離れていくお前が、どうしたってもどかしかった。どこにいるかも分からない、昨日までそこにいた。
その一つ一つの過去の現実が、俺を余計苛立たせた。苛立って苛立って、そうして現世で彼女が戦っている、という報を受けて、裏方仕事のこちらだというのに、俺は機器をドッと叩いた。
「どこ行ってんだよ」
どこに行っている?そんなの明白なのに。
戦いは収束に向かって、彼女は重傷。彼女が、またどんどん遠ざかるような気がした。
「どこ行ってんだよ!お前は、俺のだろ」
俺の、か。至極理不尽で、傲慢で、そうして乱雑な言葉だった。
俺の物、なんて言えない。
俺の隣にいてほしかったとなら言えるかもしれない。
彼女は、俺の、何なんだ。
だけれど少なくとも、‘俺の’どこかに存在する存在であってほしかった。それが叶わないのだとしても、俺はそれを望んでしまっていた。
無理矢理現世に来て、横たわる彼女に近づいた。他にもいたが、誰も何も言わなかった。俺が俺だと知れているからだと思われた。
「ひよ里…」
呼びかけに返答はなく、彼女は荒い息をこぼしていた。その上下する胸元が、彼女の生を告げる。
その生を告げる胸に、俺は小さく口付けた。
胸のキスは所有