降りる
かんかんと螺旋階段を歩く音がした。
下へ下へと降りていく音だ。
「ねー、久しぶりに現世でネビロスさんのコーヒー飲んじゃった」
「君さ、順応しすぎじゃない」
カツンカツンと冷たい音がして、僕たちは地獄の最下層を目指していた。
僕たちが地獄に落ちて、それからどれくらいが経っただろう。
アンリとベルゼビュートの結納だの、天使ヶ原さんのライブだの、こうしてネビロスのコーヒーを飲むという名目で地上に出るだのと、退屈はしないが少なくとももう人間の世界に帰れなくなってどれくらい経つだろう。
そう思ったら、僕の歩みはふと止まった。
君にその世界を捨てさせた僕は。
僕は、果たして許されるのか。
「左門くん?」
不思議そうに、一段下の階段から天使ヶ原さんが声をかけてきた。その階段を降りれば降りるほどに、僕たちは現世から遠ざかっていく。
「君はこれでよかった?」
僕の問いかけに彼女は笑った。
「何回目?」
「さあ、数えてない」
もう数えきれないくらいの年月が経ったのに、君はあの日のままで、僕もあの日のままだ。
「帰ろう。今日は手羽先出るって」
不意に彼女が手を伸ばした。
彼女に手を引かれて、僕はまた、この世の果てに降りていく。