Oblation

 何時かの君に、花を贈ろう。

「花なんて。持っちゃいねえけど」

 何時かの君に、花を贈ろう。
 あの日の日常を、取り戻す努力もせずに、結局、あの日と同じ場所で煙草を燻らす。

 何時かの君に、花を贈ろう。

「花の代わりに、こんな煙じゃあ、お前に蹴り飛ばされんな」

 思わず苦笑がもれた。それでも、今、捧げられるものがあるとするなら、それは、この手に挟んだ甘い煙だけ。

 神に捧げる花なんて、持ち合わせていない。花を捧げる神なんて、持ち合わせていない。
 捧げるのは、神じゃない。それは、彼女。

 百年の空白。
 煙草一本分の空白。

 それは、思うよりよく似ていた。
 噛殺した苦味は、別離の味。


供物(神様なんて、知らない)