煙草を燻らす
「まあ、なんだ」
そう言うと、彼は決まり悪そうに煙草を一本取り出した。それをくわえこそすれ、彼はそれに火をつけることはなかった。
「なんだかなあ…」
困ったように、彼は頭をかく。寝台に横たわる私は、そんな彼を、不思議な気持ちで見返した。
「ご迷惑をおかけしまして…」
その場を取り繕う上手い言葉というのが私には分からなくて、それでも、原因になりそうなことを言ったら、どうしてか彼は呻くように唸ってしまった。
「……無理をしないでほしい」
低い声で彼は言った。無理?はて、と思う。無理というのはどのことだろう?
「どうしました」
言葉にしてしまえば、疑問はすんなりと音になった。だがその疑問が解決しないままに、彼は煙草を手に持つと、空いた方の手で私の額を撫でた。
「すまない」
「謝るようなことを、なさったでしょうか?」
そう言うと、彼はますます決まり悪そうな顔をしてしまって、それで私はふと彼の懐に手を伸ばす。
かちり、と軽い音がして横たわったまま私はその小さな火を持った手を目いっぱい彼の口許に伸ばした。
「どうぞ」
そうすると彼は、今度こそ本当に困ったような顔をしてしまって、それを見た私は僅かに笑みを浮かべる。
―――決まりの悪い時に煙草を燻らすと、ますます決まりが悪くなるのだ、と、彼が言っていたのを思い出しながら。