誕生日
「お誕生日おめでとうございます!」
「え?」
沖田ちゃんに言われて、僕はなぜか食堂でコロッケそばについてきたケーキ(特別、とブーディカさんに言われた)を食べながら何が何だか分からず沖田ちゃんに間抜けた返事をした。
「誕生日?」
「生まれた日の御祝ですね」
「花祭りみたいな?」
「考え方が完全におじいちゃん!!」
沖田ちゃんに言われたが、聖人君子でもない僕の誕生日を祝う風習、というのは僕の知る限りなかったから、たぶん現代の風習なのだろう。
「こんな一般庶民の誕生を祝ってどうしますよ」
そう言いながら、ああ、だから特別、ということか、と思ってそのケーキを食べる。
特別、か。
ここではどんな英霊も、分け隔てなく誕生を祝われる野だろうか、と。
「沖田さんからはこれです」
「特別仕合券……これは沖田ちゃんが一方的に楽しいやつよ」
十枚つづりの仕合券なんて、と思ってそれから、こうやって贈り物をするのも当たり前なのだろうか、とふと思う。
「ねえ」
「はい?」
「僕の誕生日って特別?」
「そりゃあ、斎藤さんにまた会えましたから」
特別です、と沖田ちゃんは言ってくれた。特別、か。
誰かの、何かの特別でいたかった。何かに縋っていたかった。
「きっと祝うよ」
それなら僕も、おまえの誕生日を、きっと言祝ぐよ。
そう思ったら、沖田ちゃんはにっこり笑ってその手作り感満載の仕合券を指差した。
「最後まで」
「え?」
そう言われてぱらぱらとつづりを解いていくと、最後に十一枚目があった。
「『今日は一日なんでも聞いてあげる券』。こりゃまたすごい」
「プレゼントですからね!」
「自分をプレゼントー、なんてなかなかませた子ですねぇ」
そう言ったら沖田ちゃんは急に真っ赤になった。考えてなかったのかな。
「まあ、そういうところも好きだけどさ」
さぁて、これはいつ使おうかな。
2021/1/1