閉じる


「だからですよ」

 戦略を熱弁する宇佐美に、俺はうなずきながら扉を閉めた。彼女の立てたプランは、人に聞かせていい内容ではなかった。風間隊のこれからにかかわる内容だ。
 そうしてそれから、俺は本当にいいのだろうか、と思った。
 彼女に作戦を立案させることは本当に正しいのだろうか、と。





 パチン、とバインダーを閉じて、俺は部屋を見渡した。
 彼女の考えた作戦は正しかった。だけれど俺は宇佐美を手放した。
 だめだ。彼女は優しすぎる。いつかきっと、彼女を傷つけないとできない任務が出てくる。
 もうこの作戦は使えない、使わない、と決めてどのくらい経つだろう。ボーダーですらなく、ただの大学生の部屋のすみに置かれたバインダーに挟まれたそれを、俺は丁寧に閉じる。
 誰にも見つからないように、そう、その本人にさえ。

「風間さん」

 ピンポンと間抜けなチャイムが鳴って、それから玄関の扉を開ければ、喜色満面とでもいうべき、最近うちに出入りするようになった宇佐美がいた。
 こんな関係になれると思っていなくて、だけれどこんな関係になりたかったのも本当で。

「今日はちょっとケーキなんか買ってきちゃいました」
「気にするなと言っている」

 そう言ったがえへへと笑う少女に、自身の胸の内に仕舞ったほの暗い感情を覚られないように、彼女を迎え入れて、俺はぱたんと部屋の扉を閉じた。