伊東と永倉(FGO)

前から思っていたのですが、伊東先生はカルデアのサーヴァントにならない気がするなあと思うというのをかなり短いですが形にしました。短いからブラッシュアップはしたいですねという。
服部君と氏真様はありそうなんだけども、伊東先生はカルデアのサーヴァントにはならないんじゃないかなあと思っている、という話。カルデアの在り方自体が云々以前に、『歴史上』とか『過去の偉人』という言葉に対する嫌悪というか。
本当に個人的な印象です。対照的なのが永倉さんだと思ったので永倉さんと話していますが、どこで話してんですかね……。

誰かに仕えるとかそういう以前の問題なんだと思うなー、と今回のイベント「虫籠遊戯」をやっていて改めて思いました。イベントそのものとは一切関係がないのですが、理想とか他人とか評価とか、そういうの伊東先生死ぬほど嫌いでしょ。
もっと言うと今のぐだの「世界のために人類最後の一人として、人類の代表として戦っているから力を貸してください」とか即答で「ヤダ」だと思う。
ぐだが可哀想とか背負わせたくないとかそういう視点一切なしでそもそも単純に思考が理解できないタイプじゃないかなあ。人間嫌いとも少し違うというかなんというか。

感覚としては初期のNPCだったころの高杉社長に近いのかなあ。あの御仁も実装でだいぶ変わったのでびっくりしましたが宝具5にしちゃっていつの間にか福袋で6になったから完全体目指すけどさ。

伊東先生が一部カルデアやぐだに対して驚きの辛辣具合なのでそういうのが苦手な方はお気を付けください。

という話です。長くしたいためまだ短いので最初から伊東先生がだいぶ怒ってる。

 

理由

 感情よりも先に論理があったと思ったことがある。
 そんなことはなかった。
 そんなことは一度もなかったと、後から知った。後になって確信した。

「正義? そんなものを掲げたことは僕には一度もない。だから君とは話が合わない」

 僕は正義を掲げたこともない。
 僕は大義を持ったこともない。
 だがあの時代に、あの時に、そんなものを持ったものが一人でもいたというのか?

「君はそれを信じているのか?」

 僕の問に彼は眉をひそめた。

「じゃあ伊東、あんたはそれを分かっていながら服部や平助を引き抜いた。それでいいのか?」
「分かっていながら? 分かっていたわけないだろう!」

 僕の叫びに永倉君が驚いたように目を見開いた。馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しい。
 馬鹿馬鹿しい、自分自身が。

「逆に聞きたい。君は分かっていたのか? 少なくとも僕は全部が全部、その場限りの考えだった。山南君が死んで、惜しい人間を亡くしたと『思った』し、その死が理不尽だと『思った』。そういう組織に未来がないと『思った』し、僕が仕えたいのを突き詰めれば幕府ではないと『思った』。それだけだ。思ったままに行動して、思ったままに死んだ。それだけだった」
「そこに正義はあったのか、と聞いている」

 静かな問いは、確かに話が合わなくても僕の個人的な価値観で言えば好ましいものだった。
 正直に言っていいのなら、今になって考えれば僕は僕自身が『思った』ことをただ理想とされるよりも彼のように考えてから答えを出す人間が怖かったから、過去にも彼に声を掛けたのかもしれない。

「そこに正義があるはずがないと知りながらそれを問うのかい? あるはずがない。僕はただそうするのが正しいとその場その場で思ったことをやっただけだ」
「……そうかもしれない」

 静かに彼は呟いた。ああそうだ。こんなことを服部君には聞かせられない。氏真様にも、山南君にも聞かせたくはない。ただ僕は。

「自分の理想のためだけだった。だがこれは『僕の理想』であって、誰かの理想と重なるものでも、誰かの理想に成り代われるものでもない」
「それが自己満足じゃねぇのは知ってる。俺たちには中身がなかったとも言わない。ただ単に、俺たちはそこにいた」
「歴史? 馬鹿馬鹿しい。僕はそこにいた。それ以外に何の理由がある?」

 そうだ、それ以上の理由があるか? それ以上の理由がいるか?

「僕は歴史を修正したいとも、歴史上で正しく評価されたいとも思ってはいない! 同時に歴史を直視したいとも思わない。そこにいたのになぜ今更改めて眺める必要がある?」
「それを服部や今川の大将にも言えるのか?」
「言えと言われれば言えるとも? これはただの僕自身の思ったことだ。誰かに認められたかったわけでも、認められたいわけでもない。だから僕は君たちが嫌いだし、カルデアには行かなくてもいいと思っている」
「それは俺たちが嫌いだからじゃないだろう」
「そこは文章というか文節をしっかり加味してくれない?」

 僕が苦笑して言ったそれに、永倉君は溜息をついた。

「俺たちが嫌いだ、でいっぺん区切って、それとは別にカルデアのサーヴァントだのになる気もない、と」
「そういうこと。だから君とは話が合わない。なぜ後世に伝えようと思った? 他者が語ることが許せずに自分が語るのが正当だと思った?」
「それしかできなかったからだよ」
「分かっててやってただろ、君も。琵琶法師じゃあるまいに」

 言葉に気まずそうに目を逸らした永倉君がもう一度溜息をつく。葬送儀礼の最たる例は、死者について語ることだとすれば、それは平安の昔から変わらない。

「だけれど僕は僕自身を誰かが語ることを望まない。僕がそこにいた、それでじゅうぶんだからだ。だからカルデアは気に食わない。君が作る理想の世界には、理想の人類には、誰が望んで誰がいる?」
「マスターはいるだろう?」
「なら一人でやって一人で死ね」

 それなら答えは明朗だ。

「一人でやって成し遂げることも出来ないことをやろうとするな、反吐が出る。一人でやって死を許容されないことをやろうとするな、頭痛がする」

 僕は人間を賛美しない。僕はマスターと言われるその子を賛美出来ない。

「頼るなと言ってるんじゃない。分不相応な願いは身を滅ぼすなんて言いたい訳でもない。ただ単に」

 本当に、ただ単に。

「僕を含む歴史の、人間の代表面をするな。それだけだよ」

 だからごめんね。それくらいなら勝手にやって。
 だからごめんね。僕は確かにそこにいた。それを誰かに語らせたくない。

「琵琶法師でも呼べばいい。それなら案外僕も呼び出せるかもしれない」
「怨念の塊みたいなもんだからな」

 永倉君が薄く笑った。そうかもしれない。僕は僕を他人に語らせたくはない。ただそれだけだ。

「伊東と永倉(FGO)」への2件のフィードバック

  1. 緋雨さん、お疲れ様です!
    遅くなりましたが拝読しました。
    緋雨さんの書かれる伊東先生が大好きでたまりません。

    「だからごめんね。僕は確かにそこにいた。それを誰かに語らせたくない」
    のモノローグが素晴らしいなと…

    カルデアのように過去の偉人(という言い方もあれですが)を俯瞰して見るって、
    当事者からするとちょっと怖いというか、腹が立つというか。
    どうしようもない答えを持ってるからこそ、歯痒さがあるというか。
    伊東先生は質量がずっしりとした、あまりにも人間すぎる人間であったのだ、とこのお話を読んで思いました。
    素敵なお話を読めて良かったです!
    ありがとうございます😭

    1. dosgoroさんー!ありがとうございます!

      あのモノローグが書きたかったところがすごく強いので嬉しいです。
      伊東先生もそうですし、誰も彼もどこかで何かありそうなんだよなあと思う部分なんだなーと昨年の川中島24時で改めて思っていたので形にしてみました。
      永倉さんの顛末記もそうでしたが、氏真様も晴信さんや謙信さんも、孫一ちゃんも、そうしてやはり御霊衛士の伊東先生も服部君も「自分が知っていること」という歴史の範疇の中でやっている部分はあるのかな、と。
      そういう意識が伊東先生は強いからこそ最後までああやって自分の志を貫いたのかなあと思います。
      まだ前後など書き足りないのでしっかり完成させられるように頑張ります!

      ありがとうございました!

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