ギプス

 修学旅行の定番コースはやっぱり京都だった。近藤さんが新撰組の史跡にいるのはどうしても可笑しくて、見入っているのもどうしても可笑しくて、俺は笑ってしまった。

「なんだよ、歳。新撰組、好きじゃなかったっけ?」
「あー、まあな」

 曖昧に答えて、笑う。それに土産物屋で木刀なんざ買ってる剣道部のエースに俺はさらに笑った。いろんな意味で。
 記憶のない近藤勇が、現代の新撰組の史跡でその足跡をたどり、木刀を買って、はしゃいでいる。

「古くなったのは俺か」

 ぼんやりと呟いたら、不思議そうに振り返られた。

「歳?」

 何か察したような目のそれに、俺は曖昧に笑う。
 別につらい訳じゃない。当たり前だと思う。むしろこんなふうに過去を引きずって歩いている俺の方がおかしいんだと知っていた。


 明日のことは分からない。
 昨日のことは忘れちまおう。


 だから、また季節が巡る。
 あんたと過ごした日々が、少しずつ古ぼける。
 あんたと過ごす日々が、少しずつ加えられていく。


「絶対なんて、信じてない」


 だけれどいつか、同じ日のことを思ってくれと、浅ましい俺は思うんだ。