いじわる

「せんせって、ほんとーに童貞だったんです?」
「……は?」

 裸のまま寝台にごろごろ転がりながら晋作に言われる。とりあえず服を着なさいと言おうかとも思ったが、問い掛けがあまりにも突飛で言葉を失った。

「いや、まぁね。キスひとつ知らなかったし、エッチも初めてだったし、実感として知ってますけど」
「……何が言いたいんですか、君は」

 こちらを侮辱する意図はないというか、どこか拗ねたような晋作の髪を軽く撫でれば、彼はその手にじゃれつくように、それでもどこかむくれたように言った。

「これです!キスもすーぐ上手くなっちゃうし、エッチだって絶倫なの?って感じだし、そもそも何も知らなかったくせに僕のしてほしいことなんだってしてくれるとかスーパーすぎません、僕の先生?」

 そう言ってはむはむと撫でていた手に口付け始めた晋作に呆れて、それでもその姿がどうにも可愛らしくて、軽く後頭部に手をやる。

「はえ?」
「その『エッチ』という呼称をやめなさい。せめてセックスとか言えないんですか、晋作」

 そう言ってそのまま口付ける。最初に彼がしてくれた手ほどきなどもう知らない、と思いながら。

「んっふぁっ」

 舌を絡めればぴちゃりと淫靡な水音がして、それから晋作の荒い呼吸がする。

「ふっぁ……んっ」

 戯れに舌を離して、上顎を舐めたり、歯列をなぞったりしてくすぐってみれば、ぼーっと上気した顔の晋作がこちらに寄り掛かってきた。

「上手いですか?」

 ぼんやりして赤い顔の晋作にそう問い掛ければ、彼は一言言った。

「いじわる」


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2023/4/23