感覚

 近藤さんとそういうことをした日の夜は、どうにもこうにも面倒な気分になる。

「まあ、この人、衆道の気とかねーし、別に俺が好きな訳ないしな」

 自分で言っても惨めな気持ちになるそれを口にして、横で気持ちよさそうに寝ている近藤さんに抱かれたのか、と思ってから、じゃあなんで、と毎度毎度同じ結論にしかならないことを思った。

「最近、そうそう刀取ることもねーしな、この人は。体動かしたいんだろ」

 偉くなると女買うのも一苦労ってな、と呟いてみたら、余計に惨めだ。別に衆道の気があるとは思っちゃいないが、昔からこの人以外好きになるなんてあり得なかった俺が、この人とこういうことをするようになったのはいつからだろう。ずいぶん前な気もするが、もう思い出せない。
 そうしてその度、俺は結局女の代用品で、体を動かしたいとか、欲を発散したいとかのそういう時に便利なんだろう、なんて思った。

「んあ」
「起きたか、じゃあ帰るぜ」

 近藤さんが目を覚ましたから、まあ寝ずの番ってわけでもねぇが、そこにいた俺が着流しを引っかけたら、突然口吸いされた。

「な、んだよ?」
「え、いや、歳綺麗だなあって」
「はぁ?そういうことは女に言えよ」
「いや、いっつも終わるとすぐ帰るし、たまには、とか思っただけだが」
「だから、体は動かしただろ」
「え」

 は?あんたなんでそんなに驚いてんだよ?そういう目的だろうがよ。あー、自分で思うと惨めになるから帰らせてくんねーかな。

「歳はそう思ってた訳か」
「は?何押し倒してんだよ、俺もう着替えて」
「俺が悪いのか歳が悪いのかもう分からんな」
「だから、それ、は」

 その先の言葉は彼の唇に吸われた。





「つまり歳は、俺が女の代わりにお前を抱いていたと思っていたと」
「違うの、かよ」

 なんでそんな真面目な顔してんだよ。そうだろ?違わねーだろ?ていうかなんでさっき口吸いしたんだよ。

「ちょっと来い」
「は?ちょ、やめろよ!うぁ、やめ、だめだっ!」
「とか言いながら、っていうか帰るとか言いながら魔羅ガチガチなんだが、もしかして帰っていっつも自分で抜いてたのか?」
「ちが、やめっあああ!だめだ、やめ、っ……!出るから、はなっうぁっ!」

 急に近藤さんからそこを握り込まれて、激しくなぶられる。この人と別れるのはいつも惨めで、硬くなっていたそれはいとも簡単に白濁を撒いた。

「女にこんなこと出来るか?無理だよな?」

 近藤さんに聞かれて、もう快楽もその言葉も堪えられなくて、泣きながら懇願するように言った。

「わかった、から、ちゃんとする、からぁ!ちゃんと、捌け口に、なる、からぁ、も、やめてくれ!」

 叫ぶように喘ぎながら言ったら、魔羅を痛いほどに握り込まれた。

「あ?」
「なんで……?」

 なんで怒ってんの?こわいこわいこわい、この近藤さんは、駄目だ、こわ、い……!

「ちゃんと、できて、ない?」
「そうじゃなくてな、だから、お前が代用品だって俺がいつ言った」

 だってそうだろ、だって、女抱けないから、だからちゃんと捌け口として、するって言ったのに、なんで?

「なあ、歳」

 怒っているのに柔らかく髪を撫でられた。あ、この手つきは、駄目だ、勘違い、しちまうから、だから……。

「俺はお前が好きで抱いてんだ。お前は俺のこと好きでもないのに抱かれてたのか?部下だからか?代用品だからか?」

 その怒りの中にある優しい言葉に、感情が堰を切ったように流れ落ちた。

「違う、おれは、あんたが、好きで。だけど、抱いてくれるなら、代用品でもいいから、だから!」

 好きだなんて、言うな。こわれ、ちまう。

「じゃあ歳も俺が好きなんだな」
「あ、の……」

 そう言って近藤さんは笑ってそれを俺に突っ込んできた。

「うぁっ!?きゅうに、あっ、おく、だめだって、いっつも!あぅ、あぁ!」
「はは、歳のでけぇこの声も好きだぞ。全部好きだがな」

 近藤さん、ほんとに、俺のこと、好きで、抱いてんのか……?そんなの、と思ったところで視界がちかちかと明滅して、俺は快楽の波にのまれた。

「っ、出すからな」

 こくり、と頷いて、俺はその熱い精を受け取って、意識を手放した。





「まあ、ちゃんと言わなかった俺も悪いんだが」
「……ああ」
「歳は自己評価っていうか、そういうもんが低すぎる」
「だけど」
「口ごたえする口はここか?」

 そう言って近藤さんに口づけられて、その後の反駁は吸い取られた。
 こんなに幸せで、いいんだろうか。俺は、この人が、本当に、好きだから。