Ulna

 ねえ、もし君が死んだら―

「杏ちゃん、手、綺麗だね」

 彼女の白い細腕を触って言うと、彼女は少しだけくすぐったそうに身をよじる。

「どうしたの?急に」
「いや…約束なんて、いらないなって話」

 ねえ、もし君が死んだら、小指の約束なんて、そんな不確かなものはいらない。
 その美しさが失われて、その約束が朽ちるなら、いっそのこと、そんな約束なんて、投げ捨ててしまおう。

 手に入れるなら全てを。
 手に入らないなら全てを。

  指が、彼女の小指を辿って、その下の太い骨に当たった。

  これなら、約束を失っても、君を見失わない?
 どれなら、君との全てをこの手に収められる?
 約束の小指なんて、いらないから―


尺骨(君との永遠)