椅子に座るネムの足許で、膝をついた阿近がその精緻に創り込まれた陶の肌をまじまじと見つめる。ネムは座ったまま眠っていて、阿近が任されたのはネムの睡眠中―――起動停止中の整備だ。座ったまま行えること、といことで、脳波の測定や作動部品の整備等の簡単なものばかりだった。簡単なもの、ということもあって、整備は終了していたが、脳波測定のために眠らせた彼女が起きるまでには、まだ少々の時間があった。

「従うと誓う」

 彼女が起きていないのを知っていながら、彼は膝をついて、その閉じられた瞳を見上げる。

「守ると誓う」

 ―――それは、彼女が起きていないと知っているから、言えることなのかもしれなかった。
 起きている時にいってしまったら、多分それは途端に色を失い、真実味を失う気がしたから。
 言葉は、静かな部屋の中で彼女に届くことなく霧散した。
 ひどく不毛で、ひどく浅はかで、ひどく浅ましい。彼はそんな気さえした。
 起きている彼女に言うことの出来ないことを、聴こえないから言えるこの浅はかを、だけれど許してほしいと、願う。

 従おう。守ろう。誓おう。
 部下として、或いは、傍近くある者として。
 その命に。その望みに。その願いに。
 捧げよう。持ちうる総てを。

 浅はかであろうと、浅ましくあろうと、不毛であろうと、己だけは、従い続けようという、確信にも、確認にも似た思いをのせて、彼は彼女の露わになった脛に口付けた。
 真白な肌に、紅い点が咲いた。

 それは多分、どうしたって彼女には届かない、彼の中にだけ残った口付け。


脛のキスは服従