軽佻
「結婚しよう」
定例の定型句に、私はうんざりしてしまう。こんなにも大事なことだというのに、うんざりするほどに積み重ねられた言葉だったから、面倒さは格別だ。
「何度だって言うえ。結婚しよ」
「……物好き」
だから、悪態をついたが、彼は微笑って私の髪に指を通す。
彼は、何度だって言うだろう。もはや求愛には軽佻と思われるほどに、何度だって、何度だって。
その一言一言に、うなずいて、身を委ねてしまったら、きっといろいろな事共が上手くいくのだろうと、私だって分かっている。
分かっているけれど、もう少しだけ此のままでいたい。
それは、己が引き起こした事への責でありながら、こうして、彼が愛をささやき続けることへの愉悦でもあった。
そう思ったら、どうにも可笑しな気分になった。
その愛の等価を、私は知らない。