滅びる
魔術とは神秘の探求であり、とくだらない、当たり前すぎて実にくだらない講義を、私はぼんやり聞き流していた。法政科の授業は兄上の講義に比べてひどく退屈だった。
そうして私ももういい歳だな、なんて幼いくせに思った。
たくさんの神秘が興って、滅んで、たくさんの文明が興って、滅んで、私たちは今ここにいる。
そう。
神秘も文明も、何もかも滅ぶと知っていた。
*
「お前、ちゃんと授業は受けているんだろうな」
「当たり前だとも?これでもロードになるべく法政科なんぞに通っているわけで、我が兄が全面的に家庭教師をしてくれればなーんにも困りはしないのに」
フラットに押しかけてそう言えば、極東から帰ってきたばかりの兄は疲れ切ったように長く息をついた。
この男は神秘を一つ消し飛ばした。
聖杯という、一つの神秘の具現を消し飛ばした。
自分自身と、一人の英霊をつなぐそれを、消し飛ばした。
「何を思う、我が兄」
「なんの話だ」
「ウェイバー・ベルベット、我が兄にしてロード・エルメロイU世。あなたはあまたある神秘のうち一つを壊し、あなたは最も拝した存在から遠ざかった」
「それは違うな」
兄は即答した。それから紅茶をことんとテーブルに置いた。
「私はね、レディ。今のこの生活も気に入っているし、何よりも、君にさえ認められない程度であの男に並び立てるなんて思ってもいないのさ」
そう言って兄は笑った。
「だから紅茶を飲んだらさっさと帰ってくれ。明日の授業の準備がある」
そう、滅びさえ乗り越えた男は言った。
私は、日常が帰ってきたことにひどく安堵して、一粒だけ涙を溶かして紅茶を飲んだ。