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車に乗っている間も、邸に連れ帰ってからも、ずっと怯えたままで、泣いてはいるが一言も発さずに、それでもこちらが言う通りにしている花京院に、自分が原因だと分かってはいるが苛立ってしまう。
彼に苛立っているのだろうが、それは要するに彼をそうさせている自分自身に苛立っている、ということだと分からないほど私自身アホではないと分かっているから、私室のベッドに座らせた花京院がぽたぽた泣いているのがどうにも見ていられない。
「どうして無断で出かけた」
「……申し訳ありません」
「そうではない。どうしてかと聞いている」
こんなことが言いたい訳ではないのに、順序立てて、などと考える必要はないのに、追い詰めるような形になってしまう。そう分かっているのに。
「……あの……」
ぽつりと花京院が暗い目で何かを言おうとしたから、何を言い出すかなんぞ分かっているようなものだから、口を開く前に塞いでしまう。どうせ捨ててくれとかそんなところだろう。そうしたら驚いたように見開かれた目からまた涙が落ちた。こんなになるまで本当に。
いろいろなことが一気に起こり過ぎて混乱していたのもあるだろう。
だが一番の原因は私だろうな。
「悪かった」
「……え?」
「他のアルファなどとと、あんなことは冗談でも言うものではないな。私が悪かった。許してくれるか?」
そう言って真っ直ぐに目を見て、首筋の大切な証を撫でれば、花京院は驚いたようにこちらを見返してきた。
「で、も……勝手に、出かけて、それに、ディオが、そう思ったなら」
「お前はただ友人の家に遊びに行っただけだろう?」
「そ、れは……そう、だけど……」
「何か悪いことがあるか? むしろ邪魔をして悪かった」
首筋を撫でて、鎖骨や頬を撫でていれば、やっと落ち着いてくれたのか、躊躇いがちに擦り寄ってきてくれたその顔や髪を撫でてやれば、安心したような表情になってきたところで先程のことをもう一度言う。
「お前が他のアルファのところに、などと言うのは私の番になってくれたお前に対してあまりに失礼なことだった。そもそもお前がそんなことをするはずがないと分かっていながら口にしたのだ。謝って許されることではないと分かっているが、出来ることなら許してほしい」
そう謝罪すれば、今度こそこちらに擦り寄ってきたうえ、手に自分のそれを重ねてきた彼が笑う。クソ、やはり愛らしいな。押し倒したいがとりあえず話し合ってからだ。
「別に怒ってません。ディオに捨てられるんじゃないかと怖かったですが、その……君、昔からそういうところあるし……」
「お前な……」
「それに、ぼくにはディオ以外いないから、むしろそんなふうに言ってもらえて嬉しいです」
笑った花京院に思わず口付けていた。本当に、もう少し自分本位でも良さそうなものを。
「空条承太郎のところに行ってみていろいろと、お前の不安に思っているだろうことが確信に変わったから言っておくがな」
「はい?」
そのまま花京院を抱えてベッドに横になって、ついでだから気付いていたことを言っていく。
「まずもって、ここでの生活や振る舞いには少しずつ慣れればいい。これは私のやり方が拙速だった」
「そ、れは、でも……」
「これから一生だぞ? 慣れるには時間がかかるのは分かっている。教え込んで飼い馴らしてやるから覚悟しておけ」
「!?」
「それから」
これが一番重要で、こいつを安心させられていないのだろうし、そもそも自分自身が焦っているのも分かっているからこそ、かえって不安にさせていたのも分かっている。
「貴様が私の番だ。貴様以外必要ないし、何か作る気もない。そういった道具ではなく、あの男に言った通り伴侶だと思っている」
「あ……」
「欲だの番だの運命だの、そういうことではない。単純に愛していると言っても駄目か」
「……なんで、そういうこと、素面で……」
耳まで真っ赤にして抱えていた腕から抜け出そうとする花京院の反応が愛らしくて、思わず軽く腕を緩めて顔を覗き込んでもう一度言ってみる。
「愛している、お前以外いらない。愛している、典明」
「っ〜〜!?」
真っ赤に茹ってこちらの胸板に顔を押し付けてきた彼を抱えて笑ってやれば、小さく言われた。
「ぼくだって、ディオのことを愛しています」
*
「あ、の……」
「嫌か?」
そのままベッドで軽く口付ければ、不安げな彼に言われたから動きを止めれば、躊躇うように花京院は言う。
「ぼく、今発情期じゃないし、フェロモン、出てないから、抱いても面白くないだろう?」
「……よくここでぶち壊すようなこと言えるな。逆に感心するぞ」
「だって!」
そう言ってきた彼のジャケットを脱がせて、シャツのボタンを外していけば、わたわたと抵抗するように動くから、そのままベッドに縫い留めた。
「あのな、別段フェロモンに誘われて襲っている訳でも、性欲が抑えきれずに襲っている訳でもないんだが、そう見えていたか?」
「そうじゃ、ないが……番になったと言ってもぼくはオメガだし、その……」
「本当に数分前のことも忘れるなら毎日でも、いや、毎秒でも言い続けねばならんようだな?」
「え?」
どこか不安げで、どこか困ったような花京院の上着を奪い去ってしまってから、その耳元で囁いてやる。
「抱かせてくれないか。愛している」
「ひうっ!?」
「どうした? 愛してると言っているだけなんだが?」
「まって、やめろ、だめだ……!」
「この理由で抱いては駄目か?」
「そうじゃ、なくて!」
びくびくと震える姿と狼狽えたような返答が愛らしい。どうやら私に『愛している』と言われるのが相当の衝撃らしい。衝撃というか……。嬉しいことではあるが、同時になんとも可愛らしいことでもあるし……。
「……使えるな」
「え?」
「ほら」
「んっ、まって、ひぁっ、うぁっ」
軽く触っていた胸の刺激を強くしていけば、肉付きはいいがどこか中性的な体が跳ねる。もともと感じるのだろうが、三日ほど教え込んだ快楽は初めてだったとは思えない程深く刻み込まれているようだ。これからもどんどん私好みに染め上げていくことを考えればまだまだ足りないが。
「やめろ、そう、やって、噛むな!」
「ンー?」
「ひうっ、やらぁ……きもちい、から、やらぁ……」
「気持ちがいいならいいだろう?」
「んぁっ、やっんぅ……まって、ふぁっ、あつ、い……」
揉んだり噛んでやったりして、十分柔らかくほぐれた胸から、細い腰の辺りや腹の辺りをなぞってやれば、それだけで感じるのか、段々とジーンズが狭そうだな、なんて思い始め、そこに手を掛ければ大きく体が跳ねる。
「まって、やめて、まって!」
「苦しいだろう? 今楽にしてやる」
「だめ、だめだってばぁ……ひっ、あっ! まって、むり、やめ! うぁっ!」
そのまま脱がせたそこで性器を握り込んでやれば、必死に抵抗しようとするから、ああそうだな、と思いまた耳元で囁いた。
「愛している」
「あっ!? やめ、まって、ちが!」
「違わない。ほら、気持ちがいいだろう?」
ぐちゅ、と軽くそれを扱いてやれば、どんどん荒くなる息と上気する顔に、もう耐えられないのだろうと分かっていながら軽くその根元を握ってやる。
「え? な、んで? あっ、やっ……!」
「いや? すぐにイかせてやる」
「?」
「典明、愛している」
「!? まって、いってる、まって、こえする、でぃおの? なにこれ、やめて、まって、うぁ、あ、え、なに、あっ!」
言葉とほとんど同時に緩めた手と達した感覚に、聴覚でも犯されたように錯覚したのだろう、かなり混乱した様子だが、元々この言葉に弱かったようだし、と思えば使わない手はない。
別段虚言でもないし、コイツ以外に言う気もないし、それでここまで乱れる様を見られるのなら役得というものだろう。
「どうした? 私の典明は『愛している』と言われると淫らに達してしまうのかな?」
「ちがっ!? うぁっ、ディオ、まって、怖い、こえ、耳、おかしい、ちが、ディオだけ、らから!」
そう言って縋ってきた典明が可愛くて仕方がなくて、そのまま後孔に指をやれば、もう濡れていたそこは簡単にこちらを飲み込んだ。
「あっ、やっ」
「ほらな。別に発情期だのフェロモンだの関係ないだろう?」
「んっ、んぁっ、でぃ、お」
「分かっている。このあたりが好きなんだろう?」
彼の好きな浅いところを刺激しながら少しずつ本数を増やして拡げていけば、気持ち良さそうに蕩けていく顔に段々こちらの理性も保たなくなっていく。本当に愛らしい。
「も、大丈夫だから、いれて?」
蕩け切った顔でそう言われてはこちらも我慢が利かない、と思いながら思わず舌なめずりしてもう十分に硬くなった自身を宛がってから、軽く息を吸い込んだ典明の耳元でもう一度言ってやる。
「入れるぞ、典明? 愛している」
「!? やめ、まっ、て、それ、ちょ、ばか!」
「馬鹿だと?」
「ひっ、うぁっ、まって、いってる、いってるってばぁ……!」
悲鳴のような喘ぎとそれから挿入しただけだというのに食いちぎられそうな締め付けに、言葉と挿入されただけで達したのだと分かって可愛くて仕方がなくなってくる。本当に可愛らしい、と思いながらも、緩めてやる気にはなれない。
「まって、ひうっ、おく、まって、おく、はっ、あっ、やっ、んんっ」
「気持ちいいだろう?」
「きもち、い、すき、おくぅ、すき、でぃお、だけ、らから、すき、やら、また、いっちゃう」
「いくらでも。ほら」
ごつんと奥を抉ればびくびくと震えた胎内が搾り取られそうなほど締め付けてくる。相性がいいのもそうだが、これはもう外に出したくなくなるほどの魔性を秘めているように思えるな。
「すき、きもちい、すき、すき、ディオのらから、もっと、ちょうだい、もっと」
そんなに蕩け切った顔で好きだ好きだと言われればこちらも限界だ、と思ってガツガツぶつけたそこで中に出そうとすれば、ぎゅっと抱き締められる。
「オイ!? 急にっ!」
「だめ?」
「構わんが、あまり可愛いことばかり、す、るな」
抱き着いてきたそれも、笑った顔も、こちらを求めているのも分かって可愛くて仕方がないと思ったその時だった。
「ディオ、あいしてます」
とろりと言われて耐え切れなかった。
「お、ま、え、は!」
そういった時には既に最奥で精を搾り取られていて、本当に私の伴侶は油断がならない。
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「……愛してるって言うのやめません?」
「本気で言っているのにか?」
「本気で言われているから! すごく感じてしまって、なんかすごく恥ずかしいことしまくった気がするんだよ!」
「貴様もやり返してきただろうに」
「記憶にない!」
「うるさいぞ、花京院」
「……」
「なんだ?」
「愛してると言うのも名前で呼んでくれるのもセックスしてる時だけのくせに」
「なんだ、そんなことか典明? 愛している」
「……やっぱりそれもナシで。日常生活に支障をきたします」
「なんだと?」
「ディオのことが好きすぎて、愛しているも典明も言われると何も手につかなくなります、たぶん」
……なんだこれ、可愛すぎないか?