「なんかさー」
「ふぁい」
「こら、口に物入れたまましゃべらない」
「ん」
「マスターちゃんが業務で三徹してて」
「え?マスターが?大丈夫なんでしょうか?一般人というか未成年というか」
「それでね、寝てないからか白河夜船でさ、耳元で囁いてみたんだ」
「え、変態なんです?」
「沖田ちゃんにミニスカポリスって」
「殴りますよ」
「そしたらね、『お前がやれ!!』って叫ばれてめっちゃ怖かった」
「斎藤さんの方が怖いんですけども……」
「でもさ、夢の中で聞いたことって結構実効性高いよね?」
「そう、かなあ?」
「あ、はじめちゃーん」
「ほら見ろ!やったね!」
「これ、男性のパーティージョーク的なミニスカポリスの衣装あった」
「「え」」
「二人に休暇あげる」
「「え」」
白河夜船
事の起こりは三日前ほど。基本的に人を放っておけないマスターは、ムニエルが過労で倒れた、と聞いてとりあえず書類くらいなら見られるかも、とダ・ヴィンチに言った。幸い、直近の異聞帯への出撃予定もなければ、微小特異点の発生もないから、とちょっとした書類、判がいるかいらないか程度の書類を任せてしまったのだ。
それだけで終わらないから、人類最後のマスターなんていうものになってしまったわけで、「これくらいなら」が積み重なった結果が三日間の徹夜で、ダ・ヴィンチは大いに反省したし、ゴルドルフにも怒られた。
「だいじょうぶ、ちょっと寝れば」
そう言って、彼は管制室の前の廊下で寝始めてしまった。
「マシュ、運んだ方がいいかなあ」
「すみません、私がモニターに集中しすぎていて」
「いや、というかマシュも休まなきゃだよ、悪かったね、二人とも。欠員補充なんて一番大事な戦力に……」
そんな会話をしているところに通りかかったのが斎藤だった。
「あれー?マスターちゃん?こんなところで白河夜船?降りられなくなっちゃうよー?」
「あ、ちょうどいいところに、斎藤さん」
「運んでくれないかなあ。マシュも疲れていてね。私のせいなんだけど」
「いいよー。あ、でもその前に」
「え?」
「マスターちゃん、沖田ちゃんにミニスカポリス」
二人に聞こえないように、彼はマスターの耳元で三回くらいそれを囁いた。夢で見た者って結構実効性がある、と思っているのだ。その三回目を言い終わった瞬間だった。
「お前がやれ!!」
「うわっ!?こわっ!?」
「マスター!?大丈夫ですか!?」
斎藤が飛び退いてマシュが声を掛けるが、彼はすーと寝息を立てていた。
「と、とりあえず部屋に運べばいいのかな?」
ごまかす様に、斎藤は言って、彼を担いだ。
*
「ちょっと待って、マスターちゃん。ドウイウイミ?」
「え?なんか寝てるときにはじめちゃんが「沖田ちゃんにミニスカポリス見せたい」って言ってたから」
「言ってないよ!?」
「言ってたよ。で、たまたまあったから」
カルデアのたまたまって怖すぎません?と沖田は声に出さずに思っていた。
「でもちょっとこっちは疲れてるし、はじめちゃんがやってあげてたらいいんじゃないかなって」
見たいんでしょ?男のミニスカポリス?と問われて沖田は大声で言った。
「斎藤さんの戯言です!」
「え、だって「沖田ちゃんにはミニスカポリスが必要だ」みたいなこと言ってたから。沖田さんもこの頃疲れてるだろうし…」
あ、と斎藤は思う。「沖田ちゃんにミニスカポリス」は「沖田ちゃんにミニスカポリスを着せる」と「沖田ちゃんにミニスカポリスを見せる」の両方の意味になる、と今気が付いた。
「日本語って難しい……」
*
「ということでマスターに心配をかけた上にミニスカポリス、男性用を借りてしまったわけですが、斎藤さん?」
「やだやだやだー!沖田ちゃんのミニスカポリスが見たくて、それをこう、組み敷きたかっただけなのにー!!」
「ケダモノ」
二人で、というか休暇をもらったから今後どうするか、ということで斎藤の部屋で問い詰めたら、正直に、というか欲望に正直に斎藤は答えた。問い詰めるまでもなかったな、と沖田は息をつく。
「着てくださいよ」
「……え?」
「ミニスカポリス見たいなー?ちょっとガタイが良くて馬鹿みたいなミニスカポリス見たいなー?」
「……泣いていい?」
*
そう言われて、そうして自分の欲望のせいでこうなったんだ、と思いながら、沖田の視線が痛すぎて、斎藤は半分泣きながらその衣装に着替えていた。
「ひどい、こんなのってない」
ぶつぶつ言いながらスーツを脱いでいるが、沖田からすればこんなのってないのはこっちです、という感情しかない。
「なんで入るの?男物だから?カルデアっておかしいでしょ?」
おかしいのはあなたですよ、と思いながら、とりあえず着替えている間は見られないし、と思ってまったりお茶を飲む。彼の部屋の備え付けのお茶はほうじ茶だった。おじいちゃんだ、と思った。
「は…い…着ました」
「ぶっ、ははは!いい気味ですよ!なんです、それ!?警官だったからよくお似合いですよ!足太ましすぎません!?ていうかもうこのままカルデア練り歩きましょう?可愛い女警官です!ってプラカード持ってあげますよ!」
出来上がってしまった斎藤のミニスカポリスに沖田は爆笑してそう言った。もう笑うしかない。上着はパツパツだし、スカートのラインはギリギリ下着が隠れるかどうかというところだし、とにかくこんなもの一刻も早く脱ぎたいし笑いまくっている沖田ちゃんが憎い、俺はこれを着たお前が見たかっただけなのに!とこの期に及んで斎藤は思っていた。
「あー、笑った笑った。まあ珍妙な生き物が見られたので許してあげますよ、沖田さんは」
そう言った沖田に、斎藤の中でぷつんと何かが切れた。だって、始まりは欲望だったわけだから、もうなんだっていいじゃん、と。もう駄目ねこの男。
「あー、僕?僕っ娘でいいや、もう」
「は?気持ち悪いんですが?」
「僕警官なんで?取り調べとかしなきゃいけないんで?」
「はい?」
そう言ってその姿のままで彼は沖田をベッドに放り込んだ。もちろん、動きづらい格好でも膂力は全く変わらないのである。
「ちょ、斎藤さん!?」
「取り調べ始めますね?」
にこりと女警官は笑った。
*
「あのですね」
「んぁっ、やっ」
「なんで乳首立ってるんですか?やましいことあるんですか?」
彼女の胸を揉みしだきながら緩く指で頂を撫でて、警官は言った。
「きゃうっ!」
「ほら、答えてくれないと調書取れないんで、何でですか?」
殊更に敬語で言って、彼はくりくりとそこを摘まむ。
「感じてるんですか?警官に取り調べ受けてるのに?」
「やっ、ちが、そんな取り調べ、そんざいしま、せん!」
「AVとかにはあると思いますよ?それで、感じてるんですか?答えてもらわないと、その、僕仕事が進まなくて怒られちゃうから……」
しおらしく言った振りをして、思い切りそこをつねって、ついでにぐしゃっとたわわな胸を揉む。そうしたら、びくんと沖田は震えた。
「あれ?どうしました?そんなに気持ち良かったです?」
「やぁっ、も、やめて、くらしゃい」
「取り調べなんで正直に言ってください。胸で感じる淫乱だからって」
「胸で、かんじる、いんらん、で、す」
もうやめてほしくて、言いたくないけれど沖田は息を荒げながら言われた通りに言った。そうしたら男はくすっと笑った。
「胸で感じる淫乱さんなら、他も感じるかもしれないから念入りに取り調べ、必要ですね?」
「やっ、やめて!も、許して!」
「え?許してって今言いました?」
「……え?」
それに斎藤はその女警官の格好には似合わないひどくぎらついた、欲にまみれた雄の顔で笑った。
「悪いことしてる自覚あるんですね?じゃあちゃんと調書取らなきゃ。徹底的に、ね?」
*
「きゃうっ」
「あのー、ちょっとここなんで濡れてるんですか?教えてください」
そう言いながら彼はストッキングをはいた足先でぐりぐりと彼女の大切な場所をなぶる。
「僕のストッキング汚れちゃうんですけども。支給品じゃなくて自前なので困ります」
「やっ、だめ、だめぇ!」
「ダメって、ちょっとだけですよ?そんなに強くしてないしかるーく撫でてるだけなのになんで濡れてるか言ってくれませんか?足で蹴られて感じるMなんですか?」
「ちが、い、ます!ひゃんっ!」
「えー?ほんとですかぁー?じゃあちょっと確認しますね?」
そう言って彼は器用に足先に彼女の下着を引っかけて、ずり降ろす。外気にさらされた秘所に沖田はびくりと震えた。
「あれ?あれ?なんでこんなに濡れてるんですか?もう下着の意味なくないです?」
ぐちゃぐちゃですよ?と彼はストッキングを履いた足に引っかけたそれを見せつけるようにして言った。
「さいとう、さん、が、蹴った、から」
「斎藤さんじゃなくて警部補なんで。これでも出世してるんですよ、結構。言葉遣い気を付けてもらっていいですか?」
普通取り調べ対象に言うはずのないことを言いだした辺り、彼の中で設定が決まりつつあるのを沖田はぼうっとした頭で考えた。さっき上司って言ってたけどそこも決まっているのかも、なんて。そうしたら、その下着をひょいっと脚から投げ出して、斎藤は言った。
「で、どうしてほしいんです?ていうかぁ、なんでこんなに濡れてるんですかってさっきから聞いてるのに答えてくれないのは黙秘ですか?」
「ひゃうっ!?」
今度こそ直接、しかしいつもの肌とは違う、化学繊維に包まれた足先が軽くその秘所に直接触れる。
「あーあ。真面目にストッキング汚れちゃったんですけど?週末買いに行こー」
本当に女のようなことを言って、彼は軽い動きでそこをなぶる。それに彼女はびくびくと震えて喘いだ。
「あっ、やっ、だめっ!」
「ダメって何がですか?すっごくとろとろしててぇ、気持ちそうでぇ?取り調べなのに感じちゃうんですか?」
「も、やめて、くださいっひゃうっ!」
ぐちゅ、と殊更に音を立てて、一旦彼は足先を離す。そうして明らかに演技と分かるそれでまた言った。
「困りますぅ。これでやめて調書取れなかったら僕土方警部に怒られちゃう」
しおらしく言って、そうして彼はさらに追い打ちのように言う。
「どれくらい沖田さんのカラダがいけない子か、まとめて、書類にして、上司に渡して、回覧するんですよぉ?」
「やめて、やめてぇ……!」
そんなことあるはずないのに、まるでそれが本当のことのように聞こえて、泣きそうになりながら懇願する。
「じゃあ、僕と気持ちいことしてくれたら、と、く、べ、つ、に?釈放してあげますよ?」
そう言って彼はストッキングを脱ぎ捨てる。ついでに下着も。彼女の痴態で十分煽られて硬くなった剛直をミニスカートの間から見せつけたら、その倒錯的過ぎる格好に、沖田は息を呑んだ。
「どうしますかぁ?」
この期に及んでそんなふうに聞いてきた彼に沖田はこくり、とうなずいた。
*
「きゃうんっ」
ぐちゅ、と卑猥な音を立ててそれが入り口のあたりを出たり入ったりする。その緩い刺激を与えながら、彼は言った。
「ああ、釈放はしますけど、取り調べは続けますね?」
「えっ、ひゃっ、あっ」
「あ、ここが感じるんですかぁ?知ってますけど」
そう言って彼女の感じる部分をなぶる。ついでに緩い刺激しか与えずに、ゆっくり腰を動かしたら、彼女はその制服姿の男に抱き着いた。
「もっと、ちゃんと…ひゃっ!」
「ちゃんと取り調べしてますよ?ここが感じて、それで」
そう言って彼は今度こそ思い切り陰茎を叩きこんだ。
「いやぁっ、あっ、あっ」
「こうすると悦んじゃうのも知ってるんですよ?」
急な刺激にびくり、と彼女は震える。
「あれー?イっちゃいました?ちゃんと言ってくださいね?」
「イき、ました、ごめん、なさい、ひゃっ」
謝る必要なんてどこにもないのに、彼女が謝ったら、彼は彼女に口づけた。
「ちゃーんと謝れる子にはご褒美あげますね?」
「ふぁ……」
「奥、お好きでしょ?」
そう言ってこつりと最奥の最も大切なところをなぶる。くすぐったいような、それでいて女として一番触れられたくて、触れられたくない部分をその剛直で撫でられて、沖田は声にならない悲鳴を上げた。
「奥、だめ、そこ、やっ」
「まだ慣れないんです、これ?結構教えてあげたのに、ひどいですねぇ」
そう楽し気に言って、彼はその最奥の唇に口づけるようにゆっくりとそこをなぶる。
「あっ、あっ、だめ、それ」
「ダメなんですか?それともいいんですか?言ってくれないと分からないんですけど、だんだん吸い付いてきてますよ、僕のペニスに?」
殊更に淫猥なことを言ってゆっくりとそこを押し開こうとしたら、沖田はぽろぽろと涙を零しながら言った。
「斎藤さん、も、やめて」
そうしたらさすがの斎藤もぽんぽんとあやすように彼女の頭を撫でて涙をぬぐった。
「あー、ごめんって。ちょっと楽しくなっちゃってさ。でも気持ちいでしょ?」
「ひあっ、やっ、だって、こわい…!」
「警官なんて怖くてなんぼよ?まあもうやめますけどね。ほら、ここ、気持ちいでしょ、僕の当たって。もういじめないから。任せてていいからちょっと力抜いて」
「ふぁい……」
それに沖田は言われた通りに力を抜く。そうしたら彼のペニスが奥に当たって、自分のそれが下がって彼を求めているのを感じた。
「危ないからさ、ちゃんと力抜いといて」
「んっ、やぁっ!」
「取り調べ、よく頑張りました。ご褒美ね」
そう言って、弛緩した体を抱えるようにして、彼はそこに白濁を注ぎ入れた。どくんどくんと熱い液体が大切な場所に流れ込んで、彼女はギュッと彼の制服にしがみついた。
*
「前からコスプレしたいなあって思ってたんだけどさ」
「……」
「僕がしても何ら問題ないと分かったのはすごい収穫だと思う」
「変態」
ミニスカポリスの格好のままでベッドに彼女を横たえて言った男に、沖田は正直な感想を言った。