阿頼耶識


 すべては余から生まれた。
 これは驕りではない。
 世界の創造とはそういうものだ。
 創り、壊し、また創る。
 完璧な世界ができるまで、完璧な人間が生まれるまで、完璧な悪が世界を覆うまで。
 余が、認められるまで。

「そういうことだったのかもしれぬ、と今さらながら思う」
「……アンタを認める存在、か」
「そうだ。認めて、必要として、縋って……余は世界を創り出し、悪で以ってこれを治めたのに、誰かが振り返ることをいつしか求めてしまった」


 あらゆる命に余は『命』を与えた。

 意味を与えた。
 機能を与えた。
 業を与えた。


「創っても造っても上手くいかない。そうしているうちに狂ったのは余のほうだ」
「貴女は狂ってなどいない」

 地獄の王が言い募る。ベルゼビュートを余はゆっくりと見た。
 予感がする。
 万物は流転し、また世界は闘争の渦に堕ちる予感がする。
 それは余がこの男を選んだからだと、余は知っていた。

「人は愚かだ」
「だから貴女がいる」
「だが余も愚かだ」

 ああそうか、そういうことか。
 すべての起源の余が愚かであれば、人は愚かになるだろう。

 それでも我らは繰り返す。
 わたしの世界が選ばれる、その日まで。


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