本音
「久坂、おまえほんっと」
寝台の上でぐったりした様子の晋作にねめ付けられた。
「ほんっとに、絶倫」
「は?」
忌々しげに言われた言葉に首を捻れば、それさえ頭にきたのか晋作の白く細い手が伸ばされる。
「加減しろ」
その手を取って、思わず笑った。
「どうした、色男?」
そうからかったら、顔を赤くして歯噛みした晋作に、どうにも絆されている。
*
切欠は、というか確かに誘ったのも悪いのも僕だよ!
そうだよ、どうせ!と思いながらがんと枕を叩く。水を取ってくるとか言って久坂は部屋から出ていた。水道水でいいんだけどと思ったのに、ミネラルウォーターかペットボトルでも持ってくるつもりな甲斐甲斐しいというか律儀な男を思い出すと顔が更に赤くなった。
『久坂はさ、真面目だから』
『なんだ?』
『いやー?カルデアでこう恋仲になったしいっそのことセックスしたいなぁ、なーんて僕は思うワケだけど、色男の僕と違ってこう、ね?』
『……何が言いたい?』
一拍置いて問い掛けてきた久坂に笑って言った。
『そこまで経験もなさそうだし、僕が下でもいいんだよ?』
本気じゃなかった。そもそも久坂が僕を抱くなんてあり得ないだろうし、嫌がられるくらいならこっちから玉砕した方がいいし、そうしてそれなら年上でずっと袖にされてきた僕が押し倒してやる、くらいの気概で言ったことだった。
本当に、そのつもりだった。
『そうか』
『……うん?』
だから、久坂の返答の意味が分からずにいたら、急にベッドに押し倒された。何だってんだ、と思ったら、彼は笑う。
『そうまで言うなら晋作が下でいいな、色男』
『はい?』
何言ってんだコイツ。
『ローションとかいったか、他にも色々と準備はしていたが使う機会がなくてな』
だから、何言ってんのおまえ。
『晋作が嫌がりそうだと思ったが、色男で下でも良くて、か』
『ちょっと、待て……!』
『我慢していたのが馬鹿らしくなってきた』
とかなんとか言われて、僕はあっさり処女を失ったのである。いや、これ処女って言うの?女?ナニコレ?
そうして更に言えば、回数を重ねるごとに分かったのは久坂が尋常じゃない程の絶倫というか体力ありすぎて僕では付いていけないのに無理やりにでも、引っ叩かれてでも褥に付き合わされるそれに、僕も完全に絆されているということである。
誰のせいだって?僕だよ!!
*
「無茶苦茶なんだよ」
「今更。一応、加減はしていたんだがな」
「嘘を吐くな!こんなの普通じゃないのは流石に分かるぞ!」
「色男だから、か?」
戻ってきた久坂に水を飲まされてからかわれる。ムカつく、ほんとに、ほんとにムカつく。
「色男でもこんな経験ないっつの」
悪態をついたら久坂が軽く笑った。
「そうでないと困る」
「は?」
少し睨んだら、彼はさらに笑う。
「嫉妬深いからな、僕は」
言葉に僕の顔はみるみる赤くなった。何なんだよ、こいつは。
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2023/4/27