「コーヒー……?」
「嫌いでしたか?」
「いや、嫌いではないし眠気もあったから助かるんだが、わざわざ済まないと思っただけだ。ダービー……テレンスの方だな。彼も淹れてきてくれることがあって助かるが、面倒をかけている気がして」
「面倒、ですか?」
「面倒……違うな……なんというか、おれはコーヒーは別段インスタントでも構わないと思っている。しかしこの香りからするとお前が淹れたのもおそらくドリップコーヒーというか、そういうものだろう? 時間も手間もかけなくていいというか」
「め、迷惑でしたか……?」
「ああ、そうではなくて。かえって手間をかけさせて済まなかったという意味だ。言葉が足りなかったな。いただいていく」





「人って逆パターンで、気遣われて心が折れることあるんですね」
「ありますよ、しかもあれがたぶん分かっている範囲内でなら一番DIO様の配下で人殺してますからね」
「うわぁ……アイスよりも?」
「ヴァニラ・アイスが以前何をしていたかはよく知りませんが、ンドゥールが何人くらい殺していくつくらいの罪状かははっきり残っているんですよ、資料というか証拠が……あ、変な憧れ抱かないように」
「良識と常識があってもああなるんだあ……」

 いや、目の前のお前も肉の芽植え付けられて配下になってるだろうが、と言わないでおきましょうかね。なんかそういう次元飛び越えて可哀そうな生き物見てる気分になってきましたよ……。





「赤……」

 香りがして小さく呟いた。館にいることの方が珍しいとダービーに言われたが、それもそうかもしれない、と自分自身思うのだから仕方がないが。そうして呟いてから、DIO様は赤の方がお好きだろう、と思い直す。

「飲みますか?」
「いや、酔うと悪い」
「へえ? 酒に酔う? あなたが?」
「嫌味か?」

 ダービーに言えば兄と違ってどことなく慇懃無礼な彼は言う。執事、という役どころのわりに……いや、だからこそ慇懃無礼、という態度が様になるのだろうが。

「それは酔う、ではなくて頭痛では」
「バレているか。赤はどうにも妙な頭痛が起きやすくてな。ああ、マライアには言わないでくれ、変なことで喜ばせそうだ」

 軽く笑ってそう言えば、ダービーが苦笑する気配がした。

「DIO様もご存知で、あなたが来ているのに赤を持ってこさせるのだから困った方だ」
「いるのに、ではない。来ているから、だ」
「……困った方たちだ」





「……酒は……いや、おれがどうこう言えたものではないのだが、うん、まあやめておいた方がいいと思う。若い……若いのだしというのも違うが、飲み慣れていないのなら、というのが一番適切かもしれない」
「あの……DIO様が白ならンドゥールも飲めると仰っていて……?」
「いや、それはそうなんだが……ダービーは?」
「わたしに持って行けとだけ」

 そう言われてため息が出た。カキョウインだったか? 日本の若い何かがこの頃玩具になったのだとかなんとか聞いたが、肉の芽で制御……なんだっていいが、ワインでも何でもいいし、そもそも彼くらいの年齢で自分は酒も飲んでいたし、人も殺していたのに彼にどうこう言えたものではないのだが、あえて飲む必要もないのでは? と思うのは、どういう心理なのか自分自身分かり兼ねるが。

「冷えているならそこに置いておいてくれ。適当に飲む」
「でも、目……いえ、飲めなくとも注ぐくらいなら」
「いや、うーん……」

 白なら頭痛が起きないから、とダービーが意地悪く言っているような気がした。

「そういうことじゃあないだろう?」




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ンドゥールは常識と良識があるタイプだと勝手に思っている
2025/2/5