身識
刀が肉を裂く感触に私は恍惚としていた。
傷、皮膚を焼かれるような感覚。
ツウと傷口から流れた血は、けれどすぐに止まった。その傷はもう癒えた。
何度でも繰り返される傷と再生。何度でも繰り返される死と再生。
傷という皮膚感覚、接触、死という感触。
私は闘争を愛している。この男がそうであるように。
「違いますね」
私は永遠に戦うために回道を身につけたのではないと私だけが知っていた。
傷をつける誰かがいるたび、戦うことができる誰かがいるたび、皮膚が裂けることを認識するたび、骨が軋むことを認識するたび、私は私自身がまだ生きているということを知ることができた。
倦んでいたのだ。いくら斬っても、斬っても、私の欲は満たされなかった。
私は生きるために剣を振る。生きることを知るために剣を振る。
「だから貴方は私に憧れてはいけない」
闘争のみを望むのならば、貴方は私よりも遥かに正しい。
永遠に戦うことができれば、永遠に私は生きることができる。
だから。
だから、貴方が私を倒すというのなら、私はこの不毛な日々を終わらせることができる。
「ずっと待っていた」
貴方だけを。
私は死のために剣を振る。死を知るために剣を振る。
ああ、彼の叫び声が聞こえる。私はもう助からない。
喜んでください、祝福してください。
私はやっと、この名を、貴方に譲り渡すことができる。
彼の手が私の傷口に触れた。その感触が焼け付くように残っている。
身識 皮膚感覚