鬼の面

 鬼の副長、と誰かが言うたびに、何とはなしに傷ついた。
 そんなことはないと俺が言うことには何の意味もないのだろう。それはきっと嘘ではないのだから。
 規律を敷き、粛清をし、誰からも恐れられる彼は。

「なぁ、歳」
「んな顔すんなよ、大将」

 少しだけふざけたように彼は笑った。仲間だった男を斬った夜のことだった。

「近藤さんが、あんたがそうやっていてくれりゃあ、俺はなんだっていいんだ。あんたのためになるんなら、鬼でもなんでも、地獄にだって行ってやるよ」

 笑って男は言った。ああ、そんなことを望んだわけではないのに。
 ああ、でも。
 血にまみれても、誰に何を言われても、笑うお前は。

「何も変わってないな」
「あ?」
「綺麗だな、歳は」
「寝言は寝て言え」

 綺麗なものかよ、と男はやはり笑って言った。
 お前はきれいに汚れたひと。
 では、俺は―――