「なんでお前がおんねん」

 痛みと熱でぼんやりする思考でも、そこにいるのがずいぶん背も伸びて、煙草の香りもするうえ容姿も様変わりしたが、霊圧と小生意気な態度だけは変わらない男であることを、ひよ里は認識していた。

「笑いに来たんか」
「見舞いだっての」

 見舞い、と言ったくせに、言ったそばから彼は重傷の怪我人の横だというのに煙草に火を付ける。現世で、しかも義骸でまで煙草を吸うなんて、どうかしている、と言ってやりたかったけれど、なんだか億劫でやめた。
 やめたら、彼はクックッと喉の奥の方で笑った。

「なんか言いたそうだな」
「うっさいわ」

 本当は、「どうかしている」などということよりも言いたいことがあった。―――それは、阿近の側だって同じだったけれど。
 降り積もった年月は、言いたかったこと、言いたいことをもまた、降り積もらせて、だけれど、その一つ一つを口にしてしまうのは、口惜しくもあったし、純粋に惜しくもあった。
 それが双方にあるのだ、と思ったら、可笑しくて可笑しくて、彼は煙草を携帯灰皿に押し付けて、今度こそ声に出して、だけれどやっぱりクツクツと笑った。

「やっぱり笑いに来たんか」
「んなワケあるか」
「可笑しなやっちゃな」

 彼女も、少しだけ可笑しげにそう言ったら、阿近は包帯の巻かれた彼女の細い腹を指でなぞる。痛々しげな傷だった。

「なんや?くすぐったいわ」

 反抗とも、たしなめともつかない声で彼女が言ったが、彼はその腹に、身を折って触れるだけの口付けを落とした。


腹のキスは回帰