ぱたぱたと廊下を走る音がする。志摩家の一室。それを聞いた蝮は、それがこれから夫となる男のものなのだとすぐに分かった。


日のあたる道


「蝮。起きとる?」

 やはりそうだ。障子の向こうから掛けられた声に、蝮は布団の上で起き上がって読んでいた書物を閉じる。

「起きとる」
「そか」

 すると障子がからりと開いた。

「辛ないか?」
「大丈夫や」

 微笑んで応じると、「せやったら……」と柔造は箪笥に向かう。

 そのまま、襦袢から着物に着替えさせて、柔造は彼女の手を引いて志摩家の敷地から出た。
 着いた先は虎屋旅館。

「どないしてん?」
「あー、あんな。坊、冬休みで戻らはったんよ。ほんで、蝮と話ししたいて言うてはるから…」

 すると蝮は困ったようにも焦ったようにも見える顔をした。

「なんですぐ教えてくれんかったの。廉造帰っとったから、竜士さまもお戻りやないの、って言うたやない。ご挨拶もせんと、不調法してもうた」

 口を尖らせて言う蝮に、柔造は、「俺のことは言わんでええ。そのうち話したいさかい、その時でええわ」と言っていた勝呂のことを思い出す。彼なりに気を使ったのだろう。そのことは言わないでおこうか、おくまいか、少しだけ考えて、口を開く。

「すまんかった。坊が言わんでええて言うとったから。部屋におるそうや。迷わんな?」

 そう言うと、蝮はこくんとうなずいて、旅館の中へと入っていく。それを見届けて、柔造は少しばかり壁にもたれかかる。それから、彼女に気が付かれないようにそろそろと旅館の中へと入っていった。




「竜士さま。宝生蝮です。お戻りなさいませ」
「おん。入り」

 承諾を得て、廊下に手をついた蝮は襖を開ける。

「お久しゅう」

 不浄王の一件ののち、言葉を交わさなかった訳ではないが、どんな言葉で彼に接せばいいのか判り兼ねる、というように、蝮は取り敢えず入り口近くで手をついて、挨拶をした。

「顔上げ。あー、無理させてへんか?体調いい時でええって柔造に言うといたんやけど」
「無理なん、とんでもないですわ。竜士さまが戻らはったのに、ご挨拶もせなんで……」

 蝮は微かに笑って言った。眼帯は痛々しいが、顔色もいい。それに勝呂も一つ笑顔を落とす。

「俺に挨拶なんぞ、せんでもいいわ。それよりこっち来ぃ。火鉢。寒いやろ」

 少しだけ躊躇うふうを見せて、それでも彼女はその言葉に従った。
 だけれど、あたれ、と言う彼に首を振って、蝮はもう一度畳に手をつく。

「竜士さま、不浄王の一件、申し訳もございません。竜士さまにお縋りして、ご学友に助けていただいて、わたくしめは竜士さまに申し上げる言葉がございません」

 ずっと、言わねばならないと思っていた言葉は、案外すんなり音になった。それに勝呂は目を見開く。

「お許しを、請おうなどと、思いもしません。どうぞ、お許しになどならないでください」

 渦巻く暗澹とした思考に反して、言葉は滔々と零れた。許さないでほしい。この、守るべき存在を、己は裏切ったのだ、という思いが胸を締め付ける。

 頭を下げてそう言う蝮の、その指通りの良い髪越しに、勝呂は頭を引き寄せる。

「竜士さま…?」

 そのまま彼はその華奢な身体を抱き寄せた。

「許してくれ、て言わなあかんのは俺の方や。不浄王のことも、明陀のことも、ずっと独りで背負おうとしとったお前を守れへんかった俺は、『坊』失格や」
「そないなこと、あらしません」

 蝮は言い募る。そんなはずない、裏切ったのは己だ、と言うように。

「それにや。お前のおかげで、明陀のしがらみはのうなった。むしろ感謝しとるくらいや」
「そんな…」

 その先は、言葉にならない。勝呂はあやすように抱き寄せた彼女の頭を己の肩口に押し当てて、髪を梳く。

「辛かったな」

 涙がこぼれそうだ、と蝮は思った。そう思ったら、素直に隻眼からはぽたりぽたりと滴が落ちた。

「竜士さま、ごめん、なさい」
「謝らんでええ」

 本当は逆だった。泣きじゃくる彼を抱きしめて、大丈夫だとなだめるのは己の役目だった。だが、この成長した大事な少年は、今、己を大きく包む。それは、柔造がそうするのとはまた違っていた。
 それでも蝮は、ごめんなさい、ごめんなさい、と言い募る。その度に、勝呂は髪を撫でる。




 やっと蝮が落ち着いたところで、勝呂は彼女の背中をぽんぽんと叩きながら言った。

「柔造とは上手くいっとるか?」
「は…え…!そっ、その!」

 目に見えてうろたえた彼女と、抱き寄せた頭についている耳が赤くなるのに、勝呂は微笑する。
 もう志摩家で生活しているし、この反応を見るに、上手くいっていないことなどないのだろう。
 その反応を見て、勝呂は安堵に似た息をついた。息をついて、それから、一瞬彼女を抱きしめる腕を解放すると、今度は彼女に抱きつくように蝮を抱きしめて、今度は自分が彼女の肩口に額をつける。―まるで、幼い時のように。

「竜士さま?どうしはりました?」

 いつものくせで、蝮はその頭を撫でる。やはり、と勝呂は思う。やはり、この方が自分たちには合っている関係なのかもしれない、と。そう思ったら、少しだけ苦笑が漏れた。しっかりせえ、と自分に言い聞かせながらも、彼女のあたたかな手には抗えない。

「蝮な」
「はい」
「柔造のもんになってまうんやな」

 その言葉に、蝮は一瞬目を見開いて、それから柔らかく微笑んだ。彼の言葉に、他意などない。男女の好き、は、そこにはないのだから。ただ、単純に思う。彼女のあたたかな手を、己は失うのだろう、と。

「なん言うてはりますの。蝮はこれからもずっと竜士さまのおそばにおりますえ。確かに、もう祓魔師として戦うことはできません。罪科も背負わなあきません。やけども、私はずっと竜士さまのおそばで、竜士さまをお守りいたします」

 その言葉に、勝呂は僅かに目頭が熱くなるのを感じた。

「それに」

 蝮は、彼のそれを感じ取ったのか、肩口に押しつける彼の頭を優しくなでる。

「私は、竜士さまが納得してくれはって、お許しをいただけないのでしたら、柔造…志摩に嫁ぐことはございません」
「なん言うとるのや!」

 その言葉に、勝呂はばっと顔を上げる。蝮は驚いたように目を見開いた。彼の瞳からは、一条涙が伝っていた。

「お前は幸せにならんといかん!俺が座主の跡目やさかい言うんやろうけどな、そないなことあらへん!もう気にせんでええのや!幸せにならあかんのや!」

 すると蝮は、今度こそ本当に、穏やかに、だけれども困ったように微笑んだ。

「まさか。竜士さまが座主になられるお方だから、お守りする、なんて言いませんわ。ただ、家族から反対されたら、あては、柔造とだって結婚なんぞできやしません。そら、私も、柔造とは添い遂げたいと思います。せやけど、大事な竜士さまが駄目やと言うんやったら、私は結婚なんぞいたしません。やって、仮に結婚したかて、そういうのとは別に、私は竜士さまをお守りいたしますもの。そばにおりますもの。そん家族から反対されたら、全然、幸せとは違うんです。せやから、大事な竜士さまから反対されたら、結婚なんていたしません」

 穏やかに、蝮は言った。家族―明陀を、父を信じなかった者、そうして幼い日に裏切られたこと、その全てを、抱きとめて、笑ってくれたのは彼女だった。

「蝮ィ……」

 声はみっともなく間延びして、涙のせいか掠れた。

「竜士さまと家族やなんて、おこがましいですやろか?」

 ころころと鈴を転がすように彼女は笑った。

「そないなことあらへん!」

 そう言って、もう一度、勝呂は蝮を抱きしめる。

「今度は、俺が―俺だけやない。お前の一等傍におる柔造が、明陀のみんなが、お前を守る。お前が、ずっと俺たちを守ろうとしとったみたいに」
「竜士…さま…」

 二人して泣きじゃくる。ぽたりぽたりと勝呂の涙が、蝮の涙が、頭を押し付けた相手の肩口を濡らした。

「幸せになり。なあんも考えんで、幸せになり。気張りすぎやったんや、お前は」

 嗚咽を噛み殺しながら勝呂は言って、それから彼女を抱きしめる腕を放す。

「柔造にお前を取られるのは寂しいわ。せやけど、ええな、お前は幸せになり。約束しい」

 寂寞を、感じても構わないだろう。だけれど、それ以上の喜びがある。

「はい」

 静かに笑って、蝮はうなずいた。






「聞いとったか」
「へあ!?」

 蝮が連れ出された方とは反対側の廊下に声を掛ける。

 蝮は先程、虎子によって連れ出された。母と彼女の言うことには、「花嫁修業」らしく、蝮は時折虎屋に来ているそうだ。そんなに大それたことではなくて、料理の練習とか、そういうことだろう。それはもう楽しそうな己の母に、勝呂は一つ息をついた。蝮を振り回していること請け合いだ。
 だが、気晴らしになるのならそれもいいだろう。
 それよりも今は、奇声を上げて逃げだそうとしている婿殿だ。―いや、嫁ぐのは蝮だから、婿とは言わないか、と、そこまで考えて、勝呂は額に手を当てる。

「心配性も、大概にせえよ」

 からりと襖を開ければ、この寒い中、廊下で気配を殺していたらしい志摩の跡取り、柔造が引きつった笑いを顔にのせた。

「どうも」
「どうも、ちゃうわ!風邪引くやろうが!」
「いやあ、坊は優しいなあ」

 取って付けたように言ったら、パシンとはたかれた。

「ちゃうわ、あほんだら!蝮にうつったらどないするんや!」

 ひどい!という叫び声が虎屋の廊下に響く。




 遠慮も何もなしに、柔造は火鉢にあたる。外は雪もちらついていた。相当寒かったとみえる。

「何やってんねん」

 頬杖をついて、勝呂は正直な感想を述べる。すると柔造はばっと顔を上げた。

「一応言うときますけど!ここ来たの5分くらい前なんで、盗み聞きとかしてませんわ!」

 一応ってなんだ、一応って。5分前、というと、二人して泣いていた頃か、と勝呂は考える。なるほど、盗み聞くほどの話はもう終わっていた。

「じゃあ、なんや」

 それはそれで決まりが悪くて、それでもやはり机に頬杖をついたまま彼をながめて言えば、柔造は逡巡するような色を見せて、火鉢から離れると、姿勢を正す。

「……なん?」
「坊に、言わなあかんことがありまして」

 締りのなかった顔は、今や、普段、勝呂や弟たちに接する彼からは想像もつかないほど真剣な顔になった。仕事をしている時の真剣さとも違う。己や末弟を叱る時とも違う。思わず自分も姿勢を正そうとしたその時だった。

「な…!?」

 柔造は、ゆっくりと畳に手をつく。

「なんや、急に」

 きっちりと頭を下げて、それから柔造は、口を開いた。

「坊に、お願いがございます」
「は?」

 ゆっくりと、柔造は息を吸う。勝呂は、何を言い出すのか、という体だ。柔造は、畳を見つめる視線を僅かに細める。そうして、空気を震わせる。




「蝮を、坊から頂戴するのを、お許しいただきたい」


「なん言うとんのや、今更」
「俺は本気ですわ」

 下げたことで見えなくなった顔に、彼は僅かに笑みをのせる。勝呂の声は、呆れにも聞こえた。だが同時に、寂しさをはらんでいるようにも聞こえた。

「顔、上げ。全く、夫婦揃って何やっとるんや」

 ふうと息をついて言えば、柔造は顔を上げる。僅かな笑みは、今度こそ、人好きのするいつもの、だがいつもよりずっと幸せそうな笑みに変わっていた。

「お許しいただけますか?」

 問いに、勝呂はもう一度息をつく。二人揃って、同じような事を考えているあたりが、もう腹いっぱいという気分だ。

「そういうことは、蟒に言え」
「蟒様にはもうお許しいただきました」
「俺に許可取ることと違うわ」

 精々冷たく聞こえるよう、切り捨てるように言うが、柔造の表情は変わらない。

「坊から許していただけんかったら、蝮が泣きます」

 分かっとるやないか、と言おうとして、勝呂はその言葉を躊躇う。まるで負け惜しみではないか、と思った。そう考えてから、勝呂はスッと視線を細める。彼女は、本当に惜しみなく、明陀というものに、家族というものに、愛を傾け続けた。―彼女が道を踏み外しても、それでも、己がその愛を享受していたことには何の疑いも無くて、そうして、戻ってきた彼女が未だ己を愛するというその言葉を先刻聞いた身としては、言葉もない。
 ここで、と考えて、勝呂は心中苦笑する。ここで、駄目だと言ったら、どうなるだろう、と。結果は変わらない気がした。そんなことで変わることはない気がした。
 変わるも何も、変える気などない。慕った彼女を攫っていく彼になんの言葉もない、と言えば嘘になる。だが、彼女は幸せにならなくてはならない。その幸せの一部に、己が含まれていると彼女が言うなら、それで十分だ。

「お前がなあ、蝮を嫁にするて言うた時、男やな、て思てん」

 承諾の代わりに出てきた言葉は、なんだか無責任にも聞こえて、勝呂は今度こそ本当に苦笑する。

「幸せにせえよ。幸せに出来んかったら、許さんからな」




 旅館の厨房の暖簾をめくる。昼過ぎ。昼の支度はもう終わって、夕食の仕込みはまだなのだろう。中から女将と蝮の楽しそうな声がした。

「美味しそうですなあ」
「柔造!」
「あら、どないしてん?」

 二人が振り返ると、柔造はにこりと微笑んだ。

「いや、そろそろ迎えに来なと思いまして」
「ちょうどええけど、ちょうどよくもないわなあ。今作り終わってんけど、お茶でもしよかと思っとったのに」
「そらすんません」
「はいはい、新婚さんのお邪魔はしません。蝮ちゃん、今日のは持って行っても重いさかい、家で柔造に作ったったらええわ。これレシピな」
「ありがとうございます」

 虎子から受け取ったレシピをよく見て、何か見落としがないか蝮は考える。健気なもんやな、と思ったら、柔造の頬は自然と緩んだ。

「大丈夫やと思うよ。上手くいったからおやつ代わりに竜士に食べさせるわ」
「今晩作ってみます」

 レシピから顔を上げて蝮は言う。見落としはないようだ。とすれば、今晩は彼女の新たに加わったレパートリーを楽しめるなと思って、柔造は蝮の手を引いた。

「いつもありがとうございます。ほんなら帰るか」
「せやね。失礼します」

 頭を下げた二人に、虎子は微笑む。

「優秀な生徒さんで次が楽しみや。気ぃつけて帰り」




「スーパー寄って行ってもええか?材料買うてくわ」
「おん。今日は何作ったんや?」
「茶碗蒸し」
「茶碗蒸しかあ…」
「すが入らんようにするの習ったんや。期待して、って言えるほどやないけども」

 ちょっとだけ俯いて彼女が言うと、柔造はその言葉を笑い飛ばす。

「期待するに決まっとるやろ。最近お前の料理が美味いて、家ん中で評判なんや」
「やめてや、恥ずかしい!」

 一しきり、今日の料理教室について話を聞いて、それから柔造はふと立ち止まった。

「坊にはお会いできたか」
「うん」

 知っているのに訊くのは、なんだか滑稽だ。そう思ったが、蝮は一つになってしまった目を細める。

「大きゅう、ならはった」

 いつの間にか、彼の背丈は己を抜き、いつの間にか、様々なことを見失って。

「不思議なもんやなあ。いつの間にか、ほんまに大きゅうならはった」

 守ると言った。小さかった彼が。横にいる男とは、また違う手だ。そんなふうに許されて、いいのだろうか、と思う。そう思って、道端だというのに、蝮はふと、彼の胸に頭を預けた。

「許してくれはるて」
「当たり前や」

 柔造はさらさらと髪に指を通して抱き寄せる。
 だけれど本当は、何もかも許さないと言われた方が楽だったかもしれない。幸せになど、なるなと言われた方が、良かったのかもしれない、と思う。その方が、もしかしたら、と思う。そんなこと、ありはしないのに。ありはしないと、知っているのに―いや、ありはしないのだと、彼の言葉によって初めて知ったのかもしれない。罰を、心のどこかで罰を望んでいた。

「浅ましい」
「蝮?」

 たった十五の少年に、己を罰せと望んだことの浅ましさに、彼を掻き抱いて初めて思い至った。今、己を抱く男に、罰をくれろと望むことの浅ましさに、やっと思い至った。だがその一方で、これからも罰を求めてしまうだろうということに、彼女は気が付いてもいた。

「許してくれて言うより、罰をくれろと言う方が、浅ましなあ」
「……そうやろか?」
「竜士さまに言われて思った」
「坊はそないなことは思っとらん」
「せやな。私が勝手に思ったことや」

 息をつくのと同じ速度で、彼女は応じる。それは甘えだ、と思った。許さないでくれ、と言える、そのこと。そのこと自体が、甘えなのだと。

「蝮」

 柔造は、いつになく真剣な声で彼女を呼んだ。彼の胸に伏せていた顔を、蝮はふと上げる。

「浅ましいか」

 真っ直ぐな瞳。浅ましいか、という問いに、うなずこうとして、蝮は失敗する。己の浅ましさを認めるのが怖いとか、嫌だとか、そういう次元の問題ではない。彼の瞳が、肯定することを許さなかった。

「俺は、浅ましいなん思わん。家族に、仲間に、いろんなことを、それこそ裏切ってもうたことを、罰してほしいと思うんは、そら、言われた方は辛いわな。せやけど、それは甘えやろ?許して欲しいと思いながら、罰してほしいと思う。それは甘えや。甘えたらええねん。今度は独りで気張らんで、甘えたらええ。俺もいくらかて甘やかしたるえ」

 甘え―言い当てられて、もう一度蝮は彼を見返す。すると柔造はちょっと屈んで、蝮の唇に口付けた。

「幸せになろう。坊に言われた。幸せに出来んかったら許さんて」
「私も言われた。幸せになるて約束しい、て」

 すると、顔を見合わせた二人は思わず笑ってしまった。幸せになれ、幸せにしろ。

 大事な家族に認められて、きっと幸せなのだ。そこには寂寞もあるのだろう。だけれど、蝮は柔造のものになる。柔造は蝮のものになる。

「『蝮を、頂戴してもいいか』って聞いたんや。そしたら幸せに出来んかったら許さんて言われたわ」
「私も、『柔造のものになるんやな』て言われて、その……戸惑った。せやけど、家族を守るのは私の務めや。そういうのと、幸せになるて、約束した。あては罰を望むと思う。これからもずっと。やけど、明陀のみんなに、竜士さま、それから柔造に、幸せになっていいのやと言われて、竜士さまの前で泣きじゃくって、いろいろなこと、分かった気がした。……柔造」

 そう言って、蝮はもう一度柔造に抱きつく。

「幸せになってええ?」
「当たり前や」
「やったら、お願い。幸せにしてや」

 道に日が差す。雪が、日に照らされてきらきら光った。




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という夢を見てPCに打ち込んで、満足するという夢を見たんだ。ひどい夢オチでした。指さして笑ってやりたい。 と思いながら必死に夢の中の夢を思い出して、夢の中の夢にちょっと盛りました。

2012/4/29

2012/7/31 pixivより移動