浴びる


 その神は月光を浴びて微笑んだ。

「月か」

 その女神は初めの数字を置き、最後の記号を載せる。
 世界を形作り、そうして終わりを、ピリオドを打つ。

「余の統べる夜にあって、輝けるものだ」
「だけれどその輝きはあなたのものだ」
「そう。なぜわたしは闇にこの光を置いたのだろう」

 思い出せない、とアンリ・マユは笑った。

「だが美しい」
「ああ」
「美しいという感覚自体が間違っているのだろうか」
「そんなことはない」

 神の言葉に反駁する自分は、彼女の目にどう映るだろうと思ったけれど、彼女の視線は透明で、透徹しきってその月を見上げていた。

「余は余の作った世界を愛している」
「ああ」
「その世界に生きるすべてを、愛している」

 あなたの愛は大きすぎて、気づけないものが多すぎた。
 あなたの愛は大きすぎて、だから摘み取ってしまいたかった。
 気づけない者どもにやる分は、要らないだろうと思っていた。


「月は輝く。貴女の世界は美しい」

 月光を浴びて、その神は微笑んだ。
 その世界を、愛するように。