「今日は局長、いないんでな。」
「すみません。」
「しゃべんなよ。傷口開くぜ。」
「…」
「麻酔かけるぞ。」

落ちた薄く白い目蓋を確認し、ぱっくりと引き裂かれ血を流す胸元に器材を宛がう。虚にやられること自体が珍しい彼女の身体を自由にできるというのは、研究者として喜ぶべきことなのかもしれない。だが、そんなことはどうでもよかった。
(いっそのこと…)
不毛な考えが首を擡げて、彼女を『修理』する手を止めさせた。
顔を覗きこむが、薄い目蓋が開く気配はない。その白い頬に、ひたりと器材を放した手を添える。自らの冷えた手に伝わる体温に、感情の奥底に沈んだ激情が爆ぜる音がした。




―いっそのこと、この手で君をバラバラに引き裂いてしまえればいいのに!


破壊衝動




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2010/10/28