紫蘭

記憶なんて、案外簡単改ざんされて、濾過されて、いつの間にか書き換わる。
例えば、彼女の中で俺との幼かった日々が、想いが、恋慕が、書き換えられとったら、と思う日がある。
微温湯みたいやった日々が、いつの間にか思い出として美化されていたらと思うとゾッとする。その微温湯を作り出したのは自分だというんに、俺はどこかで彼女がその日々に縛られていればいいと思っている。


(お互い、たいがい怖がりかもな)


日々が忘れ去られて、日々が良かったことにされて、日々が美しかったことにされて、日々が過去にされるのが、怖いだなんて、なんだか滑稽で、滑稽なのに俺は彼女を今に繋ぎ止めようとしていた。
そんな権利、自らのどこにも持っとらんというに。


紫蘭:花言葉「お互い忘れないように