お前の『一番』は、何よりかわええ弟なんやろ?
どないに背ぇが大きゅうなっても
どないに剣が強なっても
どないにお前を超えていっても
お前の中では何よりかわええ弟で、何より誰より一番なんやろ?
「山崎」
「なんや、腹でも壊したか」
掛けられた声には振り返らず文机の上の紙に目を通す振りをする。
部屋の中に彼が入ってくる気配。
次いで背中に感じる温かさ。
前に回されて腹の辺りを抱き込む手に無意識のうちに自分の手を重ねる。
首筋に埋められた頭。軟らかくて色素の薄い髪から微かに硝煙の匂いがした。
「 」
その至近距離でお前は残酷な言葉を紡ぐ。
お前の一番はアイツなんやろ?
俺はお前の一番にはなれんのやろ?
せやのになんで、こないな熱と言葉をくれる?
嫉妬やない。そないに複雑な感情、持ち合わせとらん。
ただ純粋に、解らんだけや。
アイツの事以外、眼中に無い様な面しとるくせに―――
どうしてその手で触れる?
どうして甘い言葉を紡ぐ?
勘違い、してまうやろ―――