どう接していいのか分らない、というのが、阿近とひよ里の双方を覆っている感覚だった。初めて出会ってからずいぶん経つが、自分たちの立ち位置をどう見定めていいのか分からない、そんな気がしていた。
二人とも、子供というには少し違ったし、かと言って大人というにはそれも違う。研究室でただただ喧嘩する日常は、だけれど、喧嘩ができる、という点において、周りの死神より二人を近づけていた。
歳の近い、喧嘩のできる相手。そんなもの、互いに今まで持たなかったし、いらないと思っていた。だけれど、実際相手になってみると、少しばかり嬉しかったり、煩わしかったりする。
嬉しくて、だけれど煩わしい。そんな複雑な感情を、少なくとも阿近は必要ないと思っていた。だけれどその感情に名前を付けるとしたら、なんだろう、ともふと思う。
ガシャンと大きな音を立てて機材を置いたひよ里が、忌々しげに阿近を振り返る。
「これで全部やな!?」
これ以上、自分の手を煩わせるなよ!と滲ませたその声に阿近は生返事を返す。変な感情を連れ回していた結果だった。
「聞いとんのか阿近!」
ずいっと顔を覗きこまれて、阿近はチッと舌打ちしてしまった。条件反射だ。酷い話だが。
「お前、それが手伝ってもろた相手に対する態度か、ええ!?」
至近距離で吠えるひよ里に、阿近はふとその髪が分かれて見える額に唇を寄せた。
「……は!?」
「機嫌直せよ」
「誰や、このガキに変なこと仕込んだんは!?」
喜助か!?と叫びながら、恋情にはまだ遠い相手が走り去っていくのを、阿近はぼんやりと見つめた。
額のキスは友情