あかがね

「晋作、知っているか」
「何をだ」

 気怠げに返して、人の寝台に寝そべっている彼の髪が赤く長いことに、僕はどこか何か違和感のような、それでいてひどく懐かしいような気に、いつもなる。

「地獄の王は、人を裁く、という罪から毎日焼けた銅を飲むのだそうだ」
「ああ、それか。閻魔だったかな。確かに」

 確かに、と呟いてそのままごろんと転がった晋作の指が不意に僕に触れる。

「人であった誰かが、人を裁くなど、あってはならないな」

 人が人を裁くなど、とその傑物は続けて、それから僕を緩く撫でた。

「だから僕はおまえを責めない、責められない。どんなことがあっても、誰にもその罪を裁かせなどしない、久坂」

 言われて僕は、望んでいた言葉だと知りながら、どこか、何かが冷たくなるのを感じた。

「やっと手に入れた。僕自身にすら裁けない久坂玄瑞。おまえは」
「ああ、そうだな」

 僕は、俺は、おまえだけの―――


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焼けた赤銅を飲む地獄の王

2023/4/17