ホリデーシーズン

「ホリデーシーズンですねぇ」
「今それ言います? というかそんなこと言っても乱れませんよ、ぼくは」
「分かってますけどね!」

 そう言っていったんマシーンの速度と出力を調整しようとしたところで、内線が鳴る。

「おっと、流石に中断しますよ、失礼」
「あ、はい」

 さすがに無視はできずに、邸の中で私がゲーム専用に改造している部屋まで掛かってきた電話を取る。私はホリデーシーズンというかクリスマス特別休暇で、かといってアメリカに帰るつもりもないし(まあ家のことは兄が何とかするでしょう)、花京院は大学が年末年始休暇で実家に戻るのは来週だ。クリスマスは毎年のことだから空条承太郎やJ・Pポルナレフと過ごすとのことで、ディオ様がキレていたが、それ以上に花京院はまあいい……いいのか? まあいいでしょう、番で恋人がいる訳だし。しかしあの二人もそれでいいのか……? とはいえ、花京院の方もディオ様がいないのも事実で、そんなこんなでクリスマス直前だが二人してゲームしたりFPSやらレースしたりで対戦していたが、いまやっているのは古いレースゲームのリメイク、ではなく復刻版なのだから現代は良いものだ。というのもあるが、こんなゲームをやり込んでいるって花京院は本当に現代の日本の大学生なのか? と不安になるところではあるが。いろいろあるだろう、と思っていたが、私でもちょっとひどいと思ったLCとかやってましたからね。せめてその前作ESなら少しは評価でき、た……

「え……来てるんですか? あなた本気で言ってます? ディオ様に言って……ない? 殺されますよ、だからって私を巻き込まないでください、真面目に」

 適当な内容か、今現在そのようなシーズン……世間はホリデーシーズン、所謂クリスマスの季節というヤツで、邸の主人が当主であるイギリス本家に帰っているために、だからその人からの連絡だろうと思って取ったそれは、予想外の人間がこの邸に来ており、それを取り次いだ電話だったから流石に焦って花京院に目をやったら、不思議そうにこちらを見て首を傾げられたから思わずため息が出そうになるが堪えた。

「……?」
「いや、だから! そういう理由ではなくてっていうか! 連れ帰る気しかなかったみたいですけどもね!? 空条家の息子さんに止められたのと、やっぱり大学卒業するまではっていうのがあるんですってディオ様本人も一応納得して決めてるでしょーが」

 いや、まあ鬼の居ぬ間に、というのはあるんでしょうが来るなよ、と思いながらも、そちらに行く間隙を衝く辺りに本気の感じがないでもないし。だが、その……。

「見世物じゃあないですし、えー、あなたみたいな人って引かれますよ、多分」

 いくらこんなゲームやってても、ふっつーの大学生ですし、なんていうか。
 ちらりともう一度花京院に目をやって、それから仕方がないと思ったら今度こそ本気でため息が出た。こちらに肩入れしている、と言われても言い訳のしようがないですけども、それはそれで嘘ではないですし。





「おまえがディオ様をたぶらかしたという花京院典明か」
「も、申し訳ありません、す、すみません……」
「やめないか。彼も実際にそういうつもりで言っている訳ではないのだ。そういう言葉遣いの人間だ、くらいに思ってもらっていい。あまり気にするな」
「いや、これで気にするなって言い出したらかなり人間性が最悪というか、二人とも人として最悪の部類なので死んだ方がいいですよ、死んだ方が」
「すまん、取り繕う……アイスの失言を取り繕うというのが適切か分からないが、彼に言うべき言葉があまり思い浮かばず……彼が真っ青になっているというか、震えているのはよく分かるので本当に申し訳ないのだが」
「ああもう、ンドゥールも来てるならますます来なけりゃ良かったでしょう!? そのくらいの常識と良識はあなたの方は少なくともあるでしょう!? 強制的にイギリスのディオ様のところにでも連れていけばよかったでしょう、こんな危険物!」

 思わずバンッとテーブルを叩いたらティーカップとソーサーがガチャンと芳しくない音を立てて、それにさえ怯えたように花京院の震えが大きくなり俯いた顔がさらに青くなる。マズイ、とは思ったが、それ以前にこの二人が悪いだろう、と思ってしまう。

「というか。私はベータですが二人ともアルファでしたよね? ただでさえ花京院はオメガなんです。何も言わずに来て、番が長期外出中だと言うのにそこにこんなふうに初対面なのが二人もいたら体調崩すとか考えなかったんですか。花京院、体調悪いでしょう? 部屋帰りますよ、こんなやつらの相手は面倒すぎます」
「あ、の、でも、ディオの、社長の知り合いの方では?」
「そういうこと気にしなくていいんですよ、この連中は! しかも一人は明確に敵意しかないじゃあないですか! 今既に体調崩して真っ青ですし、バイタル測ってなんならイギリスのディオ様の端末に送りましょう、そうしましょう。アイスが花京院を襲撃して倒れた、くらい言ってやればいいんですよ!」
「ダービー、貴様!」
「結果的に実際そうでしょうが!」

 ギャーギャー言ってきたが、実際そうでしょう!? なんでこう、間隙を衝いて! ていうか花京院が羨ましいだけだろこの馬鹿! と思っていたらなんかンドゥールはンドゥールで何やってんですかアンタ!?

「ああ、花京院と言ったな? アイスが……というかおれも騒がしくしてすまない。以前からディオ様に聞いていて、一度会いたいと思っていた。自己紹介もまだだった。おれはンドゥールと言う。社長……というか昔からディオ様の部下をしている。少し触れてもいいか、生まれつき両目の視力がなくてな」
「は……い……」
「やはり怯えさせているか。すまん、視力の代わりに聴力は良い方で、それをディオ様に買われている部分が大きくてな。感情やそういった機微を読み取ってしまってかえって嫌な思いをさせていたら悪いな。ふむ……覚えた。急に触れて悪かった」
「何やってんですかアンタも!? なんかこう、花京院が借りてきた猫みたいになってんでしょうが!? ていうかそういうのセクハラって言うんですよ!」
「いや、その……アイスだけで行かせるのは流石におれも怖くてな……何をするか分からないし……それにほら、一度会ってみたかったのはおれも一緒だったというか……」
「あ、あの……おふ、たり、は……」
「ほら、真っ青になってる、そら見たことか!」

 それでも必死に対応しようとしている花京院の身体を支えようとしたら、『覚えた』とサラッと言っていやがったンドゥールが軽く花京院を支えていた。うわ、コイツもコイツでウザいな。

「ああ、心拍が速い……あまり良くないな……」
「アンタらのせいだよ!? なに善人ぶってんです!?」
「テレンス、だいじょうぶ、ですので……?」
「疑問形じゃあないですか、大丈夫なところミリ単位でないですよ! とりあえず部屋に戻りますよ、こんなところでお茶してないでせめて寝てましょう!」

 そう言ったらなんかンドゥールが頷いて花京院を抱えたんですが、そうじゃないって言うか、いや、私じゃ体格的に花京院を抱えるの無理ゲーなんですが、そうじゃなくて、頷いてるけどアンタらのせいですよ!?





「……ディオ様の部屋ではないか。どういうことだ」
「あ、の……その……この邸にいる時は、その、ここ、で」
「そりゃあそうでしょうよ!? 番ですからね!? 一緒にいて何か問題あります!? 一緒に生活してるんですよ、部屋もベッドも一緒、羨ましいでしょう!? 何か問題あります!?」
「て、テレンス、ちょっと待ってください、落ち着いて、待って」

 ンドゥールが普段二人がいる、というかディオ様の部屋まで運んでベッドに置いてみたところ、アイスがあからさまにそんなこと分かっているくせに嫌味を言うから面倒になってまくしたてたら、横になって少しは楽になったらしい花京院に言われたが、そうしたらンドゥールが大きくため息をついた。

「ああそうだな、今のはアイスが悪いというか、根本的におれとアイスがここに来たのが悪い」
「分かっているなら来ないでください、頼むから……」
「あの……ぼくがあんまり駄目な番でオメガだから……今回もイギリスにも連れていけませんし、その、皆さん怒っているというかその……」
「だから、こうなるから来るなって言ってんですよ! 花京院にも私どころか空条さんとこの承太郎も言ってたでしょーが! 別段連れていかないのはあなたが駄目だとかそういう理由でもないし怒ってもいません! あの方は引っ張っていきそうだったけどもさすがに学生のうちにそういうこといざこざに巻き込まれるのも良くないから、正式に発表するのは大学か院の卒業後、そういう場への出席も止めておくって!」
「で、でももともとぼく自身が昔からブランドーの家自体からあんまりよく思われていないかもしれないのは、本当だから……」

 ぽつりと花京院がそう言えば、アイスの目つきが変わる。それに花京院は余計に委縮したようだが、ンドゥールも少し構えたようになるから事情が事情だけにこれは、と思ってしまった。厄介なことだがそのうち巻き込まれるし、という気持ちが半分と、そうしてそれだとこの二人に会っておくのは悪くないと言えば悪くないのか? と少し考えてしまったあたり、私は確かにディオ様お墨付きで「サイコ野郎」と言われるだけのことがあるのかもしれない。
 ……正確に、心理学的サイコパスではないから今の状況で花京院に肩入れできるし、そもそもディオ様みたいな方に仕えていられるのだが。

「ああそうか。クリスマスの集まりはブランドーの……そうか」
「小僧、ブランドー家のことを気にしているのか? ならそれと我々を一緒くたにするな」
「……は?」

 二人に言われてぽかんとしたふうの、それでも困惑したままの花京院にアイスが今日一くらいに冷たい目で言う。

「顔を見てみたかったが、ディオ様がこれを気に入っていたとはな。しかしそれなら納得だ。本当に言っていた通り、ブランドーと関係なく、なんだそれ、貴様羨ましいな」
「はい?」
「アイス、それは言葉が欠落しすぎている。花京院、おれたちはブランドーの血統とは一切関係がない。単純明快にディオ様の配下だ。そういう意味ではある種お前と一緒……一緒というよりお前にしてみれば我々の方が後輩扱いなのかな? そう思うと確かに羨ましいな」
「そうだ、悔しいが羨ましい」
「あの、ちょっと、意味が? わっ、ちょっと待ってください、何が、何があってこんな!?」

 目が冷たくなったのに態度が軟化したように思えるアイスと、言葉が欠落とか言いながら本人も言葉が足りな過ぎるンドゥールに、今度は唐突に撫でられている羽目になっている花京院を見ていて思わず息をついてしまう。ここまできてしまうとある意味平和な休日だ。

「平和、ですかねぇ……」
「て、テレンス、助けてください、ぬいぐるみみたいになってしまいます、怖い、吐きそう!」
「吐くな!」





「ブランドー家の連中はディオ様がアルファであることでしかあの方の素晴らしさを計れぬ馬鹿どもしかいない。それがいかに不幸なことか、そうしてディオ様にとって不利益なことか!」

 アイスの演説を聞かされることになったが、まあ熱くなりすぎてはいるが私を含めてディオ様の側近は皆そうだからな、と思って聞き流す。というか、その筆頭が今そう言っているアイスとンドゥールだからこそ、この二人に早めに会えるのは良いかもしれないのでは? という判断と算段があって、結局追い出さなかったのが執事の私なワケですし。

「アイスの言っていることは本当だ。わたしも彼もアルファだが……それでも財閥のブランドー家や世界的な会社に、という訳ではなく、ディオ様がアルファであるからという訳ではもちろんなく、あの方そのものにお仕えしたい、と思ってここにいる。そういう者が少なからずあの方のお傍にはいる。だが、ブランドーの家にそういった我々を理解できる者は残念ながらいないだろう」

 ンドゥールに言われてアイスの支離滅裂に近い演説をまとめることが出来たらしく、花京院はしゅんとしてしまう。そりゃあ、彼はそうなるでしょうがねぇ。

「ディオは……子供のころからブランドーの家のことが嫌いなようでしたね」
「……そうか」
「それでもそういう扱いをした家でどうにかしてのし上がってやろうという時になってアルファだからと担がれて、人間不信のようになってしまって……」
「だからあの連中にはあの方の素晴らしさも分からん馬鹿どもだと言っている!」

 アイスがそう言って文机を叩いたところで花京院が少し悲しそうな顔をした。思い出すことが多いのだろう、と思うのだが、なんというか、この二人が来たのは……。

「それでもきちんと立ち直ってくれましたし、そうしてちゃんと迎えに来てくれましたから、ディオはしっかりしています。血統や性別の問題ではありませんよ?」

「その通りだ。それで、なのだが。その頃からディオ様の才能に気が付いており、アルファなどというおためごかしではなくあの方の本来の魅力や才を正しく崇敬して、ずっと将来に亘るまでお仕えすると約束していたのがお前だったとディオ様から聞いていて、そんなに昔からとおれもアイス羨ましいというか……一度会ってみたかった。それなら番や伴侶として選ばれるのも当然に思える」
「……え?」

 笑顔のンドゥールと悔しさからか泣いているアイスに言われて本気で困惑している花京院と同じくらい私も困惑というか、この二人そろそろぶん殴りましょうか、ぶん殴って追い出してもいい気がしますね?

「何かいろいろ間違ってません? 絶対間違ってますよね、あの方が言ってることかなり曲解してますよね? やっぱりあなた方頭おかしいですよ」







「こ、子供の遊びの範疇というか! ディオのことが好きだったのは間違いないのですが!」
「アルファだと分かる前からだろう!? その時点で、その時点で」
「なにか絶対違う気がするんです、何かの齟齬がある! 崇敬!? 違う、絶対! 確かにディオとはそういったことではなく、アルファだとかオメガだとかそういったことは関係なく、接していましたし、そういうの関係なしに好きでしたし、あ、その頃の好きっていうのは友人としてです、はい! その頃から付け狙ったりたぶらかしたりは決して! 友人として、はい!」
「ディオ様を『友人』と言えるその精神性の時点でお前は正しい」
「あれ!? テレンス、何か間違いましたか、言葉のチョイスと言いますか、これ間違いましたか!?」

 何か知らんが当たり前のことを言ったはずなのに感動している二人に困惑を通り越して混乱している花京院に頭痛がしてきた。駄目だ、この二人を味方につけておくのは将来的にブランドー社や財閥の中というよりもディオ様の番としてやっていくのに手っ取り早いと思っていたが、その一方でこの二人が一番いろいろと人間性に問題があるのだった。

「あー、放っておきなさい。勝手に感動させておきなさい。その二人はディオ様の配下の中でもちょっと……ちょっと? いや、かなりヤバい忠誠心の塊なんです」
「そういう問題か!? 度が過ぎていないか!?」
「写真とかないのか、子供の頃の」
「写真だとおれが見られない」
「度が過ぎているを通り越してますよ、その二人はディオ様が死ねといったら喜んで死にます。比喩ではなく」
「!?」
「は?」
「なに?」
「ほら、テレンスが可笑しなことを言うから二人も驚いて!」
「「何を当たり前のことを?」」
「!?」
「……ほら」





 そんなこんなでディオ様の素晴らしさとか、なんか配下になった経緯とか、どれほど深く敬愛しているかとかを語って花京院の脳がもう容量オーバーを起こしそうになっているのだが、なんというか私でもそうなりますよ……しかも。

「やめてあげなさいよ……あなた方の忠誠心は知ってますけども、それを初対面でぶつけられるっていうか、それ、ディオ様の番ですよ? 自分たちと同類的に扱ってますけども……」
「そこが悔しい! 運命! ディオ様の運命という甘美な響きを独占している!」 「おれとしてはアイスと違って納得だが……羨ましくはある、しかしそれ以上に正しいと思うが……」
「あ……あの……もうやめて……」
「ほら、混乱とか羞恥心で花京院が死にそうじゃあないですか」

 しかも。

「ああ、そういえば今回の再会の詳細もディオ様から聞いている」
「え……!?」
「なかなかよいエピソードだった。幼少期からの繋がりを辿っての完璧な再会! 流石だ!」
「ヨウショウキカラ……?」
「? すべて聞いているが? 昔からずっと語っていて、いずれ必ず手に入れると。あの方がそう言って手に入らないものなどないと思っていたが……本当にここにあるとやはり感慨深い……」
「……よし、帰ってきたらディオのこと殺そう」
「ああ……気持ちは分かりますよ、こう、自分の知らない所であることないことべらべら喋られるとねぇ? いくら恋人とか伴侶とか愛している相手でもねぇ?」
「テレンスも知っていたんですか? ああ、そういえば君、初対面の頃もなんだかいろいろ知っている態度だったよな?」
「え? なんで急に私の方に矛先向いてるんです?」
「だって恥ずかしいどころの騒ぎじゃないだろこれ!?」





「などという報告を受けた私の身になってくれないか?」
「いや、私は知りませんよ。あの二人が勝手に来て、勝手に花京院を弟かつペットのようにしていっただけで」
「なぜあんな馬鹿どもに触らせた?」
「そこですか」





「ディオ、いい加減離してくれないか?」
「嫌だ」
「だから実家からお餅作ったやつ持たされて……お汁粉作りたいんです。厨房借りるぞってテレンスに言ってある」
「駄目だ」
「母さんがディオ君にも食べさせなさいって言ったんだぞ?」
「……もう少し」

 クリスマスだなんだと仕方がないからイギリスに戻って、面倒な連中の面倒な顔を眺めていたら、ヴァニラとンドゥールが珍しくイギリスの本家までやって来た。ホリデーシーズンなんて言葉が世界一似合わない二人だし、ブランドー家自体毛嫌いしているのに、だ。しかも組み合わせとしてかなり珍しい、と思っていたら。

『花京院は可愛いですね』
『悔しい、非常に悔しいですが』

 とか言われた。そうしてなんか語り始めたから流石に悪寒がして、即テレンスに連絡を取って状況を確認したが、何というかひどいことになっていた。典明は倒れたりしてはいなかったそうだが、二人に解放されたクリスマスは承太郎とポルナレフと過ごし、そうして年末年始で実家に帰ったという。

「もっと吸わせろ」
「ディオー……」

 腕の中に収めたこいつは私のだ。何だっていうんだ、アイツらは。

「でも良かった」
「何も良くない」
「だってディオの周りにはテレンスもいるし、それにヴァニラとンドゥールもいるんだから、寂しくないだろう」

 寂しいってなんだ。普通あいつらの有能さが、とか言うだろうに。それにそれじゃあまるで。

「それじゃあまるで他人事のようだな」
「……え?」
「それを言ったらお前も必要だ。必要とは違うな。全て寄越せ。手に入れると思ったものはすべて手に入れる。お前も手に入れた。だからもう逃がさない」

 そう言ったら腕の中で典明がプルプル震えて赤くなった。

「あの人たちみたいに優秀じゃないけど」
「そうじゃあないだろう」

 額に口付けて、輪郭をなぞって。

「私が寂しくなかったのは、ずっとお前のおかげなのだから」

 小さく笑ったこれが欲しかった。ずっと。