眼識
気が付くと目が宇佐美を追っている。
「飽きないな」
本部に顔を出した彼女はまだ俺に気が付いていない。
彼女を見ているのは本当に飽きない。どうしようもないくらい小さなことで笑い、驚き、誰かに話しかける。その明るさは天性の物だろう。
いつ気が付くか試してみようかとも思ったが、飽きないなんて言いながら、俺は結局声をかけてしまう。
「宇佐美」
たった一言で彼女の視線はこちらを向く。瞳が俺を捉える。
「風間さんだ!」
次に出てくる言葉はいつも通りだった。風間さん、でも、こんにちは、でもなく、まるで大きな発見でもしたかのように「風間さんだ」と彼女は言う。それがどうしてかいつも好ましかった。かつては違った。彼女が自分の部下だったころは違った気がする。でも今は、彼女の瞳に映る自分が、見つかる自分がどうしてか好ましかった。
「訓練終わったとこですか?会議にいなかったから」
「そんなところだ」
言って俺は当たり前のように歩き出す。当たり前のように彼女はついてくる。その事実がひどく好ましかった。
休憩コーナーの端にある自販機に硬貨を入れて、温かいココアのボタンを押す。俺はこんな甘いものを飲まない。
「くれるんですか?」
当たり前のようについてきたのに、驚いたように目を見開いた彼女が、やはりどうしようもなく可愛らしい。
何度見ても、何度やっても、彼女の瞳は俺を捉え、俺は彼女を見つめ続ける。
眼識 視覚