「俺に黙って怪我をするな」
ひどく横着で、そうして詮無いことを、彼女の腕に包帯を巻きながら阿近は呟いた。
「申し訳ありません」
「謝ってほしい訳じゃない」
謝罪を述べるネムに、阿近はため息をついて、くるくると器用に包帯を巻いていく。
「お前が痛い思いをするのは困る」
「それは…」
「隊務じゃない。大事な人間が傷つくと、俺が困る」
いつもよりもずっとはっきりとした言葉で、阿近は言った。ネムの真っ白な頬にサッと朱が上る。
「好きな女が怪我して帰ってくるってのに、部屋で研究なんてのも、考えものだぜ。まったく」
ぶつぶつと自分への不満を連ねる彼は、彼女が怪我をしたからこそ、いつも以上に素直に全てを言ってしまっていた。普段なら言えないような言葉までも。
「次からは、気をつけます」
「そうしてくれ。それから、怪我をしたらすぐ俺のところに来い」
そう言って、大きく息をつくと、彼は包帯を巻かれたばかりの彼女の腕に、優しく口付けた。
「あー、なんだ。でも、怪我しなくても俺のところには来いよ?」
頬を掻いて言ったら、彼女はやわらかに微笑んだ。
腕のキスは恋慕