過ぎる


 みんな過ぎ去っていく。
 担任の生徒も、バスケットの部員も、言ってしまえば学年全体も。
 年度が改まると、実感する。バスケットを続ける、学業を続ける、どこか遠い土地に行く。私はそうやって過ぎ去っていく生徒をずっと見ていた。


 これまでも、これからも。
 そう思っていたのに。


「ねー、まさ子ちん、ドレスだけどさ」
「ちょっと待て、引き出物考えてる」
「それはさ、後でいいからドーレースー」


 じゃれつくように言ってきた紫原に、私はぽすっと手を引かれた。


 みんな去っていくと思っていた。だけれどこの男が私と結婚するなどという大それた決断をした時に、それを受け入れたら、紫原だけじゃない、氷室や岡村たちからまで号泣されて、みんな私を何だと思ってるんだ、と思う一方で、過ぎ去っていくだけが全てではないのだ、とひどく安堵した。


「ね、みんな見に来るんだから」
「見世物じゃない」
「そうじゃなくてー」

 そうか、「みんな」か。過ぎ去っていく過去を繋ぎ止めて、私を繋ぎ止めたこの男を、私は何よりも愛している。