値千金

追記から永斎です。
後半が少しだけえろどうじんです。
過去→川中島→カルデアという流れですが、永倉さんが軽く狂っていらっしゃる。

 

 

値千金

 

「あ……」

そうだ、この男は。

「俺が間違ってた。悪かった、斎藤」
「や、めろ」
「今更やめる訳ないだろ。そこにあるのに……いや、ここにおまえがいるのに」

そうだ、この男は贖えるものはなんでも買う。どんな手を使っても、それが出来てしまうから。

「こわい」
「上等だ」

斎藤との関係、事の始まり、なんていうほどの御大層なものはなかった。ただの憐憫に似ている、と言っても過言ではないと言えてしまうのだからひどいものだ。

「アレは黒だな」
「そうか」

面倒そうに、だが縛った髪を撫でつけて土方が応える。内偵、までにはいかないが、酒の席でひとつ聞いてきてはくれいないか、と言われたそれは、とある隊士が三人ほど、長州の連中とつるんでいるとの『噂』の話だった。

「俺が斬ってもいいけども」

そういうことなら俺も興味がなくなるし、助ける理由も、庇う理由もなくなってしまうから仕方がない。一緒に飲みに行ったのにひどい話だが、その席で俺も一緒にと言われてしまうのだから、そのくらいには迂闊なあいつらが悪いだろう。

「いや……誰にやらせるか」

相変わらず面倒そうに土方が言って、コイツは俺を信用しているのにしていないのがよく分かって面白いし可笑しいなといつも思ってしまう。
重用されているのに見張られている。見張られているのに重用されている。
そういや、同じようなのが左之助だが、そのあたりはコイツのさじ加減もあるし、俺との扱いも少しばかり違うが俺の考えることでもないか。

「俺が嫌なら沖田はどうだ? 案外やる連中だぞ、平助……というより魁先生はやめておけ」
「……どうしたもんかな」
「沖田を使い渋るっていうあたりは使いどころが出そうなのか?」

軽く笑って言ったら、あからさまな渋面を作った土方にため息をつかれた。まあそうだろう。沖田は俺たちの中なら剣術はほとんど一番の使い手だ。土方でも近藤さんでも敵わない。だがそれは剣術という意味で、そうだな、剣術という意味でもあるし、暗殺という意味でもある。殺すということにためらいがない、ということなら。

「沖田に俺に山南先生。監察方に投げるかおまえが直接やらないならこのくらいしかいないだろ」
「……斎藤」

ぽつりと土方が言った。芹沢の旦那の時のことの嫌味のつもりでもあったんだが、嫌味に嫌味で返してきやがるあたりが面白い男だ。

「斎藤? あいつに出来るのかよ」
「永倉、笑いが堪えきれてねえぞ。こんなところで雑魚連中相手に沖田を使いたくねえのは分かるだろ? というよりも、斎藤にも芹沢みてえな大事以外でも慣れてもらわんと困る」
「困る、ねえ」

人殺しに慣れてもらわないと困る、ねえ……?

「いいんじゃねぇか? 俺は困らんから構わんし、報告はしたんだ。好きにしろよ。ああ、それから。おまえ、ひでえ面だな? 男前が台無しだから眠いなら寝とけよ」

そう言ってひらひらと手を振ってみたら、彼は本当に面倒そうにその髪の紐を解いてしまった。

「面倒だ。疲れてるし眠いんだよ、本当に」

そう言って、本当に面倒そうにそのまま文机に髪紐を置いた男に、俺はやっぱり笑いを堪えることが出来なかった。

障子戸は固く閉じていて、だが障子だから仕方がない。行燈の灯が廊下まで漏れていた。消してしまって寝ればいいのに、とか、襖の部屋ってないのか、とかどうでもいいことを考えながら、それでもこれが見たかったのだし、と下衆なことを考えながら、俺はその障子戸に手を掛けた。

「何やってんだ。外に灯り漏れててうぜえんだけど」
「あ……」

伸ばしたまま結うこともしない青い髪の青年は、そのままこちらを見上げた。泣いていたのだろうと思ったらひどく面白くなった。
事の始まりが憐憫? 違う。憐憫に似ているだけで、それは俺の興味や関心に引っかかっただけのことだった。

「しん、ぱち?」
「なに?」

無様だとはさすがに思わない。ただ、普段あんなに威勢がよく……威勢がいいとは言わないか。斜に構えて、そうして芹沢の旦那の時もそうだが、近藤さんだの土方だの、やれと言われたことはなんでもやるような、監察方とも間諜とも違うようなことをやろうと思えばできるわりには、本当のところまだ使い物にならない、と思うと無様というより可哀想だ。

「やろうと思えばできるってことは、やらせようと思えばなんでもやらせることが出来るってことだからな」

低く呟いて、どうしてか自分が苛立っていることに気が付いた。何に? と考えるのは面倒だった。

「あ、の……」

上手く言葉がまとまらないような斎藤は、今日、三人ばかりの隊士を殺した。事前に事情も何も知らないままに、今日知らされて、今日殺せと言われてやってきた帰りらしい……そういや、三人とも斎藤とよく遊びに行っていたし、俺が飲みに行った時も『その時は一緒に斎藤隊長もぜひ』とか言われたなあと思い出す。土方も近藤さんも本当に趣味の良いことをする。

「ひとを、殺すのは慣れてる」

ぽつんと彼は言った。普通じゃないということは分かっているのだろうが、言葉をそのまま聞きながら、座敷に座ったが、いつものように元気な雑言は飛んでこなかった。

「慣れてるってへんな言い方だけど、なんでだろ? 殺し方? 急に怖くなった」
「……そうか」

血を吐き出すような言葉は、彼自身の苦悩、なんていう綺麗な言葉ではなくて、斎藤の中の何かが斎藤から離れていくようなそんな言葉に聞こえた。

「昨日まで、そこにいて、一緒に飯食って。今日だってそのつもりだったヤツのこと、僕が殺した。でも、それ以上に、殺したことに僕は優劣をつけるのか?」

温かさの通っていない冷たい血を吐き出すように彼は言う。

「友だちだったヤツを殺せって言われて殺したらこんなに悩むのに、そうでもないやつを殺せって言われて殺すのには慣れてるって、僕おかしいだろ、なにこれ。悪いやつなら、国のためなら殺してよくて、だけど国のためでも友だちなら殺すの悩んで、そんなの卑怯だろ」

卑怯、と彼の言ったことを繰り返してみる。沖田なら考えもしないことだろう。山南先生なら考えて飲み込むことだろう。俺はどうだろうな。卑怯なことは嫌いだが、必要なら殺すだろう。
斎藤は若いし賢い。考えて考えて、そうして使った手が、殺したその行動が、自分が間違っているのではないかと考えることが出来てしまう。

「可愛い」
「え?」

だから出てきた言葉に困惑したような斎藤に、聞こえていなければいいと思った……本心だったから。

「俺が差配したの知ってたか?」
「な、にを?」
「今回のおまえが殺した相手。実際の命令だのなんだのは土方だったろうが、内偵や白黒の見極めだのの差配は俺だった」
「うそだろ」

座ったまま髪を撫でて膝に乗せて、可愛いと思いながら言えば、絶望したような目がこちらを見上げる。少し面白そうだとか、憐憫だとか、そんなものはもう忘れてしまっていいだろう。

「おまえは分かってたのかよ、知ってたのかよ」

耐えられないだろうなと思ったら嬉しくて仕方がなかった。土方に、近藤さんに命じられたならそれはやるしかないだろう。いくら相手が友人でも、それが命令なのだから。だけれど裏では全部俺も知っていて、その準備や差配をしていたと言われれば、こいつは気付いてしまうだろう。

「試された? 殺せるか、試されてた?」

壊れていく。いや、俺が壊していくのだと思ったら、楽しくて嬉しくて仕方がない。

「上手くやれたじゃねえか」
「や、めろ、頼む、やめてくれ」
「褒めてんのに」
「新八、待って、どうすればいい? もう殺しちまって、もう」

どうすればいい、か。そうだな、いい機会だしもらっておこう。
買えるものは買っておくし、もらえるものはもらっておく。俺の性分のようなものだと思う。
世の中には金で買えるものもあれば、物で交換するものもある。それぞれ等価値ではなくてもいい。
欲しいと思ったものは欲しいと思った時に、それに値するものを持っているならもらっておいた方がいい。
そうして俺はたまたまだが、値するもの、返せるものを持っているようだ。偶然? 偶さかだが然るべくして起こることだから、偶然ってのもいいもんだ。

「偶然、俺の仕事のお鉢がおまえに回っちまったんだから、俺のせいだと思っておけよ」
「新八の、仕事? 新八の、せい?」
「そう、俺のせい」

困惑したような、だが投げ出せることに気が付いてしまったような罠に掛かった斎藤を膝に乗せたまま抱き留めて、そうしてもう一度呟いた。

「可愛い」

「あ、の」
「怖いか?」
「違う、けど……やったことないから、面白くないかな、とか」

背伸びをするようなことを言う斎藤をそのまま組み敷いた。

「俺も普段は抱くなら女だけど?」
「……あ」
「ああ、別に嫌味じゃねえからこれ」

一瞬で捨てられたとでも思ったような顔をするから可愛いもんだな、と思いながら着物を脱がせた。
首筋を噛んだら体が跳ねて、それを抑えつけるようにして言う。

「手に入るなら何でもいい」

だから俺が間違っていた。
そうだな、それからいろいろあって斎藤は間違いなく『成長』した。
俺との情人とかいう関係は続いたが、精神的な部分どうこうは別にして、彼は人を殺すということと自分の感情を切り離せるようになっていった。
そこは誤算だったのかもしれないが、いいことだったのだと思う。

「だが誤算には違いがなかった」

だからそれが誤算で間違いだったということにもなる。
俺は結局、短慮を起こした、というよりは新選組というものに先を見出せずに連中と袂を分かつことになった。

「もっと溶かしておけばよかった」

周りの人間に気が付かれないように軽く唇を噛み切って呟く。
思考も何もかも溶けて人を殺してもこちらに頼れるように、忘れられるようになったのなら、もっともっともっと。
新選組を離れる時に、声を掛けた斎藤はこちらには来なかった。新選組に残ってそのまま北に行ったという。
その後になって互いに生き残って会うことになるくらいには互いに運は残っていたらしい。
そうして、こうしてまた作り物の甲斐の地で出会って、俺も隊服を着られるようになるくらいには、運とやらは残っているらしい。

だけれども。

「誤算だ、計算違いだ。値千金の桁違い、そうだな、俺は間違えた」

スーツ姿の斎藤を見て呟いた。
手に入れなければ気が済まない。そういう性分なのだから、仕方がない。

伊東と服部、それに今川の大将殿の件が片付いて、武田の大将は上杉の軍神の姐さんに用があると言うし、雑賀の嬢ちゃんはチケットの余りがあるからカルデアに行くと言う。

「嬢ちゃんのチケットって俺はまだ使えるんじゃねえの?」
「チケットをご所望? 購入の意向?」
「チケットが今から必要なら何枚でも買うんで俺もカルデアに行きてえつったら連れてってくれるか?」
「……店番もしてくれたし、チケットは別枠でカルデア行きなら構わない。武田と上杉は喧嘩中だから、今のうちにカルデアに侵入する」

なんか物騒だなあ、と思いながらゴーグルを着けた嬢ちゃんを一応止める。確か変装用とかで照準とかにはあんまり意味ねえよなそれ……? あるんだっけ?

「そこの車で行くなら運転するか?」
「……そうしてもらえると助かる、ちょっと運転疲れ……それに、チケットと言ってはいるけれどカルデアって勝手に入ったら普通怒られる、と思う……」
「それはそうだな」

上杉の軍神さんに話通しといてくれって頼んだ方がいいって大将にも言っておくか……。

「そういう訳で、晴信と雑賀のと新八とがカルデアに合力してくれるということになりましたよ! 『徒歩で来た』って実際にやられると意味分かりませんが!」
「一応それぞれ車には乗って来ただろうが!」
「どういうワケだよ。ねえどういうことなの? カルデアに徒歩で来るサーヴァント最近多くない? 人斬りサークルとか秩序守るのが得意なはずなんだからなんとかせえよ沖田」
「沖田さんに言わないでください。ていうか今回はノッブ周りの方々……戦国時代方面ののやらかしの方が多かったのでは?」
「おまえんとこの伊東某とかもじゅうぶんやらかしてましたー!」

「あ……」

そうやって入り込んだカルデアの廊下。案内はしてもらっていたし、部屋の作りも建物自体も、だいたいのことは分かった。だいたいのことは分かっていたからここまで会わないでいたのは逃げられていたのだろうということもだいたい分かっていたから思わず壁に手をついた。

「俺が間違ってた。悪かった、斎藤」
「や、めろ」
「今更やめる訳ないだろ。そこにあるのに……いや、ここにおまえがいるのに」
「なんで、いるの、なんでなんでなんで」

壊れたように斎藤は言った。甲斐ではあんなに恰好つけていたのに。いや、あの日に別れた時にはきっぱりと俺から逃げていったのに。

「俺が間違っていたし悪かった。おまえを逃がすなんて」
「やめて……」

怯えた声が愛らしい。変わらずに可愛いと思うのは俺がおかしいのかもしれない。

「こわい」
「上等だ」

笑ってそのまま口付けたら斎藤は拒むように、だがどこかなにか期待でもするように、昔と変わらずに柔らかく薄い唇は呼吸を求めて小さく動いた。開きはしないのがどうにも可愛らしい。
唇を離して、腕の中で囲った男は、観念したように俺を引っ張った。

「部屋」

ずいぶん幼く聞こえる声で小さく言って、彼に引っ張られる。逃がさないようにしないといけない。今度こそ絶対に。

「ごめん」

斎藤の部屋は俺のと変わりがなかった。ずいぶん先に来ているのだからもっといろいろ改造していそうだが、と思ったが、こざっぱりした、というか物がないというか。ベッドと机や椅子にタブレット端末といったところか。

「電力とか考えたら常に召喚されてるワケでもねえし」

こちらの疑問に気が付いたようにぽつんと言った彼に、相変わらず遠慮がちなところがあると思えばやはり可愛らしい。なんか今日は可愛いとしか考えてねえな。小動物でも追い詰めてる気分だ。

「そういうもんか?」
「そういうもんだと思う。沖田ちゃんとか副長とかは知らねえけど。僕より先だし、織田さんとかとは僕はあんまり関係ないから」

そう笑ってみせた斎藤がベッドに座ってもう一度言った。

「ごめん」
「何が?」
「あん時、ついて行けなくて、ごめん」
「謝んな。別にいいだろ、あの時はもう新選組も幕府も新政府も何もかもぐちゃぐちゃになってた。おまえの判断も俺の判断もどうにもならなかった」

そう言われて応える。心の暗い部分では、その思考回路も何も考えられないように溶かしておけば間違いなく着いてきたのに、俺はだから間違っていたのだと言ってやりたいのにと思いながら。
……そうだ。俺は間違っていた。
斎藤は俺を選ばなかった。新選組を選んだ、というワケでもなかった。
それはどちらも結果的なことだ、副次的なことだ。だが、俺は選ばれるほどには思われていなかったと思った。
それくらいならもっともっともっと、何も考えられない人形にでもしておけば良かったと思った自分もいるし、それが馬鹿馬鹿しいと思ったこともある。
悲しさや疚しさを和らげる情人や恋人であっても、本当に選ぶ価値がなかったと言われればそれまでだと思えるほどに簡単に諦めがつかなかったとすれば俺は間違っていたのだろうとしか思えない。

「あの時、新八に着いて行けば楽だったろうなと思ってる、今でも思ってる」
「……は?」

だからその斎藤の言葉に驚いた。俺が考えていたこととは少し違ったからだった。

「その先のことも、今までのことも、全部新八のせいにして、新八の言ったことだからってそうやって生きていけるのは楽しいだろうなって。だって最初からそうだった」

そう言われて思い出す。斎藤が殺した相手の御膳立てをしたのが切欠で関係が始まって、と。

「楽というより、楽しいだろうなって思った時に、新八のせいにして殺した時と同じくらいゾッとした」
「なに言ってんだ」
「僕、今までずっと新八のせいにしてたのかって。そのくせ新八のこと好きだったのかって思ったら、駄目だった」

そう言って、斎藤は座ったままで伸び上がるようにしてこちらを抱き寄せた。彼を押し潰してしまわないように、そのまま抱きかかえるように抱き締める。言いたいことが分かってしまったら、分かっていないままに追い詰めていたのはこちらだったと思い知らされた。

「好きだよ、好きだったし、今でも好きだ。だけど、分かってなかった。分かってたはずなのに、新八が好きだから、好きで仕方ないから、新八のためとか、新八のせいにしたら楽しくて楽になっちまう。でもそれで新八がどうなるかまでは考えてなかった」
「考えなくて良かったんだよ」

相変わらず細い体を抱きしめて、そのまま押し倒した。

「それじゃ駄目だろ、こんなに好きなのに」
「あんまり好き好き言うな、煽ってんのか?」
「そうじゃ、ないけど。よく考えたら、なんつーか、言って、なかった」

真っ赤になって言われた。可愛い。自分が袂を別つことになったことの告白よりも、好きだと言うことの方が恥ずかしいらしいのは斎藤らしいと言えばいいのか何なのか。

「新八は、僕のこと」
「好きだよ」

誰よりも、何よりも。

金を積んでも、手柄を積んでも、物を積んでも、時間を積んでも、それこそ愛を積んでも、手に入らない時は手に入らない。

そうだというのに、その意志一つであっさり掌中に転がり込んでくる。

「そういうおまえがあんまり好きすぎて、愛おしすぎて心配になるくらいには」

「あっ、んっ」
「口開けろ」
「んぁっ」

唇を閉じようとするそこを開けさせて、小さく開いた口から舌を引きずり出して絡めるようにしながら軽くのその先端を噛んだ。

「んっ、ぁ」
「好きだよな、これ」

ただ口付けるよりも舌を噛まれる方が好きなのは被虐趣味なのか癖なのか。変わっていないことが面白くて可愛くて、そのままゆっくり口付けながら服を脱がせて体に触れた。

「細い。食ってんのか」
「食べてる、けど、んっ、やめっ」
「やめたら出来ねえだろ」
「あっ、こ、この体で、やったこと、ない!」

必死に主張してきたが、舌の感じからいったら覚えているようだし、とそのまま体を撫でていたら、だんだんと目許が赤くなって緩んでくる。

「んっ、ん? なんで? んぁっ」
「年齢的にも何回も俺とやってた頃だから癖になってる、とか」
「ちがっ⁉」

喘ぎながら不思議そうになっている斎藤に言えば必死に否定されたが、そうとも言えないだろう。俺には都合のいいことしかないし、と思いながら軽く体をなぞっていたら、斎藤になんか投げつけられた。

「んだよ」
「そ、そうだとしても、さ、すがに無理だから!」
「あ?」

なんかの入れ物? ローション?

「潤滑剤みたいな?」
「直球に言うな! 仕方ないだろ、だからいくら癖とかあってもこの体で」
「この体でヤる気はあったから準備してたのかよ、殊勝でいいじゃねえか」

そう言ったら真っ赤になってなにか不明瞭に叫んでいたが、可愛いだけだな。そう思いながらその液体を取り出して軽く斎藤を引き寄せる。

「力抜け。変わってねえなら場所は分かる」
「あんま、そういうこと言うな」
「その方がおまえも楽だろ」

柳に風というやつだな、と思いながら後ろに指を入れたらびくんと体が跳ねた。抑えつけて犯したい欲を堪えながら、このあたりだなと浅い部分で覚えている彼の弱いというか好きな部分を軽く押し広げていたら、堪えるような甘い声がした。

「ぁ、んっ」
「声出せ、きつくなるぞ。つーか聞かせろ」
「あっ、やめっ、なんで、なんでまえといっしょ、だめ、しんぱち、やめて!」
「なんでやめなきゃなんねえんだよ」

ぐち、と後ろを犯しながら、勃っているそれを握りこんだら悲鳴がした。可愛いだけだなと思いながら一緒にやってやればあっさり達したのと一緒に後ろも締まって、そんなところも変わっていない。

「あっ、だめ、ぁ」
「おまえ、後ろと一緒にイく感覚好きすぎて駄目だろ、もう」
「んっ、やめ、も、駄目」

ふるふると目を閉じてこちらに縋ってくるのが可愛くて、そのまま指を抜いて体を固定した。あんま拡がってないがいいか、もう。

「もっと好きなもんやるから」
「待て、ちょっと今、無理!」
「知らん」
「うぁっ、待て、待って、ぁ……」

入れただけでイッたらしくてナカは締まるし喘ぎ声も止まらないが、奥まで入れてぶつけているのだから我ながら容赦ないな。まあいいか。

「すき、すき、だめ」
「どっちだよ、可愛いな」
「新八、すき」

容赦できなくなる。猟奇的な気分になる。可愛いから。好きだから。愛しているから。

というよりも、何よりも。

「逃がした俺が間違ってた」
「あっ、んぁっ、まって、まって」
「待たない。もっと寄越せ」

悲鳴のような声を奪うように口付けて中を犯して、逃げられないようにしないといけない。

「好きだよ、斎藤。愛してる、前からずっと」
「すき、大丈夫だから」

そう言われて斎藤を抱き込んだ。

好きだから逃げ出すなんて愛くるしい、それなのに思う通りにならない可愛い恋人は今度こそ逃げられないようにしまっておかないと。

「機を見るに敏? まさにその通りだな」

一度逃がしているのだから。

「二度目はない」

おまえはもう逃がさない、逃げられない。

 

 

 

 

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2026/3/4
「しんかいからのあまもり」
「催眠」
「物をぱらぱら壊す」
永倉さんってはじめちゃんへの破壊願望在りそうだよねってたまに思う。

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