ゆめのはなし

 誰か止めてくれ、誰でもいい、誰か。

『それは君の役目だろう』
『それは土方さんが』
『それはだから、あんたが』

 違う違う違う、こんなの間違ってる、俺は、俺じゃ駄目だった、だから。

『違わない。これが正解なんだ』

 とし、と優しい声がして、それから。


「失礼。魘されていたようでしたので」
「あ、悪い、な」

 まだ名前を変えた彼に慣れずにそれを呼べずにそうだけ言ったら、男はふと首を傾げた。

「正解などありませんよ。少なくとも、あなたの望む正解など」

 何が見えている、と聞こうとして、その不毛さに俺は口をつぐんだ。そうしてまだ時間があるともう一度目を閉じた。

「悪いが少し寝直す」
「それがいいかと」

 良い夢を、と男は言った。


『歳が間違っているなら俺も間違っているし、歳が正しいと思うなら、俺も正しいと思う』
『それであんたが死んでもか』
『どうだろうなぁ、それで歳が泣くのは嫌だがな』
『俺は、どこに行けたんだろう』
『行けたんだ、じゃない。行くんだ、どこへでも』


 ええそこにいますよ。あなたはいつまでも心配を掛ける様だ。
 だけれどその気持ちも少しだけ分かる気がするのです。


「さて、どこへ行くのだろう」

 自分に問うて、薄く笑う。こんなもの見えなければよかった、と。