり、と彼は唇を舐める。その様を上気した顔で押し倒された沖田は見上げた。
「何?俺見て発情でもしてんの?」
「なんで、そういうこと、ばっかり!」
「教育的指導だっつってんだろ」
口のきき方気を付けろ、とやっぱり猟奇的に言って、舐めたために濡れた唇で彼女の口をなぶる。
「で、どっち?」
それでさらに息の上がった沖田は、ぼうっと熱に浮かされてつぶやいた。
「指導、だから、しょうじき、に?」
「そーいうことですかね」
「……こっち、です」
もじもじと脚をゆっくり開いた彼女に、斎藤は薄く笑う。こんなもの見せられたらもう止まれないな、と思いながら。
「まあ正直に言ったから指導続けますか。ここがお前の一番感じるとこね。胸触っても感じるくらいな訳だから」
「ひゃいっ」
ぐりっと膝で彼女のもっとも大切な部分を乱暴に押す。手酷いそれなのにじわ、と何かせり上がる様な感覚に、沖田は頭が真っ白になった。
「あーあ、濡れてきてんじゃん。だいじょぶ?被虐気質?」
「ちがっ、い、ます!」
ぐちゃ、と水分を含んだ下着が卑猥な音を立てて斎藤は一言言った。
「邪魔だな」
「え?」
そう言って彼女の意思も確認せずにその布を取り去る。
「やっ、だめ、で、す!そんなっ」
「ダメっていうか指導だからね、これ。言うこと聞いてろ。ちなみにここがお前の一番感じるとこだけどその前にっていうか」
そう言って彼は指で遠慮も何もなしに陰核をなぶる。
「ひゃっ、やっ、だめ、だめっです、なに!?」
「まあここも感じるでしょ?」
「うあっ、あつ、い」
「なんて言ったっけ?ごめーん、指導なのに横文字覚えてないや。大抵の女はここでも感じることは教えてあげたからいいよね?」
「やっ、うあっ、だめ、だめ!」
「嬉しそうにとろとろなーんか出てるけど。一回イっとけ」
「いく?」
「ああ、そうそう、指導だったね。最高に気持ちよくなっとけってこと」
そう言って彼は彼女のそこを余計に強くなぶる。それに沖田は頭が真っ白になっていくのを感じながら、意識を飛ばしそうになる。
「イってもいいけど飛ぶなよ。続きあんだから」
「うぁぁっ」
強く陰核をなぶられて、びくびくと震えて達した彼女に、斎藤は笑った。
「本番まだなのに、やらしいのな」
「ほん、ばん?」
「ああ、飛ばなかったのは評価するから、こっからはちゃんとしてあげる」
「え?」
そう言って彼はもう十分に濡れそぼった彼女のそこに指を入れる。初めてだと知っていながら一気に二本入れたのは、指導だと言い続けたために従順になった彼女に対する嗜虐心からか。
「きっつ」
「はうっ!な、なに?」
「お前の一番感じるとこ、さっきより」
そう言ってバラバラに指を動かして、彼女が感じそうなところを探る。一瞬かすめた部分で沖田の体が大きく跳ねた。
「ふぁっ」
「ここか」
そう冷静に言って彼は中のそこを指で軽く撫でる。それにびくと震えた彼女に気を良くしたように、今度は撫でるのではなく強く押した。とろり、と愛液が指を伝う。
「ひゃうっ、だめ、痛い、です」
「そのわりに感じてるみたいだけど。まあ最初だし、これからもっと痛いし」
そう言って彼はズルっと指を抜く。まだきつく、男を知らないそこを見て、どうにも楽しくなって笑ってしまう。
「なんで、笑うんです、か」
「うん?いや、女にするの俺なんだなって思っただけ」
そう言って彼はスラックスのジッパーを下ろす。
「ひゃっ」
「ちゃんと見とけ。男の大事なもん」
「や、です」
ぎゅっと目をつぶって震える彼女に、散々いじめたしまあもういいか、と思って斎藤は彼女の足を抱えてゆっくりと怒張をそこに宛てた。
「一応言っておくけど、かなり痛いから。大してほぐしてないし」
「ふぇ?」
「わりーな」
そう言って一気にそこを貫く。
「いたい、いたい、だめ、やだ、いたい!」
その急にやってきた破瓜の痛みに泣き叫んだ彼女と、自身を伝う鮮血に斎藤はやっぱり笑った。
「ずっとこうしたかったとか言ったらさすがに軽蔑する?」
「いたい、やめて、ごめんなさい!」
「聞こえてないか」
さすがにやりすぎたか、と思って彼は動きを止める。
「ごめん、ちょっとやりすぎた。少しこのままね」
そう言って、無理やり持ち上げていた脚を下ろして、少し楽な姿勢にすると、あやすように額に口づけて、涙をぬぐって頭を撫でる。
「斎藤さんの、ばか」
「うん、さすがにこれは俺が馬鹿だったと思う。馴染むまで少し待つから、痛かったら言って。いやまあ、今も十分痛いだろうけども」
「ん」
そう言ったら彼女は短くうなずいて、それから手を伸ばした。
「どした?」
「ぎゅってしてください、こわい、から。いつものさいとうさんがいい」
「だから教育的指導って言ったでしょうが」
そう苦笑しながらも、彼は彼女の要望に応えるようにその小さな体を抱きしめる。
「ひゃうっ」
「あのね、この体勢で抱きしめたりしたら動くでしょ。それくらいは考えなさい」
その拍子に中のそれが動いて、彼女は緩い快楽を拾う。それは分かっていたが、怖がらせたことは嘘ではないし、と思って彼はあやすように彼女を抱きしめて、それからゆっくりと腰を動かす。
「あっ、だめ」
「ごめん、こんなこと言われたら待てない。ゆっくりやるから」
そう言って緩く挿入を繰り返そうとしたら、くしゃっと髪を掴まれれる。別段痛みを感じるほどではないが。
「もふもふしてますか?」
「ちがっ!?」
「好きなだけ触ってていいからちょっと我慢して」
この出来事の発端のその髪を触らせて、彼はゆっくりと自身で彼女の中をほぐした。
「ひゃっ、あっ、な、に」
「さっきのここか」
そう言って先ほど指で見つけた彼女の感じる場所を執拗になぶれば、とろんとした顔で沖田は斎藤を見た。
「さいとう、さん、すき」
「ああ、もう!だから、そういうのが教育的指導が必要な問題なんだってば!」
「どして、ですか?さいとうさんだけなのに」
もう自分で何を言っているのかも何をやっているのかも分からない状態のような彼女を見ながら「トロ顔」なんて下衆なことを考えて、斎藤は動きを速めた。
「うあっ、まって、あつ、いっ」
「もう痛くないでしょ?そんなにとろんとしちゃって」
「きもち、いから、だめっ」
「もう煽んな、頼むから!」
先ほどまで主導権を完全に握っていたのに、ここまでされたら耐えられないのも男だよ、と思いながら斎藤は思い切り自身を彼女の最奥に叩きつける。
「ひゃうっ!」
「きっついけど、悪くないな」
最低なこと言ってる自覚あります、と思いながら、彼は締まるそこにもう諸々の言動や今までの忍耐で限界のそれをしっかりと挿れて、言った。
「中に出すから締めといて」
「ふぇ?」
「最後の指導、かな。零すな」
そう言って彼は劣情を彼女の中にぶちまけた。
*
「斎藤さんの馬鹿」
「うん、ごめん、ちょっと僕も疲れた」
事後、意識を失った彼女の体を清めて、それからずっと頭を抱えていた斎藤の髪を、目が覚めた沖田は思い切り引っ張った。
「もふもふしたかっただけなのに」
「うん、いくらでもしていいから」
そう言って彼は沖田に髪を触らせる。それで安心できるなら安いかな、と思いながら。さすがにやったことが危なすぎる、という自覚はあった。疲れた、精神的に、と思いながら、髪に指を通す彼女を眺めた。
「でも」
「うん?」
「もふもふのついでにこういうことしてもいいですよ」
「ついでかよ」
はあっと斎藤は大きくため息をつく。全然教育も指導もできてないじゃない、と。